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【完結】My² Gene〜万能遺伝子と宵闇の光〜  作者: droegg
第5章 百獣の王 [森星]
50/91

決着

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


【登場人物】


 ▼何でも屋


 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。

 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。



 ▼森星(しんせい)

 [ドルニク・バリスタ]

 森星の王。黄金のたてがみを生やしている上裸の大男。


 [ザルダム・バリスタ]

 ドルニク・バリスタの父で、宇宙船の代わりとなる宇宙亀を販売している。

 元政府直轄治安維持機関の一員。


 [ジョン・ロレンツ]

 森星王(しんせいおう)選挙で現星王のバリスタと争った政治家。

 今は反星王派に属している。



 ▼Masters(マスターズ)

 [Master MOONLIGHT]

 本名はロイ・カレセフューレ。

 元大元帥で、現Mastersの一人。

 実業家としても成功を収めており人望もある。

 森星での人攫い調査のため派遣された。


 [Master THUNDER FLAME]

 本名はガウディオ・ジア。

 元四帝で、現Mastersの一人。

 ジア家の長男で、アリス、メルツィア達の兄。

 森星での人攫い調査のため派遣された。


 ▼その他


 [セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

【お知らせ】

 めっちゃ長くてごめーん、誠にすいまめーん

 話区切るのミスりましたわ。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


「バリス……あいつは」

「あぁ。Masters…プラズマの…!」


 落雷のように現れた筋骨隆々の男。プラズマの師匠(アリス・ジア)の兄であるガウディオ・ジア。彼は隆起した岩壁の上から、ロレンツを見下ろしている。電撃に打たれたロレンツはよろけながらも立ち上がった。

「えらく変わったな。邪悪な雰囲気放ちやがって」


 ガウディオはラルトに目を向けた。

「ラルト・ローズ。戦況を教えてくれ」

 ガウディオは元政府軍中佐であるラルトの説明であれば的確に戦況を把握することができると思ったのだ。そしてラルトも彼の期待に応えるように戦況を報告する。

「今のロレンツは殷獣(いんじゅう)化してAGRY(アグリー)状態です。実体のある分身を無数に作れます」


 簡潔かつ要点を押さえた戦況報告にガウディオは納得したように頷いた。


殷獣(いんじゅう)AGRY(アグリー)ね……また薬か」

 ガウディオがタメ息をつくと、軽く舌打ちをした。

「ここでもパイカが噛んでるのか」


 ロレンツは壁の上に立つ敵――ガウディオを見据えると殷獣化特有の赤黒い(もや)を放ち始めた。

「おっ? やるつもりか? 分身と寄ってたかってボコボコにでもするか?」

 ガウディオは余裕な笑みを浮かべている。ガウディオの煽りにロレンツの靄はどんどんと色濃くなっていく。無数の分身を作り出し強力な攻撃を放つため、力を溜めているのだろう。



「悪いな、面白味がなくて」



 ガウディオのその言葉の前だったのか、後だったのか。一瞬の間にロレンツに電撃が浴びせられる。彼が脱力するように倒れると、その背後にガウディオが立っていた。


「いつの間に!?」

 バリスとラルトは飛び上がるように驚いていた。ガウディオが元いた場所と、ロレンツの場所を何度も交互に見ている。

 10メートルは裕にあるにも関わらず、一瞬でロレンツに攻撃を繰り出しただけでなく背後まで取っていたのだから、驚かずにはいられなかった。


「相手がどんなに強かろうと、相手が動く前に仕留めりゃそれで終わりだろ」

 気づくとガウディオはバリス達の横に立っていた。


 同じ電撃系統の遺伝子能力でも、プラズマとは威力も速さも段違いだった。

「まぁ、お前ら観客(オーディエンス)からすりゃ、退屈だろうけどな」

 ガウディオは鼻で笑うと、一縷(いちる)の電撃となって、一瞬でロレンツの元へと戻った。


 ガウディオは気絶したロレンツの後ろ襟を掴み上げると、ロレンツの懐をまさぐり始めた。

「もう薬は持ってねぇか」


 彼はそう言ってロレンツの襟を荒々しく投げるように離す。


「そいつが使った薬って…」

 バリスの言葉を待たずにガウディオは答えた。


「おそらく遺伝子能力強化薬と殷獣(いんじゅう)薬だろう」


「遺伝子能力強化薬…医星での件と同じか?」

 バリスの表情は曇っている。


「おぉ、よく知ってんな。医星の女医が無理やり打ち込まれたのと同じだろう」

 バリスがプラズマと宇宙に発つ前、彼はヴィスタ診療所という小さな医療機関で医者をしていた。

 

 その診療所には彼の他に、女医が一人勤めていた。

 彼女は医星の二大病院が経済的弱者の命を蔑ろにしていたことに憤慨し、違法薬物…遺伝子能力強化薬を使用して反旗を翻そうとしていた。


 ガウディオの言う遺伝子能力強化薬を使用した女医こそ、その診療所に勤めるバリスの幼馴染、ヴィスタ・ドーンズだった。


 彼女はプラズマとバリスによって止められたのだが、今も後遺症で植物状態を余儀なくされていた。


 ヴィスタの件は、当時まだ政府軍にいたラルトによって、“指名手配犯に無理やり強化薬を打たれた”と報告された。それによって彼女は罪に問われることはなかった。それが公表された事件の顛末だった。


 しかし誰が裏で糸を引き、誰が主導で動いていたのかは未だ判然としていなかった。


 だからこそバリスはヴィスタが誰から違法薬物を手に入れたのか、その大元を突き止めたかったのだ。


「その違法薬物はどこが供給源なんだ…?」

 バリスは絞り出したような声で尋ねた。怒りや悲しみ、どうすることもできなかった無力感。色々な感情が彼を襲っているのだろう。


殷生(いんせい)師団は知ってるな?」

 その言葉にバリスとラルトは頷いた。


 殷獣の力を使って大幅な身体能力、遺伝子能力を強化させている違法組織。

 プラズマ達一行もその組織はすでに聞き及んでおり、実際に交戦もしていた。


 プラズマが宇宙に飛び立つ前に対峙した風の能力者、ウィンド。

 央星で対峙した一級監獄脱獄犯であり、ラルトの一族を10人以上も殺したヴァンガルド・キル。

 そして殷獣(いんじゅう)の力を人間に応用できるよう研究した研究者、アクスグフス。


 そしてその3人はMy Gene(万能遺伝子)を求めてプラズマを捕らえようとしている。


 それが今殷生師団について知っていることだった。


「薬自体はアクスグフス・グシェが作り、アナイア・パイカが薬を撒いてる」


「アナイア・パイカ?」

 バリスが聞いたことのない名を尋ねるように復唱した。


「調査中だからあまり詳しいことは言えんが、おそらく医星近辺に潜んでる」


「パイカは毒系統の能力だと言われてるんだが、医星で毒性の昆虫やら小動物が発生したことがあったろ?」

 バリスが医星で貧民街区の者から聞いた話では、医星二大病院の一つ、神立(しんりつ)病院が毒性の生物を放って血清を売って金を手に入れていた。

 それは金を手に入れる目的だけでなく、貧民街区の()()という目的もあった邪悪な計画だった。


 Mastersや政府軍の調査班はその毒の根源こそがそのアナイア・パイカであると睨んでいたのだ。

 

「それと医星での医薬品強盗、違法薬物で指名手配されてるアルコ・トーレってやつがパイカと繋がってるって情報が四帝からあってな。ちょうどお前達が森星に入った時くらいのことだ」


「てっきり星王がパイカと繋がってんのかと思ったが、まさかロレンツのほうだったとはなぁ」

 ガウディオは腕組みをして苦笑いしている。


「お前らは気づいてたのか? こいつ…ロレンツがおかしいって」

 ガウディオの問いにバリスが答えた。

「うちには鼻の利くバカどもがいるんでね」


「いやびっくりしたぜ。星王のところに行こうと思ってたらロレンツとお前らが戦ってる上に、お前らが押されてる感じだったからな」



「ジア君!」

 少し離れたところからガウディオを呼ぶ低い声が響く。


 ガウディオが振り返ると、声の主は反星王拠点を見に行ったカレセフューレだった。


「反星王拠点が燃やされていた。すでに火が建物全体にいきわたって……やはり星王は囮だったようだ」

 カレセフューレは“止められなかったのは自分のせいだ”というように(うつむ)いた。


「カレセフューレさん、もしかするとそれは星王側の仕業じゃないかもしれません。それに人攫いも」

 ガウディオの言葉にカレセフューレは顔を上げ、目を細めた。

「一体どういうことですか?」


 ガウディオは気絶しているロレンツを指差し、ことの顛末を説明した。


 カレセフューレは低い声で唸ると何かを思案するかのように顎に手を当てた。

「つまりロレンツさんは殷生師団と繋がっていた、と」


「はい。ということはロレンツの言っていたこと全てが怪しくなってきます。人攫いも星王の仕業ではない可能性も高くなってきますし」

 ガウディオがそこまで言ったところで、カレセフューレが悟ったようにその続きを言い当てた。


「反星王拠点が燃やされたのも、反星王側にとって不都合なものが出てくるのを防いだ、ということですね?」


 バリスは眉間に皺を寄せて頭を掻いた。

「証拠隠滅ってことかよ」


「星王が襲撃するという情報を得てから拠点が燃やされていることを考えても、ロレンツ側が燃やしたと考えるのが妥当かと」 


「私達Mastersはロレンツにいいように使われたというわけですか……」

 カレセフューレは唇を噛み締め、小さく頷いている。

 利用された悲しみや怒りを抑えているのだろう。


「ジア君は早く星王のところへ。捜査隊との戦闘を止めねばなりません」


「分かりました」

 カレセフューレの指示に、ガウディオは自身を電撃化して森の方へと疾っていった。


「さて……情報を聞き出すとしましょうか」

 カレセフューレは気絶するロレンツの方へゆっくりと歩みを進める。口調こそ穏やかだったが、目は一切(わら)っていなかった。


 カレセフューレはロレンツの髪の毛を掴み上げると、何度も顔面を(はた)いた。

 

 これまでバリス達の前では丁寧な口調に物腰柔らかい対応だっただけに、その非情な行動と冷たい雰囲気に面食らっていた。

 そしてその瞬間、顔に刻まれた傷跡、元大元帥ということも相まって、カレセフューレが歴戦の戦士であることを思い知らされ、バリスとラルトは全身に鳥肌が立っていた。


「ん……」

 目を覚ますロレンツ。“痛い”と掴み上げられた髪に手を伸ばすと、カレセフューレが投げるように突き放した。

 ロレンツは尻餅をつく形で地面に倒れる。


「一体誰が人攫(ひとさら)いを指示していたんですか?」

 間髪を入れずにカレセフューレは詰問を始める。


「そ……それは………」

 ロレンツの目は恐怖で支配されていた。


「言えませんか?」

 カレセフューレの問いになおも口ごもっているロレンツ。

 そんなロレンツにカレセフューレは不気味な笑みを向け、右手を差し伸べる。

「私はMastersです。これでもかなり強いですよ? あなたの後ろ盾が手を出して来ようものなら、私が殺してあげましょう。どうですか?」


「……」

 ロレンツは恐る恐るカレセフューレの右手を掴んだ。

 その瞬間、カレセフューレが握力を入れ、ロレンツの右手をへし折った。


 鈍い音と共に、ロレンツの野太い悲鳴が上がる。しかしカレセフューレは詰問を止める気配はない。

「で、(さら)った人達はどこへ?」


 ロレンツは左手で右手を押さえながら、力を振り絞って声を出した。


「そ、それも……言えません……」


 その回答にカレセフューレは威圧的な笑顔を浮かべる。

「なるほど口止めか。あなたは随分と(あるじ)に忠誠を誓っているのですね」


 “ふんふん”と納得したように頷いているカレセフューレ。始終穏やかな口調だが、彼がこの空間を圧倒的に支配していた。


「大丈夫。先ほども言いましたが、あなたの後ろについている者があなたを消しにきても私が追い返して差し上げますよ」


「相手は恐怖で二度とあなたのところには来ないでしょう。それこそ、並の拷問も生温く感じるほどの恐怖を与えることを約束しましょう」

 Masters最高齢のカレセフューレ。数々の修羅場を潜り抜けてきた彼にロレンツは心底恐怖していた。


「大丈夫です。必ず私があなたを守りますから」


 カレセフューレが笑みを向けるが、ロレンツは主人(あるじ)を裏切ることができないのか、突然声を上げた。


「あぁ……あぁぁぁぁ!!」

 そしてロレンツは勢いよく噛み締めると、程なくして痙攣を始める。バリスがすぐさま駆け寄るが、痙攣から10秒ほどで泡吹いたまま動かなくなった。


「自害……! 奥歯に仕込んでた毒飲みやがったのか!」

 バリスはロレンツの口の中をこじ開け、口腔内を見ながらそう声を上げた。

 

「情報を吐いて主人から受けるであろう拷問と自害を天秤にかけ、自害を選んだということですか」

 カレセフューレはロレンツに憐れみの目を向けている。

「この人の主人(あるじ)はかなりやり手ですね。情報は全く得られませんでした」


「今回はつくづくダメですねえ」

 ロレンツに利用され、情報を聞き出す前に自害させてしまったカレセフューレは天を仰いだ。


「とにかく星王に今回のことを話しましょう。私が話をします」

 カレセフューレはバリス達にそう言うと、通信用ホログラムでガウディオに架電した。



〜ジャングルの中〜


「プラズマ! どうする!?」

 周りの木々が爆散していくなか、涙流華がプラズマに大声で問いかける。

「ちょっと待て! 考えてる!」


 しかしプラズマ達に考えさせる暇を与えないように、星王が彼らに向けて両手を掲げた。

「そろそろ終わりにさせてもらおうか。ロレンツに先手を打たれてはかなわんのでな」


「まずい……!」


 星王から巨大な光弾が射出される。



封唱(ふうしょう)!」


 突如水色の光る鎖が光弾に巻き付くと、宙に浮いたまま爆発もせず静止した。


 プラズマ達の前に現れたのはガウディオだった。

 ガウディオは苦悶の表情で、右拳を天に掲げた。すると青く光る鎖の巻きついた光弾は空高く飛び上がる。


 ガウディオが掲げた右手を開くと、それと同時に遥か上空で大爆発を起こした。


「封唱……さすがはMasters」

 バリスタ星王は構えを解くことなく、再度光弾を撃とうとしている。


「星王待ってくれ! ロレンツを人攫いの容疑で拘束した!」

 ガウディオのその言葉に星王はゆっくりと手を下ろす。


「森の先にロレンツがいる! そこで説明する!」

 ガウディオはそう言うが、星王はもちろん信頼していない。

油断させて不意打ちを仕掛けてくる可能性もあるからだ。

 しかし、ガウディオの必死さは嘘だとは思えない。そこでバリスタ星王はある提案をした。


「ならお前達が儂の前を歩いて案内しろ」


 



〜カレセフューレ側〜


「来ましたね。星王です」

 カレセフューレの示す方向にバリス達も目を向けると、プラズマ、涙流華、ガウディオを先頭としてその後ろに星王が付いて歩いていた。


 星王達の元へカレセフューレが手を挙げながら歩み寄っていく。

「星王様、私はMastersのロイ・カレセヒューレと申します」

 カレセフューレは自己紹介すると恭しく頭を下げた。


「知っておるわ。うちの星をちょろちょろとしておったロレンツ側の人間だろう?」


 カレセフューレは頭を上げると、今回の件を淡々と話し始めた。

「我々は人攫いの調査をしていましたが、どうやらロレンツ氏が関与していた可能性が高いことが分かりました。」


「それも知っておるわ。それを儂の手引きだと報道に吹き込んでいたのだ。裏もとってある」

 星王はカレセフューレ達Mastersを馬鹿にするように鼻で笑った。


「なのにお前達Mastersはせっせと儂の周りばかりを嗅ぎ回っておったわけだ。犯人はそっちにいるのにな」


「それは申し訳ない。私の目ももう老いていると痛感しました。遊撃捜査隊の方に言われるまでロレンツが怪しいなど微塵も感じていませんでした」

 カレセフューレは星王に軽く頭を下げた。星王は“ほう”と感心したようにプラズマ達、バリス達に目を向けた。


「まぁそのロレンツも人攫い組織の中では使いっ走りなのだろうがな」


「えぇ人身売買を生業とする闇側がこれで手を引くとは思えません。まだまだ人攫いは止まないでしょう」

 カレセフューレはさらに続ける。

「今回の人攫いの主導は殷生師団(いんせいしだん)の可能性が高い」


「あの殷獣の力を使う違法集団か。で、Master殿。そこに倒れているロレンツはどういうことだ?」

 星王はカレセフューレの後方に倒れているロレンツに目をやった。

 

「誠に申し訳ない。服毒し、自害してしまった」

 カレセフューレはまた軽く頭を下げる。その様子に星王は呆れたようにため息をつくと、“情報は?”と問いかける。

 しかしその問いに対してカレセフューレは(だんま)りを決め込んでいる。


 暗に情報は取れなかったと応えるカレセフューレに星王はあからさまに舌打ちした。

「奴が情報を吐かずに自害したから、人攫いは止められないと仰るのかな、Master殿」


「我々Mastersが調査に来ていながら、結局トカゲの尻尾切りに終わってしまい申し訳ない」


 またカレセフューレは星王に頭を下げる。


「ふっ、気にしてはおりません。そもそも外の者達に頼ろうと言う気はさらさらありませんのでな」

 星王は“軽い頭だ”と言わんばかりに、頭を下げるカレセフューレを見下ろしている。


「今回は我が星の立場を考え、政府軍、Mastersの入星調査を受け入れただけの話。Mastersが失敗した以上、これからは人攫いはこちらで対処する」


 カレセフューレは失敗をした負目もあったためか、無言で頷いた。そして“失礼します”と言って、その場を後にした。


 星王はカレセフューレとガウディオの背を見ながら、“ふん”と鼻を鳴らす。

「まぁいい。奴ら反星王側の拠点を探れば上に辿り着けるだろう」


 星王のその言葉にラルトが反応した。

「反星王の拠点は、カレセフューレさんが行った時には焼き払わられていたそうだ。明らかな証拠隠滅だ」


 星王は眉間に皺を寄せると、“くそっ、Mastersめ!どれだけの失態を”と怒鳴り、地面を蹴った。


「お前らも反星王側に(くみ)したわけだが、ロレンツのことを看破しただけ良しとしよう」


 星王は“早く立ち去れ”と手を振ると、反星王拠点の方へと歩いていく。プラズマ達がその背を見つめていると、星王は彼らの方に振り返った。

「そういえばお前達。宇宙亀の購入許可状が必要なのであったな」


「なんでそれを?」

 プラズマが不思議そうに尋ねる。


親父(ザルダム)だ。ホログラムで連絡がきておった。今なら儂が直々にサインをしてやらんでもないぞ」


「だが、お前らは反星王側に一時的とは言え協力していたのだ。お代は10倍で貰うからな」


 そうして星王はプラズマのホログラムにサインすると、彼らの元を去っていった。





〜宇宙亀販売所〜


「お、(せがれ)から許可状貰ってきたかい?」


「連絡してくれたのはありがたいけど、料金10倍って言われたぞ……まけてくれよ……」


「は? 料金はもう貰ってるぞ? あいつから」

 驚くプラズマ達にザルダムは“あいつは底抜けに優しいからな”と笑う。


「一級品だ。5階建て、共有の大部屋が3個に個室は20個付き。それぞれの階に風呂トイレ、キッチンがついてる」

 その説明にプラズマと涙流華は目を輝かせている。

「そのほかにも色々ついてるから、まぁ実際に見てくれ」


「今回、倅の濡れ衣を晴らす手伝いをしてくれたんだってな。ありがとう」

 礼をするザルダムに、プラズマ達は気まずそうに目を合わせていた。

 結果的に星王の濡れ衣は晴らせたものの、ほぼ最後までロレンツ側で戦っていたからだ。


「あと、あいつから添付ファイルがついてる。プラズマ君に送っておくよ」


「添付ファイル? よくわかんねぇけど、ありがとございます」

 プラズマは礼のつもりか軽く頭を縦に振った。



「よっしゃ! じゃあ早速亀に乗るか!!」

 そう言うとプラズマは我先にと亀の甲羅部分に建つ建物に繋がる階段へと走っていった。

 その様子を見た涙流華も負けじと走り出す。

「プラズマ貴様! “れでぃふぁあすと”だろうが!!」


「なんかもう森星来てから色々と矢継ぎ早に起こりすぎて眩暈(めまい)がしそうだ…」

 バリスとラルトはぐったりとした様子でザルダムに頭を下げると、宇宙亀へと歩いていく。



 散々なトラブルに巻き込まれながらも、一応の解決(?)を経て、一行は森星を飛び立っていった。


【EXTRA STORY】


[添付ファイル]


 【出入星記録】


 [氏名]

  アナイア・パイカ

  Annihia Piker


 [生年月日]

  257年6月15日


 [出生]

  灰星


 [星籍]

  灰星


 [直近一年出入星記録]

  05/15/286 入星 源星

  05/28/286 出星 源星

  05/30/286 入星 灰星

  07/11/286 出星 灰星

  07/13/286 入星 医星

  08/02/286 出星 医星

  08/03/286 入星 源星

  10/19/286 出星 源星

  10/20/286 入星 医星

  03/20/287 出星 医星

  03/21/287 入星 源星

  04/15/287 入星 医星

  04/18/287 出星 医星

  04/22/287 入星 森星

  05/03/287 出星 森星

  05/06/287 入星 娯星  


To be continued to next EXTRA STORY.....?

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