パーマーとジア
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【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
[水王 涙流華]
元名家・水王家の侍で、水の遺伝子能力者。
プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。
[ラルト・ローズ]
白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。
口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。
政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。
▼政府直轄治安維持機関(十闘士)
[メルツィア・ジア]【雷核】
プラズマの師匠であるアリス・ジアの妹で、十闘士の一員。
プラズマの3歳下だが、とても生意気。電撃の遺伝子能力者。
[チェンドラ・イア]【懺悔】
十闘士の一員。メルツィア・ジアの指導役。
殷生師団の一人が潜伏している情報を得て娯星を訪れた。
▼殷生師団
[アナイア・パイカ]【蠱毒】
師団三強の一人。
医薬品強奪事件の首謀者で、常に密室内で複数人に殺し合いをさせ、それを観察している異常者。
彼の放った特殊な毒を持った昆虫や小動物によって、多くの惑星で死傷者が出ている。
[アルコ・トーレ]
医星でプラズマ達と対峙した男。医星のトップに立つため、万能遺伝子の恩恵を受けようとパイカに付き従っている。
氷の遺伝子能力者。
[ウィンド]
師団三強の一人。
プラズマが遺伝子能力養成学校に在籍していた時、襲撃してきた緑色の髪をした青年。
風の遺伝子能力を持つ。My Geneの探索にはプラズマが必要だとして襲撃するも、パラム校長によって異空間に飛ばされる。
[ヴァンガルド・キル]【破壊】
師団三強の一人。
ローズ家の者を10人以上殺害したとして、投獄されていた死刑囚。
脱獄に成功した後、政府軍上級大将、大将と共に政府軍本部を襲撃し、プラズマ達と対峙した。
▼娯星芸能界
[レモン・ポンポン]
褐色高身長、彫の深い濃い顔にアフロがトレンドマークの伝説のエンターテイナー。
[ロブルス・プレン]
真っ先に殺人を犯した若い画家。トーレに打ち込まれた遺伝子能力強化剤で廃人となるが、大幅に能力が強化される。
花の遺伝子能力者。
[ノーマン・ヒューマッド]
中央放送局の責任者。元政府軍中尉。白髪の坊主に白いスーツを着た巨漢。殷生師団のパイカと組んでおり、My Geneを求めてプラズマを狙っている。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力、封印系煉術を操る。
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【お知らせ】
話数の「第○話」なくそうと思います。
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『現在、何者かによって占拠されている中央放送局』
『本来であれば、今はオールスター祭の真っ最中のはずでした』
『しかし現在生放送されているのは、残酷な現実』
『判明しているだけでも既に17人は死亡している今回のテロ。何者かが演者たちに殺戮を強いている可能性が高いと、星警察は発表しています』
『すでに政府直轄治安維持隊、通称十闘士と、四帝直轄遊撃捜査隊が解決に当たっているとの情報が入っています』
~中央放送局・66階ステージ東側・関係者用通路出入口~
「元政府軍中尉?」
プラズマは目の前に立つ恰幅のよい短髪の男、ノーマン・ヒューマッドに尋ねた。
彼の髪は白く、白いスーツの上下にシャツは臙脂色と目を引く格好をしている。
「その通り。私は数年前まで政府軍に身を置いていました」
低く威圧的な声でそう答えるヒューマッドの目は鋭い眼光を放ち、プラズマを貫いた。
「なんで政府軍にいた奴が、殷生師団の味方してんだよ!」
「味方……味方……そうですねぇ。客観的に見ればそうですね」
ヒューマッドは“味方”という言葉を繰り返しながら宙に視線を泳がせる。そして少しずつ納得するように小さく頷いている。
「まぁ、主観的には利害が一致しているというだけですよ」
「利害が一致してるだと?」
「えぇ。私はね、My Geneが欲しいのです」
「クリスマスプレゼントでも頼むのか?」
「まぁ、そんなところです」
「楽しいお喋りの時間は……惜しいですがこれまでです」
ヒューマッドは笑顔を浮かべるが、その目の奥は笑っていなかった。
「私と来てもらう。サンダー・パーマー=ウラズマリー」
ヒューマッドは右手を掲げるとその手に透明の刀剣を生成した。そして左手を掲げ、目の前に透明の円錐を複数個作りだした。
「抵抗すれば怪我が増えますよ」
自信に満ちた表情でそう言うと、半透明の円錐をプラズマに向けて放つ。
プラズマはすんでのところでヒューマッドの攻撃を躱すと、すかさず電撃を放った。
「電撃か…」
ヒューマッドは悲しそうに呟くと、透明の刀剣で電撃を払い除ける。
「感電しない!?」
刀剣を通して感電していないことに驚くプラズマ。ヒューマッドは呆れたようにタメ息をついた。
「君は何が電気を通して、何が通さないかをよく知らないようですね。自分の能力にとって重要な点であるのに、それを知らないとは何と怠惰なことでしょう」
「というより、こんなことは義務教育の範囲内でしょう」
―ゴムやガラスは電気を通さないから俺が電気を発したら……
突如頭に流れた記憶の中の声。
「ゴム…ガラス……」
その言葉にプラズマは目を見開いた。彼の眼差しの先にはヒューマッドが持っていた透明の刀剣があった。
「ガラスか…!」
「ガラスは電気を通さない!!」
「突然何を言い出すのかと思ったら、そんな当たり前なことを!」
ヒューマッドは鼻で嗤うと、プラズマに向けてガラスの槍を連続して放った。
プラズマは自身を電撃と変え、素早く槍を避けていく。
「聞きましたよ。君はジア家の長女に師事を仰いでいると」
「ジア家の者に教わってもその程度。パーマー家の底が知れますね」
「あなたを見ていると、より思い出します。忌々しいあの男を」
ヒューマッドの顔は見る見る内に憎しみで歪んでいく。
「アマンシオ・パーマー。お前の父親だ」
丁寧だったヒューマッドの口調は突然荒々しくなる。
「上級大尉だったお前の父親、アマンシオ・パーマーは、“白い戦争”で私の上司を裏切り、殺した男だ」
ヒューマッドの顔は段々と険しくなり、憎しみを抱いた表情を形作った。
彼の言う“白い戦争”とは、約10年前に勃発した戦争、政府軍と反政府軍を主勢力とした広く宇宙を巻き込んだ大戦だった。
ヒューマッドは落ち着きを取り戻すように一つ咳払いをすると、襟を正した。
「レイディ・ジア。聞いたことがあるでしょう? あの元名家のジア家の者ですよ」
「ジアって……」
プラズマは“ジア”という名前を聞き、師匠のアリスや、その兄妹のガウディオ、メルツィアを思い浮かべる。
レイディ・ジアはアリス達の父親の名だ。かつて政府軍にいたことはアリスから聞いていた。
「パーマーはジアさんを殺した……決して許すことのできない男」
彼は怒りで拳を握りしめた。
「ですが戦争の後、私が手を下す前に野垂れ死んだようで残念です」
「そしてその息子……」
ヒューマッドはプラズマを睨みつける。
「アマンシオ・パーマーは裏切り者でしたが、実力は…まぁ認めざるを得ない男でした。その息子というから、どんなものかと思えば……てんでダメですね」
物心ついたことにはすでに死去していた父親のことを執拗に言われ、プラズマは激怒した。
「うるせぇよ! 親父のことは覚えてねぇんだよ!」
プラズマの言葉を聞いていないかのように、ヒューマッドは尚も自身の話を続けている。
「なぜパーマーの息子は今もこうしていて、ジアさんの息子は……!」
「私は……ジアさんの息子を…探さねばならない…!! そのためには…My Geneに行き着くためのお前が必要なのだ!!」
ヒューマッドは一頻り言い終えると、自身を包むようにクリスタルを思わせる六角柱の硝子を生成した。
地面から生えるように生成されたそのクリスタルは、先端が錐面で鋭利になっている。
「AGIS、硝子の世界!」
ヒューマッドを包む硝子は地面から浮き上がると、下方も先端が鋭利になっており、上下が尖った六角柱…透明のクリスタルとなって浮遊した。
クリスタルから1メートル大の硝子が湧き出ると、水のように波打ちながら分裂する。
その硝子の水はさらに複数個に分裂すると、50センチメートルほどの杭となって、プラズマに襲いかかった。
速度のない攻撃に、プラズマは必要最低限のステップで左右に避けると、続いて手中で放電準備を始める。
これまでの各星での戦闘で、着実に経験と実戦感を掴んできたプラズマ。
一度攻撃を見た相手であれば、ある程度は最低限の動きで攻撃を躱すことができるようになっていた。
しかし、その戦闘での成長が仇となる。
プラズマが足を踏み出そうとした途端、足元が何かに捕られ前のめりに倒れ込んでしまう。
さらに倒れる先の地面には、無数の硝子でできた小さな棘が生成されていた。
「まじかよ…!!」
プラズマは咄嗟に右に体を捻り、左の二の腕や肩でその棘の上に倒れ込む。
幸いにも棘はかなり短く、肉に深くは刺さらなかった。
プラズマは痛みに苦しみながら自身の足元を見ると、地面に刺さった硝子の杭から、地面を伝って硝子が伸びていた。
硝子に足を絡め取られていたのだ。
「大丈夫。殺しはしません。君は捕らえなければなりませんから」
宙を漂う硝子の結晶の中、ヒューマッドは不敵な笑みを浮かべた。
「土唱!」
プラズマは煉術によって地面を隆起させ、地を覆う硝子を割って左に跳ぶと間合いを取る。
しかし、左に大きく跳んだプラズマの左半身に衝撃と鈍痛が疾る。それと同時に彼は何かにぶつかったかのように跳ね返されるとまたも地面に倒れた。
「ってぇ……」
プラズマは眼前に落ちていた小石を投げて確認すると、衝撃を受けた場所で小石は“こつん”と音を立てて跳ね返り、地面に転がった。
「こんの野郎…ドッキリ大成功じゃねぇんだぞ…?」
プラズマは左頬をさすりながら、分厚い透明の壁…ヒューマッドの作り出した硝子を睨みつけた。
「さぁ、終わりにしましょうか」
ヒューマッドは両手を胸の前に掲げると、包むように手を合わせた。
すると倒れるプラズマの周囲を透明な箱が囲んだ。壁の厚さは1メートルはあり、簡単に破ることはできない。
「さぁ、捕らえましたよ。パーマー=ウラズマリー」
〜中央放送局・総合監視室〜
夥しい数の監視用モニターの前。広い空間で十闘士のチェンドラ・イアと、殷生師団のアナイア・パイカが対峙していた。
「ほら、言ったでしょう? 貴方の能力は手にさえ気をつけていれば取るに足らないと」
パイカは嘲るようにそう言った。その言葉にイアも言い返す言葉がないように言い淀んでいる。
「誰から能力のことを聞いた?」
「さぁ? 誰でしょう?」
「現役の十闘士か、それとも元十闘士か…」
イアは自身の能力を知っている者を思案するが、いずれも敵に情報を送るような者達ではなかった。
「ウラズマリーがスタジオに入ったことで蠱毒は完成しなくなりました。ウラズマリーに死なれても困りますし、生き残っても使い捨てできませんからね」
パイカはズボンのポケットを弄ると、何かを握って取り出した。
「一応持ってきておいて正解でした」
パイカは上を向いて舌を出すと、赤色の丸薬のようなものを口の中へ放り込んだ。
「何をした?」
イアはそう尋ねて考える時間を稼ぐ。一見して遺伝子能力強化薬ではなさそうだった。そうなれば彼固有の能力、毒の能力に関するものの可能性が高い。
「あぁ、見るのは初めてですね。これは私の大きな力となる命の結晶ですよ」
パイカは顔を歪めながら続けた。
「不味いのが欠点ですが。特殊ではありますが、これが私の能力の同調条件なので仕方ないですね」
「毒の能力か」
イアは眉を顰めてパイカを睨む。
「毒? それは解釈違いですね。私の能力は毒ではない。私の…いや、私達“槍の騎士の一族”は“人を害する能力”を持っているのです」
パイカは両手を挙げて顔を横に振った。
「つまり私達パイカの能力は毒ではなく呪いの類。故に【蠱毒】と呼ばれるわけです」
「私が今喰らったのは、確か…171人の屍の上に立つ1つの命の塊でしたか…」
パイカの瞳孔は赤く不気味に光っている。
「172人分ですからね。そこそこに良い呪が掛けられると思いますよ」
「さて……AGIS、人礫蠱」
To be continued.....




