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地雷系ファッションの寧々子登場

 にゅっと扉から出てきたのは、俗に言う地雷系ファッションに着替えた寧々子だった。ピンクと黒を基調としたゴスロリ、否、地雷系ファッションに身を包んだ寧々子に全員の視線が向く。メイクも手が込んでおり、まさに地雷系そのものだ。髪もいつものサイドテールからツーサイドアップに変わっていた。


 また、何より目を引いたのは胸元である。そこには完璧で究極の乳袋が形成されていたのだ。その圧倒的な存在感を放つ寧々子の乳袋に、緋影に両手で抱えられ宙吊り状態のりんねちゃんと、優々子の嫉妬と殺意の入り混じった湿度高めの視線が突き刺さる。


 そして、緋影の視線も寧々子の完璧で究極の乳袋に吸い寄せられるのだった。これは男の本能であり、ちょっと?頭のおかしい緋影でもしょうがないことなのだ。だが、緋影は義兄としてのプライドと理性から刹那で視線を逸らした。

 

 どうやら義妹の寧々子には気づかれてないようであるが、呪いの人形ドールりんねちゃんと優々子には、人形緋影流奥義・刹那の視線移動ノルンブリッツも通じないようでありバレバレなようだ。


 人形緋影流奥義・刹那の視線移動ノルンブリッツとは、人間が認識できる速度域を超えて眼球を刹那で動かす奥義である。そんな奥義を打ち破れるのは怪異と化け物だけであった。人の視線に敏感で男が胸を見たら100%わかると豪語する寧々子でも緋影の奥義を見破れはしないのである。(まぁ、見られてると気がついた時しかカウントしないので男の視線に女性が100%気がつくというのは至極当たり前の話なのだが……)


 緋影に両手で抱きかかえられ宙吊り状態のりんねちゃんのヤンデレドールの無表情ドールフェイスがいつの間にか緋影に向けられていた。同じく、ヤンデレロリ子、否、優々子のハイライトオフの怒りの視線も緋影に向けられている。


 優々子の視線だけで人を殺められそうな恐ろしい眼から顔を背ける緋影は、同じように呪い殺してきそうな視線を向けているりんねちゃんを気まずそうにリビングテーブルの上に座らせるのであった。(座らせている間もジーッと緋影の顔を見続ける恐ろしい呪いの人形ドールりんねちゃん)


 リビングは殺伐とした雰囲気なのだが、どうやら事の元凶の寧々子は気づいていない様子でリビングに入ってくると、ソファに腰を下ろし優々子の恐ろしい視線に気がつかない振りをしている義兄の緋影の方をチラチラと見る。


「……あぁ……喉……乾いたなぁ~」


 わざとらしくそう呟きながら、緋影に向けて地雷系の服装をアピールするような仕草を見せる寧々子。しかし、喉が乾いたと言いながらも、キッチンに向かう気配はない。その行動の意図をいち早く察した優々子が、牽制するように寧々子の元へと向かう。


「……寧々子? あなた……どうして、そんな服を着ているのですか?」

「ね、姉さん……って、その髪型どうしたの!?」


 想定通り牽制に来た姉の優々子にビクつく寧々子だったのだが、視界に入ってきたロリ度マシマシなツインテールの姉の姿に驚愕し思わず声を上げてしまう。


「髪型ですか? 何もおかしいところは無いと思いますけど……どうですか? 似合っているでしょう?」


 ふふん、とドヤ顔を浮かべるロリ子、否、優々子は、ツインテールを自慢気に揺らしながらそう言い放つ。その姿には、確固たる自信が滲み出ていた。身長や胸部に多少?のコンプレックスを抱えている優々子だが、自分の容姿には絶対的な自信を持っているようだ。


 そんな姉妹の会話を聞きながらソファに座って何食わぬ顔で作業を再開しようとしていた緋影の動きがピタリと止まる。数秒後に、有耶無耶になったはずの話題が舞い戻ってきてしまったと一人頭を抱えた。


 寧々子も、自慢げなドヤ顔の妹、否、姉の優々子に対して、露骨にしまった~と顔を逸らす。寧々子もまた、姉のツインテールゴスロリ姿が似合っていると言うべきか言わざるべきかに悩んでいる様子だ。


 ちらりと姉の姿を横目で見た寧々子。しかし、どう見てもそのゴスロリツインテール姿の優々子は姉ではなく妹に感じられ、視線を逸らしてしまう。


 寧々子の脳内には、「とがゆゆこ10ちゃい」という幼稚なイメージ映像が浮かんでいた。実際の優々子は10歳の頃から完全無欠の天才神童だったため、そんな幼稚な姿とは程遠いのだが、なぜかそんなイメージが頭の中に自然と浮かんでしまったのだ。

 

 マズイ、まずいと、イメージをかき消すために寧々子は頭をぶんぶんと必死に力強く左右に振る。何しろ、こんなことを考えているとバレたら姉に消されるのは確実だからである。

 

 一方、気まずそうな義弟と実妹の様子を察知した賢い呪いの人形ドールは、すべてを理解した。

 

 なるほど、真実を告げることは必ずしもよくないことなのだということを理解したお利口な呪いの人形ドールりんねちゃんは哀れみの無表情で誇らしげな表情の優々子をいつの間にか見つめているのだった。


 自信満々な優々子が呪いの人形ドールの哀れみの込められた視線に気がついたのか、リビングテーブルに座っているりんねちゃんの方をバッと振り返る。だが、呪いの人形ドールは明後日の方角を向いていた。そう賢いりんねちゃんは空気が読める人形ドールなのである。


 露骨に不満そうな表情を浮かべる優々子だったが、とりあえず今の問題は、地雷系ファッションに身を包み、けしからん脂肪の塊をこれ見よがしにひけらかしている妹、寧々子の存在なのだ。ジロリと鋭い視線を彼女に向ける。


「そんなことより……寧々子……そんな服装で、今から何処かに出かけるのですか?」


 優々子に雪女のような冷たい笑顔でそう問われると、寧々子はビクリと身体を震わせた。


 もちろん、寧々子に外出の予定などないし、そんなことは優々子も十分理解している。着替えた理由など、ただ一つなのだ。


 義兄の緋影がゴスロリ服を好むのでは、と考えた寧々子は、自分もゴスロリ服を着てみようと思った。だが、あいにくゴスロリ服は手持ちになく、仕方なくクローゼットを漁った結果、地雷系と呼ばれる服を見つけ、そのまま地雷系ファッションとメイクに身を包む寧々子が誕生したのだった。


 だが、そんな理由を姉の優々子に正直に話すわけにはいかない。あの鋭い視線の前でバカ正直に理由を話すことは、自分から地雷原に突っ込むようなものであるからだ。


 冷静に事前に考えていた言い訳を頭の中で思い出し、勇気を出して天使のような笑顔で、悪魔のように怒っている姉の優々子に寧々子は弁明を始める。

 

「こ……これは……えーっと……その……きょ、今日の配信はゴスロリ衣装でしようかと思ってさ……まぁ、正確に言うと地雷系ファッションなんだけど……」


 実は利賀 寧々子はとあるSNSでフォロワー100万人超えを誇る現役中学生インフルエンサーなのであった。とある動画投稿サイトでも登録者10万人を超えるほどの人気がある。ネット上ではギャルの間でも、愚かな(なにがとはいわないが)男の間でもちょっと有名な人物なのである。


 そう、寧々子は姉に牽制されることを織り込み済みで、この計画を実行したのだ。妹のインフルエンサー寧々子が用意した周到な言い訳に、優々子は思わずにっこりと微笑む。

 

「………………今すぐ着替えてきなさい」


 絶対零度の圧が込められた声色と笑顔でそう言い放つ姉の優々子に対して、たじろぐインフルエンサー寧々子なのである。


「え、えっと……で、でもでも……もう、この衣装で今日雑談配信するって告知しちゃったから……む、無理かな~」

「……寧々子? 姉の言うことが聞けないのですか?」

「……ご、ごめんね……で、でも……み、みんな楽しみにしてるし……こればかりは……しょうがないよね……そ、それとも……姉さんに止められたから中止って……告知しようか?」


 急いでスマホを取り出して操作し、とあるSNSのフォロワーの反応が映し出された画面を姉の優々子に見せつける寧々子は冷や汗ダラダラ目が泳ぎまくって必死に誤魔化しにかかるのである。そんな彼女に天使(悪魔)の笑顔を浮かべ圧を放つ優々子。


「ふふふ、やってくれましたね……寧々子」


 利賀 優々子という人物は、ネットというものはROM専、つまり、読み専でしか使用しないというある意味ポリシー的な価値観を持っていた。寧々子も姉がネット関連に自分の話題が出されることを嫌うことは知っていた。


 そう、寧々子のこの行動は、全て計画通り――――――勝利を確信しての行いなのである。


 しかし、ここで、表情は笑顔だが心のなかでは怒り狂っているであろう姉の優々子に対して、妹の寧々子が勝利宣言とばかりに大胆な行動に出たら、後日大変なことになることはわかっている。


 だ……駄目だ。まだ笑うな……状態の寧々子は勝利を確信しつつも、念には念を入れてすっとぼけた素振りを貫き通す。


「……な、なんのことかな? 今日、本当にたまたま、偶然、奇跡的にこの衣装なだけで……そ、その……な、何がダメなのかな?」

「逆に何がダメではないというのですか? 寧々子? 正直に答えてください」

「………………」

「なぜ黙るのですか? さぁ、寧々子……正直に話しなさい」

「……………………………………」

 

 しれっと誤魔化そうとする寧々子だったが、優々子にはどうやら通じないようである。これで誤魔化せたと思っていた寧々子だったが、優々子の圧を放ち続けるというパワープレイにぴえんと敗北し黙るしかなくなったようである。

 

 いつもの姉妹喧嘩(優々子圧倒的優勢)が始まったおかげで、ロリ子、否、優々子の話題が再び有耶無耶になったと緋影はホッと一安心。とりあえず、早く型紙だけ作って話題がまた再熱する前に素早く帰ろうと作業を再開し始める緋影なのであった。





 

 黄昏時に二人の真っ黒なローブを纏った男女が郊外の森林に佇んでいた。そこは、例の噂の呪いの館があった場所であった。だが、今、この場所に古い洋館は見当たらない。


「フフフ、あの人形ドールは計画通り……例の少年の手に渡ったようね」

「ああ……問題なく……しかし、いいのか? あれは正真正銘の怪異だぞ……ただの呪物とは理由が違うぞ」

 

 二人は抑揚のない声で会話を交わしながら、木々に貼られていた呪符を一枚ずつ剥がしていく。その動作は機械的でありながら、どこか不気味で儀式めいており、二人の表情はフードに隠れ伺い知れない。

 

「いいのよ……これで……早速、面白いことが起こったし……これからもっと楽しくなるわ」

「……いろいろな機関が黙ってはいないだろう」

「それがいいのよ……そうでなくては……困るもの」

「………………世界の進化のために、というわけか……」

「そう、世界の進化のために……それこそ……私たちの活動目的じゃない」


 木々を揺らす夕暮れの風に、二人の真っ黒なローブが静かにたなびく。その姿は、どこか禍々しく、不吉さを醸し出しているのであった。


「まさか、あの呪いの人形ドールを学校に持ってくるなんてね……ああ……これから何が起こるか楽しみで、愉しみで仕方がないわ」


 フードの隙間から覗いた口元が、不自然に釣り上がり、歪んだ笑みを形作る。その声には愉しげな響きがあるものの、どこか冷徹で狂気じみた色も混じっている。一方で、隣の男は深いため息をつき、わずかに肩をすくめる。


「……まぁ、どうでもいいが……正体だけはバレるなよ」

「ええ、今回は少し派手に動きすぎてしまったわね。あなたには動画配信者として協力してもらったし……私も魔術を使ってしまったわね……けれど……」


 女の声は、夕暮れの薄闇に吸い込まれるように低くなる。

 

「その価値はあったと思うわ……まぁ、結果さえ出せば、あの老害たちも納得するでしょう。それに……バレる心配なんて、まずあり得ないわ」

「……とはいえ、もしバレたら厄介だ」

「そうね。だって私たちは正真正銘の秘密結社なのだから……バレてしまってはいけないわね……絶対に……ね」


 夕日が沈みきる頃、二人は互いに視線を交わすこともなく、その場から静かに立ち去った。風に残されたのは、不気味な静寂と、木々のざわめきだけだった。

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