魔導具 その3
蒼の剣が幾度となくフラッシュする。
昔、写真を撮ってもらう時に使ったストロボみたいだ。
それほど強い発光じゃないから目が眩むことはない。
でも、この現象はいつまで続くのだろうか。すでに五分以上が経過している。
刀身に触れて話しかけてみる。
が、いつもの反応がない。
「ねぇ。これって……大丈夫なの?」
さすがに少し不安になり、思わず心配の言葉が口をついて出る。
「大丈夫です。この光は剣が成長している現象です。今までにプールしてきた経験を消費して、自らの能力の上昇を行なっているのです」
「そう。ならいいのだけれど」
この子は、人であった頃から一緒に過ごしてきた。
大げさかもしれないけれど家族であると同時に、私の人生の相棒なのだ。そんな大切な蒼の剣に、こんな得体の知れないアイテムを実験みたいに使うなんて。今さらながら後悔する。
「魔王フレデリカ様。終わりますよ」
使者の言葉に我にかえる。
後悔の念を抱きながら考え込んでいたみたいだ。さらに五分が経っていた。
蒼の剣に目をやる。
先程とは状況が変わっていた。
激しくフラッシュしていた光は止み、今は優しくあたたかい光で包まれていた。やがてその光も徐々におさまっていき、そして消えた。
「蒼の剣……」
声の震えが抑えられない。
「ねぇ。応えてよ蒼の剣!」
「はい。マスター」
どこからともなく声が聞こえる。
女の人の声だ。
「えっ?何?」
竜族の使者を見る。
目が合った。
何か不思議そうな顔をしている。
あれ?何その顔。
「マスター。こちらです」
元天使を見る。
こちらも同じ。
他の人には聞こえないみたいだ。
ほんとうは何となく気づいている。
この声は私にしか聞こえていない。
正確には私の意識の内側に直接語りかけてきている。
信じ難いけど……
考えられる可能性は一つ。
「蒼の剣!あなたなの⁉︎」
元天使が、不気味なものを見る様な目でこちらを見ているが関係無い。
「そうです。私は蒼の刃。フレデリカの剣となり、立ち塞がる敵を討ち滅ぼす。何なりとご命令を」