我が名は
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【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
▼水王家
[水王 千里華]
深い青色のショートカットの少女。元名家の水王家の忍び。
戦星の荒野で襲われているところをプラズマ達に助けられた。
水王家軍団長のルルカは実の姉。
[水王 涙流華]
深い青色のポニーテールをした水王家軍団長を務める女サムライ。
非常に戦闘力が高く、冷静沈着。チリカの姉。
[水王 木勝]
水王家十代目当主で、ルルカ、チリカの父親。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
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【お知らせ】
あとがき間違えてました。
恋風→香
なんの話やってね。
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~如月家~
「てめぇ……遅ぇぞ……!」
ボロボロで万策尽きたプラズマの前に現れた一つの人影。
「おい、ろくでなし、もう終わりか」
その人物…その女性が倒れるプラズマ達に言い放つ。
その女性からは、冷酷さを表すかのように、身体から冷気が流れ出ていた。
帯刀したその女性は、そのたたずまいから侍であることが分かる。
「うちの者達にやってくれたな、如月家」
その侍は鞘から刀を引き抜きながら如月|鉄に正対した。
「我が名は水王涙流華、水王家軍団長。妹は返してもらう」
涙流華が刀を地面に沿わせながら走り出し、刀が触れたところから地面が凍っていく。
「これで草は生やせまい!」
さらに刀を振り上げて水を放ち、鉄と草鉄に大量の熱湯を浴びせる。
「くっ…熱湯か……!」
「熱っっ!くそがっっっ!」
草鉄は草で大部分を防ぐが、鉄はまともに熱湯を受け、悶えながらも一旦距離をとった。
「まだまだ。」
涙流華は冷酷な目で攻撃を続ける。
熱湯をそのまま蒸発、鉄の頭上で氷に昇華させ、氷の塊を落とす。
「ぐ……」
鉄は草の壁で氷を防ぐが、押しつぶされ下の階まで落ちる。
「うちの殿によくもやってくれたな」
草鉄が涙流華に対して中段の構えを取り、彼女に向けて刺々しい殺気を放った。
「そちらこそ、よくも妹を痛ぶってくれたな。叩き潰してやる」
涙流華は鬼の形相で草鉄を睨み返した。
「姉上……」
草鉄が涙流華へと駆け寄り、彼女に袈裟斬りを浴びせる。
……が、彼女はいともたやすくその斬撃を受け止めた。
「この凍土では得意の草は出せそうにないな」
涙流華は鍔迫り合いをしながら草鉄を挑発する。
「それはどうかな」
そう言うと草鉄は壁から草を発生させ、刀を伝い涙流華の刀を縛りあげた。
そして縛り上げた草が波打ち、涙流華の刀を投げ飛ばす。
彼女の遥か後方に落ちた刀。
涙流華はその落下音から大体の位置を把握した。
あの距離の刀を拾い上げるには、相手に致命的な隙を与えてしまう。
そう考えた涙流華は刀の方を振り返ることなく、左半身の構えをとった。
草鉄は彼女の予想外の行動に苦笑している。
「剣士が丸腰でどう戦うつもりだ?素手でやるつもりか?近接格闘を捨てた水王家にそんな芸当ができるとでも?」
そう言って草鉄が素早く間合いを詰めると、袈裟斬りの形で右肩から涙流華を斜めに両断した……
はずだった。
涙流華は斬撃の動線から右に身体をずらすと、そのまま一歩踏み出し草鉄の左半身に密着した。
そして草鉄が振り下ろした勢いを殺さずに、彼の両手を上から左手で押し付け、反時計回りに反転した。
「合氣っ……!?」
目まぐるしく流れていく景色。まるで行き先を誘導されているかのようだった。
行き先を誘導される草鉄の目の前に突然現れたのは、涙流華の裏拳。
その裏拳を本能で避けようとした草鉄はまるで“リンボーダンス”のように、刀と共に体を大きく反らせた。
「合氣術の……太刀取りか……!」
普通の人間ならここで体勢を崩して尻餅をつくことだろう。
そして倒れている隙に刀を取り上げることができるのだが……
屈強な侍である草鉄相手では倒すには至らなかった。
「ざ……んねん……だったな………!?」
倒れないように体勢を立て直そうとする草鉄の左側に位置した涙流華。
涙流華は、刀を握る草鉄の両手を軸に回転しながら彼の右側に移動した。
彼女は、体勢を立て直し、その反動で前のめりになった草鉄の両手を、曲げてはならない彼の右後ろに捻った。
「小手返し……!!」
小手返しによる投げは耐えたものの、両手を捻られ手が緩んだ隙をつかれ、涙流華に刀を取り上げられ、投げ捨てられた。
さらに……
勢いによって草鉄と正対する形となった涙流華は左手で彼の道着の襟元を掴み、右手で彼の左手を握ると袖を絞った。
素早い右回転と共に姿勢良く涙流華が草鉄の懐に潜り込む。
「背負い……!!?」
次の瞬間、天地がひっくり返り、草鉄は勢いよく地面に叩きつけられた。
その間に涙流華は自身の刀の元に駆けていく。
「合氣術に……柔術……水王家は近接格闘を主としていなかったはず……」
「あぁ、私以外の奴らはそうだ。剣術ばかり鍛錬している」
涙流華は涼しい表情で言い返した。
「奴らはこんなときどうするのだろうな」
草鉄はすぐ様地面から蔦を伸ばし、刀を手元に引き寄せた。
そして、丸太程の太さを持つ蔦を猛スピードで放ちながら、それらを盾に再度彼女に斬りかかる。
涙流華は迫りくる巨大な蔦を斬り伏せながら、草鉄へと間合いを詰めていった。
斬り落とされる蔦の間を縫いながら接近した両者の刀が交差すると、大きな金属音と共に、再度鍔迫り合いとなる。
「草は地面からだけではない!私からでも発生させることができる!」
草鉄の言葉のとおり、涙流華の刀から蔦が覆い茂り、彼女の身体と刀を縛り上げた。
「残念だったな、水王涙流華。自分の身体から蔦は発せられないとでも思ったか?」
腕程の太さの蔦が涙流華の身体を締め上げる。
「このまま骨が折れて終わりだ」
「残念だったな、如月草鉄。自分の身体は凍らせられないとでも思ったか?」
涙流華を締め上げていた蔦が凍り、崩れ落ちる。
咄嗟に間合いを取った草鉄を前に、涙流華が刀を垂直にして、自身の胸の前に当てがった。
「水王一式・水牢!」
刀の前から水の玉が大きくなりながら草鉄に近づいていく。
「この……っ!」
草鉄は近寄って来る水の玉を斬り刻もうとするが、刀は水を素通りしてしまう。
水の玉はやがて草鉄を呑み込み、彼を水の牢獄に閉じ込めた。
彼はもがき苦しみながら、刀をやたらめったらに振り回しすが徐々に動きが弱っていく。
最後に煉術で火唱を出すが威力が足らず水中に浮く形で気を失った。
涙流華は草鉄に背を向け、刀の水を払い鞘に収める。
すると草鉄を覆う水の玉が弾け、飛散した水が雨のように降り注いだ。
涙流華は、バリスによって解毒が済んだ千里華に近寄り、平手打ちをする。
「心配をかけるな、反省しろ」
「ごめんなさい……姉上……」
力がこもった平手打ち。
しかし姉が軍団長の立場に反した上に命がけで自分を救いに来たということは千里華も分かっていた。
それはプラズマやバリスも同じだった。
「流石厳しいねぇ~、お姉様」
プラズマが涙流華を冷やかすと同時に、彼の頭上から大量の水が滝のように流れ落ちる。
「帰るぞ。貴様らもだ。」
涙流華が千里華をおぶって立ち上がったところに、巨漢が立ちはだかる。
「さっきはやってくれたな!!小娘!!」
そこには激高した如月鉄が立っていた。
巨刀を振り上げる巨漢。
涙流華は咄嗟に抜刀しようとするが、千里華の左足で手が阻まれ、引き抜くのに時間がかかっている。
「まずい……っ」
鉄と涙流華の間の地面から、滝の様な水流が勢いよく噴き上がる。
「高圧水流………!」
鉄が振り返ると、刀を地面に差した木勝が立っていた。その後ろには複数人の侍が構えていた。
「鉄、お前の相手は私が受けよう。」
思わぬ客人に鉄は驚いた表情を向けている。
「木勝。まさかお前がここにくるとはな。よく家老達を説得できたものだ。あんな水王家の癌たちを」
かつて水王家にいた鉄は家老達の権力、発言力を知っていた。
特に先々代から支えてきた者や、先代正統後継者で既に死去している水王衛菜に支えてきた者。
その者達の権力は高く、“家老”という集団が当主と並ぶ発言力を有していた。
先代異端後継者で木勝の父である水王行不地は政府軍のトップまで登り詰め、名家の力と併せて実力で黙らせていた。
しかしそんな彼の代で名家から没落した水王では、その息子である木勝の発言力は決して高くなかった。
当主である木勝が最前線の場に、ましてや自身のミスで捕まった忍びを助けに行くなど許されるはずもなかった。
そのため鉄は木勝がこの場に来たことに驚いていたのだ。
しかし…
「いや、説得などしていない。」
「ほう?なら力でねじ伏せてきたか?」
木勝の答えに、鉄は興味深そうに尋ねた。
「力か…そうだな。当主命令で従わせた」
木勝は真っ直ぐな眼差しで鉄を見ている。
「ありえんな。あいつらは自分達の利益、立場に利することしか認めない。お前の妹の件だってそうだろう」
「お前はあいつらに自分の意見を押し通すことはしない。今までもそうだったはずだ」
鉄はそう言って鼻で嗤う。
木勝は一瞬目を伏せるが、刀を握り直し、鉄との一騎打ちの意思表示をしている。
「木勝……またお前と刀を交えるか……軍団長をかけて戦った時以来か」
鉄も刀をより一層固く握り、太い蔦を体に纏い始め、即席の鎧を生成する。
木勝も中段に構えた状態で、刀に水流を螺旋状に纏わせた。
鉄が木勝に飛びかかるが、木勝の一閃で蔦の鎧は一瞬で袈裟斬りの形で二つに割れた。
崩れ落ちる鎧の中から鉄の胸から腹にかけ斜めに刻まれた刀傷が露わになる。
血を吐きながらその場に倒れる鉄と、彼の元へと歩み寄る木勝。
そして地に伏す鉄は、傍に立つ木勝に掠れた声で語りかけた。
「やはりお前は強いな……」
木勝の表情にもう殺気はない。
「当たり前だ。水王家十代目当主だぞ」
「なぜ…その力を使わない…」
鉄は木勝の力を認めながらも、家老に対して強く出ることのできない彼に尋ねた。
「木勝、水王家は時代に取り残されている……保守的すぎるのだ」
思い当たる節があるのか、木勝は小さく頷いている。鉄はさらに続けた。
「行不地様がいなくなり、水王家が名家から没落したときから多くの敵が我々を狙っていた……」
没落した名家を狙うのは珍しい事ではなかった。
集まった優秀な人材と貯め込んだ。名家のほとんどは決して目先の利益だけで成り上がったわけではなかった。だからこそ優秀な人材が集まり、更なる富を生んだ。そのため没落したとは言え、財宝を売ることはあっても奴隷商に人材を売ることはなかった。
奴隷商界隈で名家の人材は非常に高価で取引された。
欲深い奴隷商と言えど、現役名家を狙うことはしなかった。基本的に現役名家に手を出せば、政府軍や、政府軍と互いに監視し合う存在である一神四帝、政府軍トップの大元帥や四帝経験者が所属するMasters、こういった強力な公権力が介入してくるからだ。
しかし、没落した途端にそういった後ろ盾は消えてなくなる。慈悲のかけらもないように政府軍などの公権力はだんまりを決め込むのだ。
名家は没落したその瞬間から、その家の遺伝子能力や、その家に仕える優秀な人材を狙われる存在となる。
先代で没落した水王家は、その瞬間から他星や奴隷商に狙われることとなったのだ。
水王家には、本流となる水王家の他に、傘下として他家が入っていた。如月家もそのうちの一つだった。つまり如月鉄は如月家のトップでありながら、水王家の幹部でもあったのだ。
「このままでは水王家はおろか自分の如月家まで潰れてしまう……そう思い、水王家を乗っ取り、“月の国”と手を組もうと考えた」
木勝は自分の不甲斐なさと、如月家に……傘下の他家への申し訳なさを痛感していた。
「鉄……」
「乗っ取りは失敗に終わったがな……」
鉄の腹部からは血が溢れ続けている。
「“月の国”は身体能力を飛躍的にあげる殷獣の如き力……そう、水王家の獣式に似た力を、全ての人間に与える術を持っていた」
鉄は自嘲気味に続けた。
「我々には分けてはもらえんかったがな……」
「儂がいうのもなんだが、“月の国”には関わらんほうがいい。」
そこまで言い終えると、鉄は深く息を吐いた。
「まぁ、せいぜい足掻くがいい……水王家よ……」
「如月家の、儂の家族達を残していくのが心残りだが……きっと草鉄たちが何とかしてくれるだろう」
彼の負った傷ではここまで話すのにもかなりの体力と胆力が要っただろう。そしてついに力尽きたのか、その言葉を最後に鉄は草に包まれ静かに、ゆっくりと土に還っていった。
「お前の言う通りだ、鉄。水王家もそろそろ変わらねばならん」
「こんなことになるまで動けなかった不甲斐ない私をどうか許さないでくれ。そして水王家を盤石なものにして如月家も安泰となったとき、そちらに行ってから、また話し合わせてくれ」
木勝は目を伏せ、鉄への餞として、そう言葉を残した。
こうして水王家と如月家の対立は終わりを迎えた。
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~22年前~
――水王家九代目正統後継者水王衛菜・三十回忌――
「木勝、儂らで行不地様を……水王家当主を支えるのだ」
「如月を救っていただいた殿に恩義を返したい」
「その気持ちだけ受け取っておこう」
「行不地様……!」
「鉄。お前は自分の家族、如月家の者を守ることを第一に考えろ」
「それが私からの命令であり、願いだ」
「今までと違って十代目からは木勝、咲、香の三兄妹で水王家を盛り上げてくれるはずだ」
「正統も異端もない。新しい水王家だ」
「だから鉄、お前は安心して自分の家族を守れ。そして余った力を少しばかり水王家に貸してくれ」
「はい。ありがとうございます……殿……!」
To be continued to NEXT EXTRA STORY.....?




