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りんねちゃんVSとある高校の教師達3

 とある高校の一年の学年主任であり、三十歳というひとつの節目を迎えた数学教師である女性教諭は一限目の授業を終え、職員室の自分のデスクでしばしの休憩を取っていると、定年間近な世界史の担当教諭から話しかけられ内心でイラッとなり態度にも露骨に現れる。


 なぜか一気に老け込んだ世界史担当の男性教諭から、いきなりよくわからない訛り喋りで本物の呪いの人形ドールを持った男子生徒が一年一組にいると伝えられ、女性教諭は何をコイツは馬鹿なことを言っているのだろう――――――まだ、若いのにボケたのだろうかと失礼な事を考えていた。


「はぁ~、よくわかりませんが……どうしてその男子生徒を注意しないのですか? 学校に人形ドールを持ってくるなんて非常識が過ぎますよ」

「あんなぁ……注意できんかとてぇ………………困っとるんよぉ………………鬼瓦先生…………後のことは頼んますねぇ」


 そう言い残しフラフラと頼りない足取りで職員室を出ていき何処かへと消えて行った世界史担当の男性教諭に目尻を抑え呆れ果てる一年の学年主任であり、数学教師の鬼瓦先生なのであった。


(はぁ~、ほんと、使えない、使えない……男は使えない……ほんと、無能ばかり…………ああ、もう!! ほんと、イライラする!!!!!)


 教師という職業にとって貴重な休日を大学時代の知人の結婚式で潰れたことで、大層ご立腹な彼氏居ない暦イコール年齢の学年主任の鬼瓦先生なのである。彼女の容姿は決して悪くなく、スタイルも長身でモデル体型と良い方である。


 だが、壊滅的に性格が終わっていた。


 人生これまで、長という名がつくものには必ず就き、正義の正論で相手をストレス解消とぶん殴り、気に入らなければ、感情論と屁理屈混じりの正論ぽい言い分で相手を無理やり論破するという傍若無人ぶりに容姿目当でも男は近づかないし、下心ありありで近づくチャラ男も数言言葉を交わせばヤバそうな雰囲気を察するのかそそくさと退散する始末である。


 そんな、優秀な彼女に与えられた学年主任という役職も、ストレス解消の捌け口となってしまっており、新入生達からは恐れられると同時に早々に嫌われ始めてもいた。


 だが、しかし、そんな鬼瓦先生ならきっと呪いの人形ドールを校内に持ち込んだ男子生徒を何とかしてくるだろうと一年一組の生徒達が期待するのも無理はないことであった。


(とりあえず、人形ドールは没収し、親を呼び出して説教ね……ほんと、救いようがないゴミみたいな生徒……あぁっ、もうっ! ほんとイライラする!!!)


 知らぬところで一組の生徒達の期待を一身に受ける学年主任の数学担当鬼瓦先生が一組の教室目指し廊下を歩き、すれ違う生徒達に対して細かいことで注意する。


 その形相はまさに鬼のようであった。彼女ならきっと呪いの人形ドールを没収し男子生徒を叱りつけることができるであろう。


(まぁ、このイライラをぶつけるにはちょうどいいかもしれないわね……さっさと人形ドールを没収してしまいましょう)



 


 

 前言撤回、回れ右と一年一組の教室から早々に退室する学年主任の鬼瓦先生なのである。授業開始のチャイムと同時に教室に入ってきた学年主任の鬼瓦先生のこの行動には、藁にも縋る思いで鬼瓦先生に期待していた一年一組の生徒達は激しく落胆したようである。


(え!? な、なんですか!? あ、あれに自分は注意をしないといけないの!? む、無理無理無理、無理ーーーーーー!!!! あのクソジジイ!! なんてヤバいことを押し付けてきてんの!? マジでありえないんだけど!!!!!!)


 先程までは、このイライラを人形ドールを持ち込んだ生徒に思いっきり、ぶつけてやろうなどと軽く考えていた鬼瓦先生なのだが、あまりにも恐ろしすぎて早々に戦意喪失、今にでも退勤したい気分であった。


 だが、しかし、自分が見下していた世界史担当の男性教諭がこのホラーの雰囲気の中で授業をやりきったとなれば、学年主任である自分が逃げるわけにはいかない。ここで逃げ帰っては学年主任としての立場も危ういと決死の覚悟で再度教室内に入る鬼瓦先生なのだ。


 室内の生徒達から一斉に救援を求める視線を向けられる鬼瓦先生は、気づかぬふりをしてなんとか教壇に上がり、教卓の前へと立つ。


「………………ぁ」


 傍若無人とばかりに頬杖をつき窓の外を眺めている異形な男子生徒に対して注意をせねばと必死に声をかけようとした鬼瓦先生だが、声にならないとはまさにこのことかと変な一言を発して終わる。


(いやいやいや、無理でしょ!! こ、これはもう、む、無視しましょう!!! 触らぬ神に祟りなしという言葉もありますし……触らぬ人形ドールに祟りは無いかもしれませんからね!!!)


 こちらをジッと見てくる机の上に鎮座している不気味な人形ドールと視線が合うとあまりの恐ろしさから視線を下に向け出席簿を開く鬼瓦先生なのである。


「で、では授業を始めます………………いいですね」


 鬼気迫るとはまさにこのことなのかと生徒達のなんとかしてくれという念を脳内で感じるも全て無視すると、いつもの不機嫌オーラと圧で黙らせる鬼瓦先生の余裕の無さに生徒達は絶望の表情を浮かべていた。


 そして、二限目の鬼瓦先生の数学の授業が始まるのであった。


 では、ここからは、呪いの人形ドールであるりんねちゃんのご様子をお届けしようと思います。どうやら、世界史の授業はほえ~と珍しさもあって真面目に授業を受けていたりんねちゃんでしたが、どうやら学校の授業にはもう飽きてしまったようです。


 あらあら、大変ですね。旦那(旦那ではない)であり、このりんねちゃんのご主人様でもある方は窓の外にご執心のようで、暇で暇で仕方ない様子のりんねちゃん。


 チラチラと構って欲しそうにいつの間にか緋影の方を見ては、いつの間にか黒板を見てを繰り返すりんねちゃんなのです。ですが、残念……どうやらご主人様は構ってほしいりんねちゃんの視線に気がついてはくれない様子――――――これは困りましたね。


 あと、補足説明をしますと、ご主人様で旦那様(旦那ではない)は学年主任である鬼瓦先生が怖くて直視できないため、自分の存在感のなさを利用し空気に徹そうと窓の外を眺めているだけのようですね。


 数学教師である鬼瓦先生が恐る恐るりんねちゃんのご主人様の方をチラチラと盗み見るたびに、こちらとご主人様を交互に見ていることに気がついたようで、どうやら呪いの人形ドールであるりんねちゃんがいつの間にか動いているのではと疑っているようですね。


 鬼瓦先生は、ものすごく禍々しいオーラが溢れ出している呪いの人形ドールりんねちゃんに恐怖し、よくあの世界史のジジイは授業をやる遂げたものだと感心しているご様子。


 もはや、早々に逃げ出したい鬼瓦先生ですが、学年主任のプライドと自分より圧倒的に下と思っていた世界史担当の男性教諭が授業をやり遂げたのに自分が逃げ出すわけにはいかないと思っているみたいですね。


 そんな鬼瓦先生の授業を暇つぶしにボイコットする気満々で鬼瓦先生をからかい始めた、からかいプロのホラードールりんねちゃんはメスガキならぬメス人形ドール?ムーブに鬼瓦先生は正気を保っていられるのでしょうか。


 鬼瓦先生がチラチラと呪いの人形ドールであるりんねちゃんを盗み見るたびに、なぜかポーズを変えるりんねちゃん。


 鬼瓦先生の数学の授業は――――――両手でマール、それとも両手でバツ、マール?バツ?と交互に繰り返すりんねちゃんに恐怖する鬼瓦先生なのだが、なんとか悲鳴は上げずに耐えているご様子は流石ですね。


 マールのときは天使のような笑顔(無表情)でバツのときは悪魔のような笑顔(無表情)なりんねちゃんに安堵、恐怖、安堵、恐怖を繰り返し情緒不安定になる鬼瓦先生ですが、正直、そんなに怖いなら見なければ良いのではと思うのですが、怖いもの見たさなのか視線を逸らしてはまたりんねちゃんの方を見てしまう鬼瓦先生。


 そして、最後にりんねちゃんは――――――ばんざーいからの天使の笑顔(無表情)から、鬼瓦先生は視線を逸らし、再度りんねちゃんを見ると残念ばぁつ!と呪いのオーラを放って鬼瓦先生を揶揄うりんねちゃん。


 しかし、なんとか悲鳴を抑え、恐怖でガクブルになりながらも、りんねちゃんに背を向け冷静を装って授業を再開する鬼瓦先生のリアクションに物足りなさを感じている様で、不満顔の無表情ドールフェイスのりんねちゃん。


 教室内には生徒達が必死にプリントに書かれた問題を解くためのシャー芯が削れる音しかしていません。もっと、この人形ドール動いていますよビックリマークかける五くらいの生徒会長並みのリアクションを求めていたりんねちゃんはハッと何かを思いついたようで、ものすごく悪い子の顔(無表情)になっていますね。


 そして、鬼瓦先生が数式を黒板に書き込み、生徒はプリントに夢中になっている刹那の隙に大胆な行動に出るりんねちゃん――――――なんと、鬼瓦先生が黒板に問題を書き終え、再びりんねちゃんを盗み見ようと後ろを振り返ると教壇の上にいつの間にか鎮座しこちらを見上げ見つめる呪いの人形ドールりんねちゃんの姿に鬼瓦先生が尻もちをつき恐怖の悲鳴を上げずにはいられなかったのも無理はないでしょう。


 一組生徒達も、呪いの人形ドールのこの行動には顔面蒼白恐怖に満ちた表情を浮かべ、やっぱりあの人形ドールは呪いの人形ドールだと再認識するのであった。


 周りの反応に対して大変満足そうな表情(無表情)の愉悦顔のりんねちゃんでしたが、ハッとあることに気がついてしまったようですね。では、りんねちゃんの観察はここらへんで終わりにしましょう。


「あれ、りんねちゃん……いつの間にそんなとこに………」


 鬼瓦先生の教室中、否、学校中に響くほどの大音量の悲鳴に今まで、空気に徹していた緋影も窓の外から教室内に目を向けると――――――机の上に居るはずのりんねちゃんが居ないことに気がつく。


 無表情で焦る緋影がゆっくりと鬼瓦先生の方を見ると、教卓の上に鎮座し、めちゃくちゃ気まずそうな無表情りんねちゃんの後ろ姿が目に映り、抑揚のない声で疑問を口にする。流石にこれは自分が呪いの人形ドールということが緋影にバレたかと思ってちょっと焦っている様子のりんねちゃん。


「………先生まさか……ぼ、没収ですか?」


 そして、焦る緋影はガタッと席を立ちあがり、鬼瓦先生に淡々とした口調で問うのである。彼の無表情な顔と赤い瞳に恐怖し後ずさるも、背は黒板逃げられない鬼瓦先生の顔は恐怖で歪んでいる。そんな緋影の言葉に、あ、やっぱりバレないとなった呪いの人形ドールりんねちゃんなのである。


「し、しません!! しません!!! お、お返ししますから!! い、今すぐ取りに来てください!!! ヒトカタさんッ!!!!!!!!!!」


 とりあえずバレてないと一安心のりんねちゃんは、鬼瓦先生にいっぺん、没収してみる?といった感じの挑発的な無表情ドールフェイスを向け揶揄う。それに対しブンブンとヘドバンよろしくと左右にものすごい勢いで頭を振って否定し大声を上げる鬼瓦先生なのである。


「でも、先生……いつの間にりんねちゃんを没収したんですか?」


 緋影は鬼瓦先生の言葉に従って席を立ち教卓の上に鎮座しているりんねちゃんを迎えに行く。ちなみに、いつの間にかりんねちゃんは緋影に対して抱っこを求めるポーズをしていた。そんなりんねちゃんを抱きかかえ、抑揚のない声で今だに教壇の上にへたり込んでいる鬼瓦先生に尋ねると、彼女の瞳が恐慌に満ち、顔が歪むほどの恐怖に満ちた表情を浮かべガクガクと震えだす。


「ち、違います!! 私は没収などしてません!!!! そ、その人形ドールが勝手に……」


 緋影に抱っこされ、いつのまにか胸にしがみつきながら、こちらを見ていた呪いの人形ドールを指差す鬼瓦先生は、震えた声で緋影にそう言い放つも言われた緋影は首を傾げる。


「………………先生、人形ドールは勝手に動いたりしませんよ」


 無表情に抑揚のない声でそう言われ、数学教師は恐怖し理解した。これは脅しであるということに――――――彼はこう警告しているのだ、あまり調子に乗るなと。


 そう鬼瓦先生は自覚があった、どんどん出世し学年主任まで任され、生徒達や先生方に対して高圧的な態度で接しても許されることで自身が偉いと錯覚していることに。


 だから、言葉遣いもどんどん上から目線になっていき、生徒達に対して些細なことでも偉そうに注意し、周りの先生方を見下してもいた。そんな自分に対して彼はほのめかすように警告してきているのだと、勝手に悟った数学教師は自己嫌悪に陥った。


 恐怖で生徒を叱りつけていた自分が恐怖でわからされたのだと、自分はなんて恐ろしいことを今まで生徒や先生方、過去に関わったすべての人々にしていたのだろうと反省したのである。


「そうですね………………人形ドールは勝手に動いたりしません……その通りです!! ヒトカタさんッ!!!!!!」


 無表情でこちらを見ている男子生徒の人形ヒトカタ 緋影ヒカゲに悟ったような口調でそう言い放つ鬼瓦先生は、よし、今日から生まれ変わって真面目に教師をしよう――――――じゃないとこの生徒に殺される!!!!!!


 緋影はただ、りんねちゃんが没収されなくてホッとしていただけなのだが、その無表情にビビり散らかす鬼瓦先生なのであった。


 そして、鬼瓦先生は恐怖で引きつりながらもいつもの不機嫌顔ではなく、ぎこちなくも今まで見せたことのない笑顔を浮かべ授業をなんとか再開し、優しく丁寧な授業をするのであった。






 二限目の授業を終えた利賀 優々トガ ユユコは天使の笑顔で職員室を訪れ、次の授業を受け持つ先生のお手伝いを買って出ていた。さすが生徒会長と褒められていたが勿論、打算あってのことで例の呪いの人形ドールが没収されているかを確認しにきたのである。


 若くして一年の学年主任となった鬼教師と呼ばれる女性教諭の鬼瓦先生ならなんとかしてくれるかと少しは期待していたものの、結局呪いの人形ドールは今だに没収はされていないようであった。


 いつもは不機嫌を隠さない顔をしていた鬼瓦先生は、人が変わったようになぜか不気味な笑顔を終始浮かべており周囲の先生をドン引きさせていた。


 そんな、一年の学年主任の鬼瓦先生を一瞥し、ボソッと使えないですねと小声で言い放つと同時に笑顔で職員室を後にした優々子は、すぐにその足で校長室へと向かうのであった。


 そして、ついにこのとある公立校の長でもある校長先生が動き出す。我が校始まって以来初となる一年生で生徒会長となり、様々な功績をあげた美少女生徒会長利賀 優々トガ ユユコにお願いされたためであった。


 揃いも揃って、他の先生方は何をやっているのだろうと憤慨し、呆れ果てながら校長先生は自らの足で一年一組の教室へと向かう。


 そんな校長先生を笑顔で見送る優々子はこれで、流石に呪いの人形ドールも没収されて焼却送りだと上機嫌でこの場を後にするのであった。






 威厳ある公立校の長であり、学校内最高権力を持つ校長先生はすぐに回れ右と一年一組の教室前の廊下から退却を始めた。


「ちょ、ちょっちょっ、ちょっと待ってくださいよ! 校長先生!」


 すぐに逃げ出そうとした校長先生を引き止めるのは一年一組英語担当の新人女性教諭であり、一組の三限目の授業を行わなければ行けない可哀想で小柄な、可愛らしい容姿の先生である。


「ひ、非情に残念だが…………わ、私は急遽野暮用の出張の予定を思い出してね………………すまないねぇ」

「急遽思い出す野暮用の出張ってなんですか!? 校長先生がなんとか出来ないなら、あの生徒と呪いの人形ドールはどうするんですか!?」

「………………あ、後のことは優秀な先生方に任せよう……す、すまないが時間がないのでね……では、私はこれで」

「ちょっと、校長先生逃げないでくださいよ!!!!」

「だ、断じて逃げてなどいないぞ……ただ、どうしても外せない出張があってだね……仕方なくだ…………仕方なく……きちんと他の先生方にも校長先生は仕方なく出張に行ったと説明するように!!! いいね!!!」

「ちょっ!! 校長先生!! 私まだ新人なんですけどぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!」

「新人でも教師は教師………………優秀な君に後のことは任せるから………………では、時間がないので失礼するよ!!!!」


 新人の小柄の女英語教師を置き去りにし校長先生はとんずらし、残された新人女性教諭はその場で呆然と立ち尽くす。


 そして、令和の今こそ教師という道は人材不足で就職しやすく、働く環境も改善され今ではホワイトで、安牌な職であると豪語していた高校三年の時の担任の言葉を信じた自分が馬鹿だったと、当時の無責任な発言をしていた担任を今更ながらに恨む新人英語教諭だったのであった。


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