女坂探偵事務所 その1
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女坂探偵事務所。
水道真琴らが所属している組織だ。
探偵事務所というのは、私がいた世界でいう『なんでも屋さん』みたいな仕事みたいだ。人探しや調べもの、猫探しからケーキの市場調査まで。本当に幅広く依頼を受けるらしい。
まぁ『なんでも屋』なら私も、冒険者をやっていた頃に似たような事をやっていたからわかる。
「でもね。ここだけの話、ウチは国家と裏側で癒着……えっと、協力関係的に繋がっているらしいから今回みたいな特別な依頼とかもあるわけなのね。だからバックアップというか後ろ盾も強いのよね。あっ!これってば、ここだけの話だから他言無用なのね」
と巫女さんが話してくれた。
よくは理解できないが、女坂探偵事務所がすっごい特別な場所である事は分かった気がする。
そして特別な組織であるが故に、特別で優れたスペシャルな人材が集められているのだ。
この変な言葉づかいの巫女さんだって世界で三人しかいない悪魔召喚士らしい。
「さてフレデリカちゃん。時間がないので早速なんだけれど。魔法戦車とやらは何処にあるのかしら?」
何処と言われても。
あれは『無限空間』に収納してある。
いつでも取り出せる。
ただし、それなりの広さがある場所は必要だ。
あれは巨大すぎる。
「水道さん。先程お話した通り、あれの大きさは尋常ではないほど巨大です。普通の戦車とは違うのです。先に場所を用意してもらえれば、そこに戦車を呼び出しますので」
「呼び出すとは……よくわからないけど、あなたなら何でもやってのけちゃうのでしょうね。大丈夫よ。場所は用意してあるわ。改修も、その場所で行う予定よ」
水道真琴はそう言うと、ポケットから板状の何かを取り出し、それに向かって何かを話し始める。
後に分かった事だけど、それは『携帯電話』というアイテムらしい。どんなに離れた相手とも会話出来るすごいアイテムだ。
「それじゃあ行きましょうか」
2
「あぁ……懐かしい。太陽の光だ。青い空。空気が……空気はイマイチか。なんか変な匂いが混じっている」
魔界では絶対に見れない景色。
青空と太陽なんて百年前くらいに見たきりだ。
これだけでテンションが爆上がる。
バリバリバリバリ
突然空から爆音が降り注ぐ。
すごい音だ。
音のする方を仰ぐ。
「て、鉄の塊が空に……うわぁ!しかも暴風が!これって風魔法⁉︎近寄れない……風魔法に強いのって……土魔法だっけ⁉︎」
「フレデリカちゃん。そこから離れなさい。ヘリが着陸できないでしょ?」ほらほら。こっちおいで」
「水道さん!危ないですよ!私がやっつけますから下がっていてください!」
空に浮かぶ塊に右手をかざす。
このまま撃ち落としてやる!
「誰も傷つけさせはしない!一瞬でケリをつけてあげる。くらいなさい……きゃあ!」
景色が一回転した。次の瞬間地面に背中を打ちつける。
「痛たた……何するんですか……って早坂凛はやさかりんさん?」
この人は……たしか気配もなく私の背後をとってナイフを突きつけてきた彼女だ。
「フレデリカさん。アレは『ヘリコプター』という乗り物です。たぶんですけど、今攻撃しようとしてましたよね?今からアレに乗って移動するのですから。ダメですよ。さぁ、こっちに来てください」
手を握り引っ張られる。
引かれるままに出口の扉の方へと連行された。
何故かはわからないが、この人に逆らえる気がしない。
でも恐怖とか威圧とかじゃなく、なんと言うのか……優しいっていうか。握られている手も、優しく慈愛みたいなのを感じる。なんか懐かしい。私の家族になってくれた盾の聖騎士さんみたいな温かさだ。
ヘリコプターと呼ばれる乗り物が到着すると、手を繋いだままエスコートしてくれる様に機内に誘導してくれた。
何この子。
美少女で強くて可愛いし、長い黒髪もツヤツヤで綺麗だし。
女子の憧れの定型じゃないか。好きになっちゃうぞ。




