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【完結】My² Gene〜万能遺伝子と宵闇の光〜  作者: droegg
第7章 監獄の星[牢星]
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徒手格闘戦

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【登場人物】

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。

 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。


 [レモン・ポンポン]

 褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。

 娯星テロ事件の後、プラズマと涙流華に強制的に同行させられる。ガタイの割にビビり。


 ▼政府軍

 [ラバブル・ラバーズ]

  政府軍元帥。褐色の肌に白髪、眼帯をつけている。今回の牢星調査の指揮を執る。


 [アイリス・ローン]【鬼神】

  政府軍中将。ピンク色のロングヘアで、見た目は少女のような風体。ギリギリまだ34歳。


 ▼Masters

 [ガウディオ・ジア]【瞬炎】

 Mastersの一人。電撃の遺伝子能力者。森星でプラズマ達と共闘する。


 [ルーノ・スクラブ]

 プラズマの級友。ガウディオの助手という形で行動している。セリナとは犬猿の仲。


 ▼殷生師団

 [アクスグフス・グシェ]

 師団のリーダー的存在。


 ▼その他

 [セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力、封印系煉術を操る。


 [レオン・アイシー]

 セリナの師匠。氷の能力と封印の能力を操る。


 [アリス・ジア]

 プラズマの師匠。電撃系の能力を持つ女性。ガウディオ・ジアの妹。


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【お知らせ】

 表紙と後書きのエクストラストーリーはまた後で


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 涙流華は舌打ちをしながら、自身の前に水の大玉を生成した。そしてバリスはその水の玉に毒を染み込ませる。


「やれ! ルルカ!」

 バリスの声と共に涙流華は水の玉を凍らせてパイカに向けて放った。


 パイカは両手をクロスさせると、迫りくる氷塊を引き千切るように両手を広げる。

「命10個分の力。こんな氷、粉々だ。10人の人生を懸けたものだからな」

 パイカの言う通り、涙流華とバリスが放った毒の氷塊は粉々に砕け散った。

「わざわざ毒の特性を活かしづらい氷にするだなんて、センスがないな」


 その言葉にバリスと涙流華は口角を上げる。

「お前のセンスとは違うみてぇだな」


 涙流華が刀を持っていない左手を前にかざすと、パイカの周りに飛び散った氷の破片が昇華し始めた。

 パイカ達は瞬く間に蒸気となった毒によって包まれる。


「どんな能力だろうと、麻痺らせちまえばこっちのもんだ!」


 (よもぎ)色の霧が晴れていくが、そこには変わらず二つの影が立っていた。

「マジかよ……!」


「人の命は無限大、すばらしいな。今の解毒で7人分…2人で14人分を使ったよ」


 パイカの後ろに立つ男…深い茶色の短髪の若い男はパイカの横に並んだ。

「あっちの水王の侍は俺がやる」


「おい、待て」

 男はパイカの了承を得る前に涙流華へと歩み寄っていく。



「侍! あっちで俺と遊ぼうぜ!」

 そう言って親指を立てて方向を指示している。


 男の言葉にバリスと涙流華は目配せをした。

 そしてバリスが軽く頷くと、涙流華も頷き、男の示す方向へと警戒しながら歩いていく。


「全く……あの男は自分勝手で使いづらい」


 離れていくその男と涙流華。

 残ったバリスに対し、パイカは余裕な様子で問いかけた。

「いいのか? 君一人じゃ到底無理だと思うが」


「そうか? 俺は独りで十分だと思うけどな…?」

 バリスは虚勢を張りながらも、戦況をどう進めていくかを思案していた。




 涙流華を先導する男は、パイカたちと十分距離を取ったところで立ち止まった。

 男は尚も涙流華に背を向けている。

「ここらへんでいいだろ」


 周りでこちら側の様子を窺っている収容者たちに対し、男は牽制した。

「お前ら、俺達の邪魔したら八つ裂きにするからそのつもりでいろよ」

 鋭い眼光だった。反抗心など生まれようもないほどの殺気。


 収容者たちは皆腰が引けていた。

 そして男は涙流華に向き直る。

「まぁ、邪魔なんてできねぇんだけどな」


 男は両手をパンと叩くと水平に広げた。

 それと同時に青白い円陣が男達の周囲に浮かび上がった。


「俺との遊びを終えたらあの紫髪の奴のところに行かせてやるよ」


「遊びだと?」


「そう。遊びだ。5分間俺と遊ぶ。ただそれだけだ。いいだろう? 水王家の侍」


「お前、私を知っているのか?」


「お前のことは知らないが、水王家は知ってるさ。元名家で剣術に長けた侍の一族。一度手合わせ願いたいと思っていた。まさかウラズマリーとやらに水王家の侍が付いているとはなぁ」

 男は心底嬉しそうに語っている。


「けど俺、今剣なんて持ってないからお前の一本貸してくれよ」


「ふざけるな。侍が己の刀を他人に渡すか」


「困ったな。徒手ってわけにもいかないしな。せっかくの水王家の侍なのによ」

 どうするか、そういった様子で頭を掻く男。

 涙流華は男の方を向きながらゆっくりと後退すると左腰に携えていた2本の刀を丁寧に置いた。


 そして彼女は男の方へと歩みよると、間合いを取って立ち止まった。

「徒手格闘でいい」


「水王家は徒手格闘は捨てたんだろ?」


「大方の奴らはそうだが、私は別だ」

 涙流華は右腰に右拳を当て、左手を前へと置き、構えた。


「そうか! ならそうしよう! ルール…遵守事項は簡単だ」


「遵守事項だと? 舐めているのか?」


「舐めてるも何も、これは遊びだ。いいか? ルールは簡単。相手に参ったさせたら勝ちだ」

 涙流華は理解し難いといった表情を浮かべている。

「俺はお前を殺さないが、お前は俺を殺してもらって構わない」


「階級は合わせなきゃな。お前体重何キロだ?」


 涙流華はその問いに対し眉間に皺を寄せた。

「“れでぃ”に体重を聞くとは、失礼な奴だな」


「まぁ見たところ60キロ前後ってとこか」


「そんなにないわ莫迦者。51(キログラム)だ」


 まんまと罠に引っかかった涙流華の単純さに男は笑顔で頷いている。

「じゃぁ、それで」


 すると180センチメートルはあった男の体は見る見る内に小さくなっていき、涙流華と同じくらいの背丈となった。

「なっ…!?」

 涙流華はさらに驚きの光景を目にすることになる。

 男の体つきは丸みを帯び、女性のような柔らかな雰囲気を放ち始めた。


「さぁ、これでお前と性別、身長、体重。全部一緒だ」

 男の声も高くなっており、それは明らかに女性のものだった。

 そして()()はだぼだぼの道着をきつく着直すと、帯も締め直して下衣の(すそ)(まく)った。


「俺は有薙舞(アルティマ)琥太郎(コタロウ)。お前は?」


「水王家……水王(スオウ)涙流華(ルルカ)だ」

 困惑をしながらも涙流華も名乗り返した。


「じゃぁ、始めるか」

 

 アルティマは両手を顔面の前に出すと左半身となった。脇は閉まっており、顎を引いて涙流華を睨んでいる。


 涙流華も右拳を腰に当て、左手を前へと出して構えた。


「水王家は空手道か」


「私()、だ。それに空手術だ」


「そうか。水王家はジパン族だもんなぁ。俺らと違って武()から外れたわけだ」


「だから水王家ではなく、私()と言っているだろうが」


 アルティマは構えたままジリジリと間合いを詰めていくが、涙流華も引くことなく相手の出方を見ている。


 ある一定の間合いでアルティマは止まると睨み合ったまま、数秒が経った。

 一見すれば何もせずに睨み合っているだけに見えるが、微妙な足の動き、目線、肩の動き…

 その全てを感知しながら踏み込むタイミング、防御のタイミングを探っていた。


 先手を打ったのは涙流華だった。

 両手が顔面付近まで上がっていたアルティマに対し、涙流華は素早く右の前蹴りを腹部に繰り出した。

 

 アルティマは難なく左の手刀で撃ち落とすと、右のジャブを繰り出した。

 涙流華は手の平で受けると、次は左足で回し蹴りを打った。アルティマは涙流華の蹴りを脛でカットする。


 涙流華は攻撃の手を休めることなく、右の上段回し蹴りでアルティマの顔面を狙った。

 しかしアルティマの左腕によって防がれると、涙流華は軸足であった左足を(すく)うように蹴られ左に転倒した。

 

 転倒した涙流華は手をついてすぐさま立ち上がり、間合いを取る。


 涙流華は軽く左手でジャブを繰り出し、相手の反応を窺った。アルティマもそれに対応しながら、両手を上下前後に軽く振っている。

 涙流華のジャブの間隔を把握したアルティマはそのタイミングをつき、顔面に前蹴りを打った。

 涙流華は右手で前蹴りを対処するが、その隙に乗じてアルティマは腹部に左のボディストレートを打ち込んだ。


 打ち込まれる瞬間、涙流華は体を退いたためまともに喰らわずに済んだが、体勢を崩しながら後退した。さらに間合いを詰めて細かく顔面にジャブ、ストレートを繰り出してくるアルティマに涙流華はなんとか食らいついて防御している。


 そして左のストレートを防御した瞬間、涙流華の左のみぞおちに衝撃が走った。

 アルティマのボディフックに顔を歪める涙流華だが、なんとか持ち堪えている。


 しかし、さらに涙流華はぐらついた左足に強烈な蹴りを喰らい、再度転倒した。

 そしてアルティマは倒れる涙流華に覆い被さるようにして殴り掛かる。


 その時、アルティマの顔が間近に迫った。

 彼……今は彼女だが、アルティマは笑っていた。純粋な笑顔。まるでスポーツ選手が競技を楽しんでいるかのような屈託のない笑顔だった。

 

 対して涙流華は必死の表情だった。

 自身の顔面に向かって迫って来るアルティマの右拳。

 幸いマウントを取られていなかった涙流華は、咄嗟にアルティマの右脇に足を差し込むと()()の左頸部に巻き付けるようにして足を絡ませた。


「三角か!」

 アルティマは嬉しそうにそう叫ぶと、涙流華の両肩に両手を当て彼女の腰下に両膝を差し込んだ。

 そしてアルティマは左に傾くと、右手で涙流華の胸を押さえたまま、彼女の股下に左手を差し込む。


 アルティマはそのまま両手を組むと、涙流華の締め技を解除した。

 その瞬間涙流華は右足で地面を蹴りアルティマと間合いを取り、腹を蹴り飛ばす。


 そして彼女達は立ち上がり、再度一定の間合いを取った状態でにらみ合いとなる。


「寝技してくれるなんてラッキーだな。おかげでいい思いできたぜ」

 アルティマは揉みしだくように指を動かした。


「変態が……今はお前も女だろうが。自分のでも揉んでろ」


 アルティマは右腕の時計に目をやった。

「いや、まだ3分半もあるからな。自分のはその後にするさ」


水王(スオウ)、お前(こぶし)道の方はからきしか? 対応が甘いな」


拳術(けんじゅつ)は最近習い始めたところでな。まぁあいつのは蹴打術(キックボクシング)というらしいが」

 涙流華は煙草をふかす白い長髪の男を思い浮かべた。

 そしてその男が言っていた言葉も。


――涙流華、攻撃に繋がる防御をしろ。ただ防ぐだけじゃダメだ



 優勢だったアルティマは、その勢いのまま間合いを詰めていった。


 涙流華は右半身のまま空手の構えから別の構えに変えた。

 右手を胸の前に置き、左手を前に突き出し構えている。


「なんだ? 不慣れな拳道のスタイルの真似事か?」

 アルティマは素早く涙流華に近づくと、鋭いジャブを繰り出した。


 その瞬間涙流華は左腕の内側で相手の突きを右にいなすと、肘を軸に左手を時計回りに回転させ(から)めとると相手の突きを左に弾いた。


「なにっ!?」


 涙流華は相手の突きを弾いたと同時に右の正拳突きを打ち込んだ。


 涙流華の正拳突きはアルティマの顎にクリーンヒットする。

 アルティマはふらつきながらも構えを崩さず後退(あとずさ)った。


「油断したぜ……打撃や柔術だけだと思っていたが、そんなこともできるのか……! それ、政府軍の格闘術だろ?」

 アルティマは首をコキコキとならすような仕草をとっている。


「まぁ教わったのは政府軍関係者だが、合氣術でもこれに似た技術はある。アイツのおかげではない」

 

 その時、アルティマの腕時計が5分の経過を示す機械音を発した。

 

「5分経ったな」

 そう言ってアルティマは構えを解いた。


 アルティマは疲れたと言わんばかりに座り込んだ。

「流石は水王家。楽しかった。ほら、行きな」


「何なのだ一体……」

 涙流華は一応背後を警戒しながらアルティマから離れていく。

 

「またやろうぜ!! 水王ルルカ!」

 アルティマは座り込んだまま満足そうに手を大きく振っている。


「あいつも師団員か…? 調子が狂うが、とにかくバリスのところに……!」



To be continued.....



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