異世界転移? その2
複数人の話し声で目が覚めた。
石畳みの床に這いつくばっている自分を認識できる。
大丈夫だ。意識もはっきりしている。
とりあえず起き上がって状況の確認をしなくては。
「よいしょ……と」
怠いけど体は動く。
両手……両足……ちゃんとある。
右手には蒼の剣も握られている。問題はなさそうだ。
さて……とりあえず気配は九個。
特別、強い魔力は感じられない。
でも……これは……
あえて魔力を抑えて気配を消しているのかもしれない。
まだ目を合わせるのはやめておこう。油断をするのはまだ早い。
とりあえず様子見だ。
ここが何処だかもわからない以上、相手の出方を待つしかない。
「ねぇ。どういうこと?普通の女の子が出てきたのだけど。剣の形をした青いクリスタルみたいなの持っているけど。どう見ても失敗でしょ。コレ」
女の声が聞こえた。
やや右側後方から聞こえる。
「いやぁ。死刑囚とはいえ、あれだけの人数を生贄に出したのだよぉ。それなりに上位の悪魔を呼び出せたはずなんだけどねぇ」
今度は正面前方から声がする。こちらも女の声だ。
会話から推測するに、この人物が私を呼び出したのだろうか。
「でもね……全国の死刑囚使ってしまったから。この方法はもう無理ね。って言っても他に方法はないし。終わったわね人類。はぁ。せめて最後は愛する人の傍で過ごしましょう。じゃあね。良い人生の最期を。あっ、護衛のスタッフも解散していいわよ」
足跡が遠ざかっていく。
それを追う様に複数の足跡も遠ざかっていく。
しばらくしてから遠くで重たい扉の閉まる音がした。
さてと……状況確認でもしますか。
(悪役っぽくて嫌だけど……蒼の剣。お願い)
この子の動きは常人じゃ追えない。
「よいしょ……っと。ねぇ。悪い様にはしないから、大人しくしてね」
起き上がり謎の異世界人に向き直る。
すでに蒼の剣の刃が、その人物の喉元に張り付いていた。
さて。悪魔らしく陰険でズル賢い尋問でも始めましょうか。
「ありゃ。もしかして……今の妾は命が危なかったりしていたりするのだろうか。それにしてもこの青い剣は自我が存在しているのか。勝手に動いて妾の首を人質にとっている。やはり儀式は成功していたと思っていいのだろうか」
何だ。この女。刃物をつきつけられているのに冷静だ。
私の肉体年齢と変わらないように見えるけど。肝がすわっているというのか。
それに身につけている服に見覚えがある。
昔の友人が同じデザインのものを身にまとっていた。
彼女は神の使使いとして国を守っていたけど。
たしか……巫女装束とか言っていた。
巫女って神に仕える者だった気がする。悪魔召喚とかやっちゃっても許されるのだろうか。
「お嬢さん。私も、あなたと同じ。もしくは、それ以上の疑問があるのだけれど。教えてもらっていいかな?」
刃物突きつけられて脅されているのに冷静だ。
こんなにショートカットの似合う可愛らしい顔をしているのに。なかなか肝が据わっている。
「それでは悪いけど、この摩訶不思議な刀を引いてもらえるかしら。そうしないと話し合いが出来ないのではないのではないのかしら」
「もしかしてあなた。相当な変わり者なの?まぁいいわ。戻っておいで。蒼の剣」
呼びかけられた相棒は、回転しながら私の元へ戻ってくる。
「申し訳ないけど妾から先に質問させていただく。単刀直入に聞く。そちは悪魔か?いや……そんな事はどうでもいいのだ。お前は強いのか?二百人を生け贄に捧げたのだ。それなりの……」
「ちょっと待って!答えて。二百人の生け贄とは何なの。あなたち人間なの?よくも大勢の命を簡単に。何を企んでいるか今すぐに吐きなさい。出ないと、このまま首を落とす」
再び巫女の首筋に蒼の剣を突きつける。
ただの脅しだけど、殺気を作り本気だと思わせる。
「命に刃がかかっているのは妾だけだと思うなかれ。先程も言ったが話をするなら武器を下ろす事だ」
「何を言っているの。今は私の方が優位な立場に……つっ!」
うなじのあたりにチクッとした痛みが走った。
これは……刃物。
「ご苦労様。凛ちゃん。あなたがいてくれて助かった」
巫女が私の背後に向かって声を発する。
「マスター。動かないでくださ。マスターの首すじにナイフを突き付けている人物がいます。排除は可能です。ただし、この距離だと相打ちになる可能性が六十パーセントです」




