悪意に満ちた男
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【登場人物】
▼Masters
[ガウディオ・ジア]【瞬炎】
元四帝でMastersの一人。電撃の遺伝子能力者。
牢星調査にMastersとして参加する。
▼牢星
[マテオ・ウォード]
牢星、1級第一区画に収容されている大量殺人犯。
殺人、強姦、臓器売買など手広く悪事を働いていたが、ガウディオ達によって捕まり、死刑囚となる。
▼その他
[セシリア・ヴァージニア]
多星間警察の巡査として勤務していた若い女性。ガウディオ達と共にウォード兄弟の起こした連続強姦事件を捜査する。
優秀で、熱く清い心を持っていたが、マテオ・ウォード達に嬲られ、奴隷商に売り飛ばされ行方不明となる。
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【お知らせ】
あぁ、ほんまクズ。
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~第一区画~
「タイマンだ、カス野郎」
軍服を脱ぎ捨てたガウディオは目の前に立つ汚らしい肥満の男、マテオ・ウォードを睨みつける。
対するマテオも相変わらず気色悪い笑みを浮かべて言い返した。
「望むところだ、ザコ野郎」
ガウディオはかつて捜査班としてマテオを逮捕したことがあったが、その際マテオは能力を使用しなかった。タイミング良くマテオが寝ていたために戦闘を経ることなく逮捕することができたのだ。
その後の捜査でマテオの能力は“時間”に関するものだと判明した。
しかし詳細は判然としておらず、戦闘スタイルも分かっていなかった。
「(相手の能力は時間系…! 俺を遅くするのか、あいつが速くなるのか、止めるのか……)」
ガウディオは考えを巡らせる。
「とにかく…使うヒマ与えさせねぇよ!」
ガウディオは帯電させた電撃を球状に固めて一気に放出した。
目にも止まらぬ速さでマテオに迫る電撃だったが、彼の目の前で電撃は動きを止めた。
「止まった!? 時間停止系か!」
しかしガウディオが目を凝らして観察すると、電撃はゆっくりとマテオに向かって前進していた。
「遅くするわけか…!」
マテオは余裕を持って横に避けると、ガウディオに向かって勝ち誇ったような表情を作る。
「これで分かっただろ? お前は速さに定評があるみたいだが、俺との相性は最悪だな」
マテオは両手を掲げると煉術の鉄唱を発動させ、鉄の杭を射出した。
ガウディオは体を電撃化させ、素早く鉄の杭を避けた。
ガウディオの出方を窺っているのか、マテオは攻撃を続けてこない。その状況にガウディオはマテオの能力についてある推論を導き出した。
それは時間を遅くするにはおそらく発動範囲内である必要があり、先ほどの攻撃の際には範囲外にいたから鉄の杭を避けることができた、ということだ。
「俺と兄貴はよぉ、あの時満足して寝てなけりゃ、お前らに捕まることもなかった。あん時は、あんな気の強くて若い女を食えるなんて久々だったからよぉ、興奮して狂ったようにヤッてたからなぁ」
「しかも逮捕すると同時に能力抑制剤を打ちやがった奴がいたせいで逃げることもできなくなっちまった」
「そいつに感謝しとけよ? それがなけりゃあの時お前のケツも掘られてたかもしれねぇんだからなぁ! えぇ!?」
「抑制剤打ったのは俺だ」
「おぉ…そうかい、お前かい。打ちやがったのは」
ガウディオの返答にマテオは憎しみを込めた視線を送る。
「よし決めた。俺はそういう趣味はねぇが、お前にぶち込んでやるよ。お前の体に叩き込んでやる。どっちが上かってのを」
マテオはそう宣言すると、ニヤリと口角を上げた。
「心配すんな、後で極上の女で口直しするさ」
「俺も決めた。お前をここで終わらせる」
ガウディオは静かにそう言った。
ガウディオの言葉に対してマテオはわざとらしく責め立てる。
「公的機関のあなた様が一般市民のボクにそんなこと言っていいんですかぁ? えぇ!?」
「人間社会での義務や規則も守れないお前に“一般”市民を名乗る資格はない」
「お前は生物でもなんでもない。マテオ・ウォード。お前はただのクズだ」
「酷い物言いだな。人の尊厳を踏み躙る最低の行為だ」
マテオは話にならないとでも言わんばかりに両手をあげて呆れている。
「お前は一体何人の人を殺した? 何人の女性を嬲った? 何人の人を奴隷に……臓器売買に売り渡した?」
「おいおい、殺したんじゃない。死んでしまったんだ」
「それに性行為は合意のもとだった。なんなら天国に行って彼女達に聞いてもらってもいい」
「奴隷は今や大きな労働力だ。必要なんだよ」
「それに臓器売買で俺は人の命を大勢救ってる」
「俺のやったことはそこまで悪いことかぁ? えぇ!?」
矢継ぎ早にそう主張したマテオ。
反省の色は一切ない。
マテオのその様子に、ガウディオはある覚悟を決める。
それはMastersという公的機関にはあるまじき覚悟だった。
ウォード兄弟を逮捕した際、ガウディオは葛藤していた。
ウォード兄弟に犯され、徹底的に蹂躙されたセシリアの画像を見た時、この男達を八つ裂きにして拷問して無様に命乞いさせ、自分たちのやったことを死ぬほど後悔させてやろうと思った。
そして逮捕時、そのチャンスが巡ってきた。
能力抑制剤を打ったのはガウディオだったが、それは逮捕のためではなかった。
とりあえず無力化して、拷問でもしてやろうと考えていたのだ。
ガウディオの体からはドス黒い波長が発せられていた。
このまま、この屑たちを葬ってやろう。
そう思い、ウォード兄弟に手をかけようとしたのだが…
『ガウディオ、待って』
当時同じ捜査班に政府軍から参加していた【黒風】の二つ名を持つ女性。
ガウディオの不穏な雰囲気を察したのか、彼女はガウディオの手を優しく包み込んだ。
その時、怒りと憎しみに支配されたガウディオは我に帰り、何とか心を自制してウォード兄弟を法の裁きへと進ませることができた。
しかし、あの時の負の感情は現在に至るまでガウディオの心に根強く残った。
罪のない者が死に、更生の余地もない悪意に満ちた者が生き残る。悪人は捕まることなど何とも感じていない。
痛めつけられることもなければ、怒鳴られることもない。生温いやり方で彼らは恐怖を感じない。
そして弁護人をつけて自身の無実を声高に訴える。
奴らは悪いことをしたなど全く思っていないのだ。
彼らの頭にあるのは早く自由になって自分のやりたいことをする、それのみだ。
この世には、人に害しか与えない屑がいる。
どうやっても更生せず、するつもりすらない屑が。
そんな者に法の裁きを与えたところで、自由になればまた罪を犯す。
そして罪のない市民が犠牲になる。
これはルーレットだ。
運の悪い市民は彼らの毒牙にかかる。
なら、いっそのこと消してしまったほうが正しいのではないか。
ガウディオには深く黒い感情が今も尚渦巻いていた。
「今分かった。やはりお前は殺すべきだ」
ガウディオの目には覚悟が宿っている。
「やれるもんならやってみろ。四帝だろうと動けなきゃただの木偶の坊だろ?」
「お前らクズ如きに元四帝が舐められたもんだ」
ガウディオは前へと一歩足を踏み出す。
「さぁ、そのくだらん人生を終わらせようか。クズ男」
ガウディオは徹底的にマテオを葬るため、能力の同調を宣言する。
「AGIS、滞体循電」
雷の如き電撃が天からガウディオに降り注ぐ。
AGISの発動直後からガウディオの目から血煙が上がった。
To be continued.....
【EXTRA STORY】
〜ウォード兄弟事件捜査〜
「遅くまで精が出るなセシリア」
「ガウディオさん…! これ…いただいてもいいんですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます! ちょうど眠くなってきたところで……」
「お前は働きすぎだ。少しくらい体を休めねぇと倒れるぞ」
「一日でも早く犯人を捕まえたいんです。じゃなきゃ女性が一人、また一人と辱めを受けて殺されたり、奴隷商に売られてしまいます……なんの罪もない人達が……」
「あ! 今度の潜入は任せてください! ガウディオさん達が踏み込んでくる前に私が手錠をかけてやりますよ!」
「そうか、ならヴァージニア巡査の活躍に期待だな」
「はいっ! 任せてください!!」
To be continued to next EXTRA STORY.....?




