その涙は血のように
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【登場人物】
▼Masters
[ガウディオ・ジア]【瞬炎】
元四帝でMastersの一人。電撃の遺伝子能力者。
牢星調査にMastersとして参加する。
▼牢星
[マテオ・ウォード]
牢星、1級第一区画に収容されている大量殺人犯。
殺人、強姦、臓器売買など手広く悪事を働いていたが、ガウディオ達によって捕まり、死刑囚となる。
▼その他
[セシリア・ヴァージニア]
多星間警察の巡査として勤務していた若い女性。ガウディオ達と共にウォード兄弟の起こした連続強姦事件を捜査する。
優秀で、熱く清い心を持っていたが、マテオ・ウォード達に嬲られ、奴隷商に売り飛ばされ行方不明となる。
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【お知らせ】
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「AGIS、滞体循電」
雷の如き電撃が頭上からガウディオに降り注ぐ。
AGISの発動直後からガウディオの目から血煙が上がり始めた。
「AGISねぇ? その目から赤い煙出すのがお前の能力か?」
余程能力に自信があるのか、マテオは嘲笑している。
「俺達電撃の能力者は一定の電撃への耐性と、電撃による熱の耐性も持ってるんだけどよ、俺の場合AGISを使うと涙道に超急性の腫瘍ができ、熱で潰れ、血涙となって目から溢れ出る」
「電撃の熱によって蒸発した血涙が血煙となって宙へと消えていく。人の体ってのは不思議だよな」
マテオは笑いをこらえられないのか、プスプスと吹き出している。
「どんな能力だろうと、電撃の能力が主のお前に、なす術はねぇよ」
「なら試させてくれよ」
ガウディオは広範囲の電撃をマテオに放つ。電撃はマテオを包み込むように迫っていく。
「だから意味ないんだって」
マテオは電撃の進みを遅らせると、電撃の範囲外へと巨体を揺らしながら歩き始める。
すると動きを遅くした電撃が掻き消されるように霧散するとその後ろからさらに新たな電撃が現れた。
「なにっ!?」
マテオは驚くとともに、慌てて迫り来る新たな電撃の速度を遅くした。
しかし、それによって元々迫っていた電撃の残りがマテオへと降り注ぐ。
「くそっ…! くそがっ!!」
少量の電撃を浴びたマテオはもがくように腕を振り回しながら、遅くした電撃の範囲外へと駆けていく。
範囲外へと出ると、マテオは息を荒くしながら虚勢を張ってみせた。
「最初の電撃に隠して、その後ろからさらに電撃を放つとは考えたが残念だったな! 見ろ! お前の攻撃はクリーンヒットしなかった!!」
大口を叩いていた割に、ガウディオの攻撃で狼狽えてしまったマテオは恥ずかしさからか声高にガウディオの失態を嘲笑った。
「お前の力は一つの対象しか遅くできないんだな。お前がいくらでも遅くできるんなら、お前に電撃が当たるまで根比でもしようと思ったが、手間が省けた」
「なんだと…?」
「空間通電」
ガウディオの体から細い糸のような電撃がパチパチと発せられ始める。
「なんだ…?」
マテオは警戒心を極限まで高め、ガウディオの挙動を見つめている。
ガウディオの放った技と、彼の見せる余裕。どのような攻撃を仕掛けてくるかわからない。
そう感じたマテオはガウディオの攻撃に備えて遺伝子能力を同調させる。
「AGIS、遅緩領域」
AGISを宣言したマテオだが、その身に変化はなかった。
マテオの能力は一つの対象にのみ作用するが、AGISの宣言名を聞いたガウディオはあることを試すため、一度に数発の電撃を放った。
ガウディオの予想したとおり、彼の放った数発の電撃はマテオ前で動きをとめた。
「なるほど。お前のAGIS……“リージョン”ってのはやっぱり範囲のことか」
ガウディオの言葉にマテオは舌打ちしている。
「これだから共通語はよぉ。自分のルーツで損した気分だぜ」
遺伝子能力の宣言名は自身のルーツと深く関わっているため、そのルーツとなる言語が宣言名として現れることがほとんどだった。
共通語の場合、相手の言った宣言名から大体の能力を予想することができる。共通語を使用する民族にルーツを持つ者は大きなハンディキャップを負っていた。
また能力同調や解放の宣言をする場合、自身の中で強く意識を集中させなければならない。
そのためには先ず自身の意思で言葉として発し、聴覚からその宣言名を認識することで発動の原動力とすることができる。
GAIAまで獲得している者はAGISくらいであれば宣言名なくとも同調することはできるが、やはり名を宣言する方が精度、威力ともに高かった。
そういったこともあり、多くの者が宣言名を明確に唱えていたのだった。
「けど俺の能力が分かったところで、突破できるもんじゃねぇのよ。お前の攻撃は俺に達する前に全てが極限まで遅くなる」
マテオは独り笑っている。
マテオは鉄唱を唱えると、再度鉄の杭を出現させ、ガウディオへと勢いよく放った。
ガウディオは大きく放電して鉄の杭を吹き飛ばす。
「おうおう、防御するのにもだいぶ強い放電が必要みたいだなぁ。そんなんでモツのかぁ?」
マテオは勝ち誇った顔で鉄の杭を何十本も生成すると、一斉に射出した。
ガウディオは避けながらもマテオに電撃を撃ちこむが、彼の前で電撃が遅くなり当たらない。遅くなった電撃は空中に霧散していく。
「ははは! お前の攻撃は封じた!! AGISというからどんなものかと思っていたが、大したことはないな!!」
マテオは大声でそう言うと両手を強く握った。
「轟唱・鉄槌連腕!」
マテオは複合煉術である轟唱を唱えると、ガウディオの頭上に20メートル大の鉄の拳が現れる。
「ぶっ潰れろ!」
鉄の拳に叩き潰される寸前、ガウディオは自身を電撃に変え、間一髪で攻撃を避けた。
「まだまだ!」
ガウディオが避けた先の頭上にも鉄の拳が生成され、再度振り下ろされる。
ガウディオは電撃となって回避しながらも隙を縫って少量の電撃を放つが、やはりマテオの前で動きを鈍化されてしまう。
「どうしたどうした!? 潰れるまでお前の好きな根比べでもするかぁ?」」
マテオがそう言って挑発したのには根拠があった。
それはガウディオの動きが段々と鈍くなっており、この調子であればあと10回も繰り返せば攻撃が当たると考えていたからだ。
「ほらほらぁ!! 潰れちまうぞぉ!!」
ガウディオは自身から発せられる電撃を強くしながらも振り下ろされる鉄の拳を次々に避けていく。
「電撃を強めて速度を上げたのか?」
4発目、5発目の鉄槌を避けたガウディオを観察するが、速度に特段変わりはない。
落ちてきた速度を補うためより多くの電撃を出しているのだ、とマテオは結論付けた。
「死ねっ! 死ねっ! 潰れろ!!」
6発、7発。ガウディオはまだ避け続けている。
ガウディオが8発目を避けた瞬間、マテオに向けて巨大な電撃を放つ。
「だから意味ないって言ってんだろ!!」
今までと同様にガウディオの電撃はマテオの手前で鈍化し、マテオは余裕を持って回避する。
巨大な電撃だったこともあり、静電気のようなものがマテオの指先を若干痺れさせた。
「お前の決死の攻撃も手先がピリピリする程度だぁ!!」
その間にも9発、10発。鉄槌は今にもガウディオを捕らえそうになっていた。
「もう終わりが近づいてきたなぁ!!?」
ガウディオが11発目を回避する。
「それはどうかな」
再度大きな電撃をマテオに放つと、またもやマテオの手前で電撃が止まる。
そして同じようにマテオが余裕綽々と回避し、止まっていた電撃が霧散したときだった。
「っ!?」
マテオはその場に崩れ落ちた。
それと同時にマテオの放った鉄槌が停止する。
「今のデカいのでやっと効いたか」
ガウディオがマテオへと近づいていく。
「どうだ? 痺れて体動かせないどころか声も出ないだろ?」
「心配すんな。その苦しみももうじき終わる。お前の内臓も麻痺してその内呼吸困難に陥る」
ある程度近づいたところでガウディオは電撃を放った。すると電撃はマテオの直前で止まった。
「まだAGISの効果が残ってんのか。遺伝子が自身を守ろうとしてるってか?」
「最後に教えといてやるよ。俺のAGISは大気に電撃を放ち、俺の電撃を喰らった奴に大気中の電撃をそいつに帯電させていく力だ」
「お前はウキウキしながら鉄を落としてたが、その間にも大気には電気が満ちていってた。しかもこの電撃の囲いの中だ。この場に入った時点でお前の負けは確定したたんだよ」
ガウディオは蔑むような目でマテオを見ている。
「動きを遅くするってのは、お前だけの専売特許じゃねぇのよ」
「まだお前のAGISの力も残っているようだし……」
そう言うと、ガウディオは電撃の囲いを収縮させていく。電撃の囲いはガウディオをすり抜けマテオの近くに迫ると、彼の能力でその収縮が鈍化する。
ガウディオは最後にマテオを包み込むように巨大な電撃を放った。
「お前に電撃が届くのが先か。体が麻痺して死ぬのが先か」
「お前が殺してきた人たちと同じ気持ちを味わいながら地獄に堕ちろ」
ガウディオはマテオに背を向けると、電撃となってルーノの方へと向かっていく。
そしてガウディオがルーノの元に着き、加勢している最中、マテオは心停止するとともに電撃に焼かれ灰となった。
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~一時間前・副所長室横応接室~
「あの~、すみません」
「なんでしょう、ポンポンさん」
「お手洗いに行きたいのですが~……」
「応接室を出て左手にすぐのところにあります」
「分かりました」
「部屋の外に看守が監視いていますが、くれぐれも変な行動は起こさないようにお願いします」
「も、もちろんですっ!!」
「ウンコしたらすぐに戻ります!!」
To be continued to next EXTRA STORY.....?




