異世界転移? その3
「降参降参。ごめんなさい。私が悪かったです。だから首の刃物どかしてちょうだい」
どういうトリックなのか。
何かわからないが、刃物の先端が私に当てられている。
が、それを待つ者の気が感じられない。もしかしたら蒼の剣みたく、この巫女が操っているのかもしれない。
どちらにせよ。この私の命に手をかけられている。
「悪魔よ。これは契約だ。妾らは契約の代償として数百の魂を支払っている。契約の内容は、この世界の窮地を救う事。これに従わぬというのならば、契約の破棄となる。だが妾は、それを認めん。お前の命をもって償ってもらう」
「ちょっと!言っている事が何一つわからないのだけれども。私は、そんな魂なんて受け取っていない。それに契約なんて知らないし……蒼の剣。今の状況に関して何かわかるかしら?」
「解。これは強制契約召喚儀式です。我らが今存在しているこの世界が優先されています。先程から会話に出てくる『魂』。既に受領されています。私の内に膨大なエネルギーがストックされています……追加情報取得。警告します。この契約者の意にそぐわない行動を起こした場合、受け取った生贄の魂の代償として、マスターの命を契約者に対して支払う義務が発生し、強制的に徴収処理されます。つまりは死にます。このルールは我らには改変する事はできません」
「な、何それ⁉︎そんな都合いい話あるわけ⁉︎じゃあ私って、この人たちの言いなりってこと⁉︎目的の為なら平気で大量の命を犠牲にするような野蛮な輩の望みなんてろくな事じゃないわよ!」
いけない。あまりの無茶条件に声に出して叫んでしまった。
蒼の剣の声は自分以外には聞こえないから、側から見たら『独り言を叫ぶおかしな奴』に見えるに違いない。
「野蛮な輩とは酷い言われようだわぁ。これでも世界の人を救おうと奮闘しているのに」
「はぁ⁉︎何百人も殺しておいて救うだなんてよく言える。今の私の心境を教えて上げましょうか?あなたの言う世界を救って契約が済んだら、私がこの世界を滅ぼしてあげる」
冷静に戻れない。
このままじゃ本当にこの世界を潰しかねない。
「悪魔って話とか聞けないほど知能が低いのかしら。奇跡的に言葉が通じるっていうのに。あのね。生贄っていうのは、この世界の罪人なのよ。それも最悪なクソ共。ちゃんと法で裁かれ、無事に死刑になった獣共よ。ちなみに何の罪を犯したかなんて気分が悪くなるから聞かない方がいいかしらね」
死刑囚……
つまりは断罪されるべき者たち。
それでも……それでも、こんな使い捨てみたいな使い方で命を奪っていいものだろうか。
「だけど!生きるチャンスを!その者たちにも更生する可能性があるかもしれない!」
「あなた悪魔でしょ?人間の命なんて何に使うか知らないけれど、消耗品みたいな感じでしょ?だいぶ変わり者ね。ねぇ。そこに紙の束があるから見てみたら。でも文字読めないかね?生贄に使った輩の行ってきた罪が書いてあるよ。読めなかったら言ったらいいのね。妾が朗読してあげるからよい」
巫女が示したところに卓が見える。
その上に分厚い紙の束が置かれていた。
文字は読めないが人物の写真が付いている。
おそらくだけど、これが生贄にされた罪人たち。
「蒼の剣。言語の変換できるかしら?出来るならお願い」
あの巫女の口ぶりから、書いてある内容に関しては嫌な予感しかしないけど。それでも自分の目で確かめないと。
「承知しました。この世界の言語を解析します。お待ちください。解析までの時間……五十秒……四十秒……」
まったくもってこの子は。私の出来ない事を難なくやってのける。これじゃあ、私が蒼の剣の装備品みたいだ。
「どうしたのさ?読まないのかしらさ。それじゃあ妾が……」
「大丈夫よ。自分で読めるから」
「マスター。言語の解析完了しました。この文字の羅列は『日本文字』と言われるようです。ではマスターの思考にリアルタイムでリンクします。リンク開始…………完了しました」
蒼の剣の声が終わると同時に、先程まではクネクネしていた記号の並びが意味を成して見えるようになった。
「すごい……」
違和感がないどころではない。まるで故郷で使っていた言葉みたいに、頭の中に意味が入ってくる。
だけど……
「うっ……何これ……」
一人の人物の資料で四ページほどあった。
名前や生年月日の基本情報。
経歴、家族構成などへと続く。
その次のページ……
犯罪経歴のページへと移る。




