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攻撃開始


             1



「カウント開始……3……2……1……攻撃開始」


 地上で待機してくれている人達にもわかるようにカウントダウンを声にする。彼らは不足の事態に備えて警戒体制にあたってくれている。直接的な戦力にはなれない事を承知しながらも、少しでも力になれないかと構えてくれているのだ。

 それは私の不安をかき消してくれる。とてもありがたい事だ。

 万全のコンデションで作戦にのぞめる。


 魔導砲のトリガーを引く。

 トリガー部分が魔導砲との接続も担っている。ここから魔力を注ぎ込みエネルギーとしている。

 相当な魔力を持っていかれている。作戦上これを二十分間、断続的に放出し続けなければならない。

 普通なら不可能な作戦だけど、膨大な量の魔力を所持している私なら可能だ。

 普段は魔法を使っても魔力の減少を全く感じないけど、今は少しずつ減少しているのが実感できる。それだけの魔力を消耗しているということだ。


 青い空に青白い閃光が吸い込まれていく。

 真下には、広範囲にわたって白い雲の絨毯がしかれている。

 おかげで地上からこの光の帯は観測できないはずだ。騒ぎにならないから丁度いいかもしれない。

 砲撃の反動で右腕に重さを感じる。けど、蒼の剣が対策してくれたから大丈夫。相当な放熱もされているはずだけど、これも大丈夫そうだ。大気中の気温も低めなのも助けになっている。

 

「マスター。発射成功です。魔力エネルギーは私に誘導されています。着弾まで十四分です」


 とりあえず私は、このまま射撃角を維持すればいい。

 細かな修正は蒼の剣がやってくれている。

 でも油断は禁物だ。

 上半身は強化魔法で負担はないけど、腰には少しだけズッシリと重みがあるように感じる。まぁ気を抜かなければ余裕で耐えられる。


 この件が片付けたら温泉巡りをしよう。魔界に帰るのは少しくらいなら遅くなっても大丈夫だろう。



             2



 数えきれないほどの炎の玉が地上に向かって落ちていく。

 私の砕いた隕石の破片だ。

 あれらが地上に降り注いだら多くの人間が命を落とすだろう。

 でも大丈夫。散らばった石は、あんなふうに炎に包まれて燃え尽きる。

 ……って蒼の剣が言っていた。 


 それにしても危なかった。

 まさに不測の事態ってやつだ。

 

 私の撃った一発目の魔力エネルギーは予定通り目標に命中した。

 狙い通り目標の中心を撃ち抜き、超巨大な石ころは爆散した。

 ただし、全体重量の半分が。

 残り半分は軌道を変えて地上に向かい加速を続ける。


「申し訳ございませんマスター。予測外の事態です。魔力エネルギーは目標の中心部を捉え、全体の半分を排除しました。しかし、残り半分は依然、地上に向かい進行中です。新たな落下予測地点をイメージで送ります。跳躍後、直ちに発射体制に入ってください」


 予定外の二射目。

 私の魔力はもつのだろうか。

 二十数分の断続的な砲撃で、魔力の半分くらいを持っていかれた。おそらく、一回目と同じ射撃は出来ないかもしれない。

 少しだけの不安を抱えたまま、蒼の剣の示す座標へと跳躍する。


「えっ⁉︎何これ⁉︎」


 先程まで見えていた青空が深い闇に変化した。

 眼科には青い巨大な球体が広がっている。

 初めての感覚に脳が混乱する。


「あ、蒼の剣!何か怖いんだけど!何なのここ⁉︎」


 湧き出てきた恐怖に遠く離れた相棒の名を叫ぶ。


「落ち着いてくださいマスター。体のまわりに張っているフォースフィールドさえ解除しなければ生命活動に支障はありません。逆にフィールドを解除してしまうと、ぼぼ即死になりますので絶対に解除しないでください」


「うん。それは前もって聞いていたから大丈夫だよ」


「では、直ちに攻撃開始してください。もうあまり距離に余裕がありません」


「わかってる。もうやってるよ……発射!」


 蒼の剣のガイドを感じる。

 それに従って二度目のトリガーを引いた。


 相当な長距離射撃の為、手応えみたいなものは一切感じることはできない。

 だから私は、蒼の剣の報告から結果を知るしかない。


「命中しました。目標は九十二個の破片へと分裂。その殆どが地上に落ちる前に燃え尽きます。しかし、その内の四十二個が地表と衝突します。被害はでますが、生物が死滅する結果からは回避できました」


 嘘でしょ?また?

 二射続けて失敗した。

 凛ちゃん。巫女さん。真琴さんの顔が順番に脳裏に浮かぶ。

 

「マスター。残念ですが、四十二個の欠片を魔導砲で全て撃墜するのは不可能です。直ちに、現在の位置から退避してください。八分後に、現在の座標を隕石の欠片が超高速で通過します」


 ……ったく。

 もう正攻法でやるしかないじゃない。

 

「蒼の剣。大急ぎで戻って来て……って。早っ。さすがね」


 全ての言葉を出す前に、最強の魔剣は私の左手に握られていた。


「無茶です。私はマスターの生命を最優先に考えています。これからやろうとしている事はマスターの生命に危険が生じます。よって、そ・の・作戦には賛同しかねます」


「あなた本当にすごいわね。私の考えている事まで読めるなんて。でも大丈夫よ。八分間あれば、音よりも速い速度で動けるだけの魔力を集中する事が出来る。もちろん全ての隕石の欠片を叩き斬るには、あなたのサポートが必要だけど」


 そう。

 時間の感覚を引き延ばす私の必殺闘法。

 昔は八倍速で動くのが限界だった。

 けれど、私は成長したのだ。

 技を発動する前の集中に時間を使えば音よりも速く動ける。普通の人からすれば、時を止められているに等しい。


「無茶です。二度の砲撃により魔力が大幅に減少しています。全ての破片の迎撃に成功したとしても、地上に戻る分の力が残っているかどうか」


「つべこべ言わない。スタートは破片とすれ違うタイミングで。あなたにはカウントダウンと、奥義『閃光』の誘導の補佐をお願いするわ。あなたも魔力使い切る寸前でしょ?チャージするね」


 左手に魔力を集め、蒼の剣へと流し込む。

 鈍い光を放っていた蒼の剣が、元の輝きを取り戻した。


「魔力半分くらいしか渡せないや。今はこれが精一杯なんだ。ごめんね」



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