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【完結】My² Gene〜万能遺伝子と宵闇の光〜  作者: droegg
第4章 銀河の中枢 [央星]
32/91

水王大元帥反乱事件

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【登場人物】


 ▼何でも屋(IMIC)


 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


 [バリス・スピア]

 元軍医で、毒の能力を持つ医者。

 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。

 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。


 [水王(スオウ) 涙流華(ルルカ)

 元名家・水王(スオウ)家の侍で、水の遺伝子能力者。

 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。



 ▼政府軍


 [ラルト・ローズ]

 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。

 口が悪く、目つきももれなく悪い。

 炎の遺伝子能力者。



 ▼その他


 [セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。


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挿絵(By みてみん)




 ~央星(おうせい)・宇宙港前通、路地裏~



「お前涙流華(ルルカ)、何やってるこんなところで」

 医星で出会った白髪の男、ラルト・ローズが涙流華(ルルカ)を睨みつける。


 2人のただならぬ雰囲気に、プラズマが恐る恐る涙流華に尋ねた。

「ルルカ……さん……? 知り合いだったのか……?」


「こいつはお前ら以上のろくでなし一族の1人だ」


「てめえ! あの事件は俺たちローズ家じゃねぇって言ってんだろ!」

 涙流華のその言葉に反応し、ラルトは激高する。


「じゃぁなんだ!? 水王家が謀ったというのか? 爺様がそんなことするわけなかろう!」

 涙流華が刀をラルトに向けるが、プラズマとバリスが彼女を抑え込んだ。

 抑え込まれながらも、涙流華の怒りを含んだ眼差しがラルトを刺す。



 そうしているうちにスーツの男たちが集まってきた。

「中佐! 大丈夫ですか? こいつらは?」

「なんでもねぇ! 人殺しの話はデマだ。ドラマの撮影だとよ。警察にもそう言っとけ!!」

 ラルトは怒鳴りながら答えた。


 ラルトが政府軍の者と話している隙にプラズマとバリスが涙流華を引っ張る。

「行こう、ルルカ」

 涙流華は納得がいっていない様子でプラズマ達に引かれている。


「おい! 涙流華! 政府軍の庭でちょろちょろするなよ!!」

 ラルトが涙流華の背中越しにそう吐き捨てた。


 その言葉に我慢ならなかったのか、涙流華はプラズマとバリスの腕を振りほどくとラルトの方に向きかえった。

「言われんでもそうするわ!」



 ~央星~


 街を歩きながらバリスが涙流華に尋ねる。

「さっきの話、水王大元帥反乱事件の話だな」


 プラズマもにわか知識で話に割って入った。

「あ~、ルルカの父ちゃんが言ってたやつか。何だっけ……どっかの家の偉い奴が元帥で、ルルカのじいさんが大元帥で戦ったんだっけ?」


 バリスが補足する。

「バルルト・ローズ元帥だ。ルルカの爺さん、水王(スオウ)行不地(イカズチ)大元帥の反乱を止めようとして殉職となってる。それから懇意にしてたローズ家と水王家は仲違いって訳だ。」


 涙流華が一喝する。

「そんなはずない!」


「爺様はそんな方ではない……ローズ家の者が図ったに違いない……!」


「まぁ待てよルルカ、お互い何か理由があったかもしれないだろ。俺たちもお前やチリカの爺さんがそんなことする人だとは思っちゃいねぇよ」

 バリスが涙流華をフォローする。


「そうだな」

 落ち込む涙流華を見てプラズマが提案する。

「もう暗い話はやめてうまいもんでも食いに行こうぜ!金印売って金も入ったことだし!」


「よし! そうしよう!」

 いつもはこんなテンションで乗ることのないバリスも賛成し、3人は飲食街へ向かう。



 ▽▽▽

 ▽▽

 ▽



「先輩、あの美人さん誰です? 元カノですか?」

 ラルトは帰り際に部下から含みのある顔で尋ねられる。

 その部下は深緑の軍服に身を包み、黒い短髪で左の前髪だけが長い奇抜な髪型だった。まだ若くフレッシュな雰囲気を漂わせていた。


「家の話してたから、結婚前に挨拶に行ったけど、先輩の浮気がバレてやばいことに…」

 そう言った途端ラルトの手から火柱が上がった。


「マイヤード、てめぇ……つまらねぇこと言ってんじゃねぇよ」


「じょ、冗談ですよ……」

 ラルトの部下、ジョン・マイヤードは苦笑いで両手を胸の前に出して小さく振っている。


「あいつはローズ家を恨んでいる。おれはあいつの家を恨んでた。相容れない仲ってだけだ」

 ラルトは静かに、しかし確かな怒りをあらわにする。


(涙流華、俺だって真実を調べてんだよ……!てめえだけ何もせず文句垂れやがって)

 ラルトは心の中でつぶやきながら政府軍本部へ戻る。



 ~政府軍本部~


 ラルトが本部へ戻ると、ガラス張りになっている自分の執務室の中に誰かが座っていた。

 突然女性職員が近寄ってきたかと思うと小声で、それでいて勢いよく耳打ちした。

「どこいってたんですか中佐! オール大元帥とラバーズ元帥がいらっしゃってます。」


「だ、大元帥!? まじか……おれなんかやらかしたかぁ……?」

 今までやらかしたことを頭に巡らせながら、中佐執務室に入る。


「医星でアルコ・トーレ逃したのがバレたのか……?」

 医星での一件で医薬品強盗事件の主犯を逃がしたことを咎められるのか、思い当たる節はこれしかない。

 彼は大きくため息をついた。



 コンコン



「失礼します」

 ラルトは覚悟を決めて自室にも関わらずノックしてからゆっくりと部屋に入る。

 そして自席に座る男と、その横に立っている男に敬礼した。


 ラルトの席に座っている、ウェーブのかかった肩まで伸びる髪の40代ほどの男。

 全軍人が(まと)う黒い革製の軍服、そして左胸には最高位の階級を表すバッジがつけられている。


 そしてその傍らに姿勢よく立っている褐色の男。

 黒軍服は座している男と同じだが、後ろで銀色の短髪と、左眼につけた眼帯が特徴的だった。


「構わんよ、楽にしてくれ。」

 ラルトの席に座っている男、政府軍のトップである大元帥のブラスト・オールはラルトに着席を促す。


「一体何の用でしょう……? 俺、何かやらかしました……?」


 オール大元帥の傍らに立っているラバブル・ラバーズ元帥が無機質な声を発した。

「心配するな。我々が来たのは君の調べ物についてだ」


「というと……?」

 ラルトは動揺しながらも話の主導権をラバーズに渡す。


「水王大元帥反乱事件のことだよ」

 核心を突かれ、ラルトは乾いた笑いしかできなかった。

「はは……お気づきでしたか……」


「ああ、あの件は我々も調べているからな」

 ラバーズ元帥はアタッシュケースから資料を取り出すとラルトに手渡した。

 そしてラルトがパラパラとめくりながら資料に目をやると、オールが説明を始める。


「政府軍のトップである大元帥が政府軍に対して起こした反乱。そして反乱を止めるため大元帥と戦った元帥」


「水王行不地(イカズチ)大元帥とバルルト・ローズ元帥が戦ったあの当時、現場の大元帥執務棟に2つの人影があったと言われている」


「2つの人影……?」

 復唱するラルトに対してオール大元帥は資料から飛び出ていた付箋をチョンチョンと指さし、確認するよう促す。

 ラルトは手渡された資料をめくり、2人の黒い影が映った画像に目をやった。


「ラグナロク・ニーズヘッグと……ヴァンガルド・キル……」


 直立したままのラバーズ元帥がその2人について説明を始めた。

「ラグナロク・ニーズヘッグ。言わずとしれた凶悪犯罪者。こいつは今牢星(ろうせい)の刑務所に収容されているが、それも獄中で仲間を増やす為だという情報が入っている」


「そしてもう一人の黒ローブを被った人物。我々はこいつを当時の背丈から指名手配中のヴァンガルド・キルだと見ている」


「ラグナロクはニーズヘッグ家に養子として入っているが元はヴァンガルドと同じキル家で、ヴァンガルドの実の兄だ」

 ラバーズが補足した。


 そしてオール大元帥が今回の話の目的に触れる。

「もちろん君もこの程度は調べがついているだろう。そして……」


()()()()()水王行不地大元帥、そしてバルルト・ローズ元帥が戦ったことも」


「なぜ史実ではこの2人は一切出てこず、大元帥と元帥が戦ったことになっているのか?」


 大元帥の問いにラルトは無言となった。

 彼の言う通り、ラルトの祖父であるバルルト・ローズと、涙流華の祖父である水王行不地は戦い、お互い相打ちで殉職したと報道された。

 大元帥、元帥という間柄のみならず、プライベートでも仲の良かった2人だけに様々な陰謀論が囁かれた。

 しかし歴史としてはその二人が殺し合いをした、となっているのだ。


「史実が捻じ曲げられているのは、ローズ家と水王家を同時に没落させるためだったと思ってる」

 その言葉にラルトは眉間に皺を寄せた。大元帥の言うことが本当であればローズ家と水王家は嵌められて没落したことになる。


「当時の五大名家は水王家、ローズ家、ジア家、キル家、ギガ家」


「ジア、キル、ギガの三家が結託して、ローズと水王を蹴落とそうとした。水王とローズは初代名家から名を掲げていたほどの実力だったからな。邪魔だったんだろう」


「結託した三家の指揮を執っていたのが、当時の上級大将バイス・ギガ。」


 驚いたラルトが目を見開く。

「つまり、政府軍と名家のトップ2を蹴落とすために三番手のギガ家が?」


「そう、当時のバイスの執務日誌を調べると、事件前日と当日に休んでいるんだ。それまでの10年間は一度も休んだことがなかったのに、だ。そしてバイスは翌日辞職している」

 オール大元帥は話を続ける。


「おかしいと思わないか? 我々はこの3日に何かあると見て調べている。当時のバイスの部下、ルース・ジアも怪しいと思っている」


 さすがのラルトもここまでの調べはついていなかった。

 そして頭をフル回転させ整理しながらも、一番の疑問を大元帥に尋ねる。

「なぜ……この話を中佐の私に?」


「同じ事件について調べているからね、まぁ親心だとでも思ってくれ。」

 オール大元帥は照れくさそうに話をはぐらかすが、すかさず隣のラバーズがラルトに忠告する。

「この話は内密に。政府直轄治安維持機関にギガ家の者、レア・ギガがいる」


「政府直轄治安維持機関………十闘士(じゅっとうし)の【斬竜(ざんりゅう)】ですか」


「彼女の力は政府軍にとって必要な存在であり、脅威だ。敵対されると厄介でな」

 オール大元帥があご髭をさすりながらぼやく。


「わかりました。情報、感謝します」

 ラルトは頭を下げた。


「まぁ、何かあったら言ってくれ。電話でもな。だがあまり首をつっこみすぎるなよ。この件は危険だ」

 そう言ってオールは立ち上がると、中佐執務室の出口へと歩みを進めた。

「お前も早く結婚して家庭を持て。無茶をしなくなるぞ」


 そして何かを思い出したかのように手を叩くと、ラルトの方に振り返る


「そうだ、本部の前の飲食街に新しくできた『クレール・ドゥ・リュヌ』ってレストランうまいらしいから昼飯にでも行ってみろ。もしかしたらそこで将来の嫁に出会えるかもしれんぞ」

 オールがニヤつきながらラバーズ元帥と共にオフィスを後にした。



「ふぅ……いきなりトップ2を相手すんのは疲れるぜ」

 ラルトは机にもたれかかる。



 ぐぅー


 『昼飯』と聞いたからか、ラルトの腹は大きな音を立てて空腹を訴えた。


「メシ食いにいくか……」

 ラルトはオールの言っていたレストランに行くことにする。


「まぁ、出会いなんてあるわけねえけどな」




 ~央星・レストラン『クレール・ドゥ・リュヌ』~


「おい、ルルカ……お前どんだけ食うんだよ……」

 バリスが呆れた様子で隣に座る涙流華に問う。


「そこまで食べてなかろう。次は……このスフレケーキとやらにしよう」

 涙流華は目を輝かせながら店員を呼んでいる。


「流石のプラズマでもダウンしてんのに……」

 バリスの前で大食いのプラズマがテーブルに突っ伏している。

「もう食えない……」


「スフレケーキは少しお時間かかりますがよろしいでしょうか?」

 ウェイトレスの言葉に涙流華は無言で大きく頷いている。


「これが未来の水王家当主で本当にいいのか……?」

 バリスは割と本気で水王家の未来を憂いていた。


 するとウェイトレスが再度プラズマ達のテーブルへ来る。

「お客様すみません、こちらの1席を相席にしてもよろしいでしょうか?ただいま混雑しておりまして……」


「構わぬぞ!」

 すでにナイフとフォークを持った涙流華が答える。


「ありがとうございます……お客様、こちらです」

 ウェイトレスが相席客を案内する。


「げっ、水王涙流華!」


「お前! ラルト・ローズ!!」




 To be continued.....


【EXTRA STORY】


 ~レストラン クレール・ドゥ・リュヌ~


「ふむ……ガトーショコラケーキ……メロンパフェ……」


「どちらも捨てがたい……」


「涙流華、お前食いすぎだ……」


「もう食べられないとは情けない」


 ポチッ


 ピ~ンポ~ン


「すまぬ! このガトーショコラケーキとメロンパフェを2つずつ!」


「おい……俺たちはもう食えないぞ……プラズマだってダウンしてんだ」


「誰がお前らにやるか。全部私のだ!!」


「涙流華が旅に出されたのって水王家の食費削減じゃねぇだろうな……?」



 To be continued to next EXTRA STORY.....?

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