如月草鉄という男
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【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
▼水王家
[水王 千里華]
深い青色のショートカットの少女。元名家の水王家の忍び。
戦星の荒野で襲われているところをプラズマ達に助けられた。
水王家軍団長のルルカは実の姉。
[水王 涙流華]
深い青色のポニーテールをした水王家軍団長を務める女サムライ。
非常に戦闘力が高く、冷静沈着。チリカの姉。
[水王 木勝]
水王家十代目当主で、ルルカ、チリカの父親。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
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〜如月家地下〜
「ありがとう……」
千里華はプラズマとバリスに礼を言うと、胸の前で自分の手をぎゅっと握る。
「礼はお前の姉貴にも言うんだな」
「え?」
バリスは千里華に背を向け歩き出す。
「よっしゃ!じゃあ逃げるか!」
プラズマがニカっと笑い、2人を先導して走り出した。
3人が牢屋から廊下へ出ると、すでにそこには何十人ものサムライが待ち構えており、その先頭には如月家当主、緑色の結った髪に顎髭を蓄えた巨漢の如月鉄が立っていた。
「うちの水準はどうであったか?」
鉄が不気味な笑みを浮かべプラズマに問う。
「補佐とかなんとかは大したことなかったな」
プラズマは両手を頭の後ろで組み、余裕な様子で答える。
「ならば…」と、鉄のものとは違う抑揚のない若い声が上がる。
「拙者と手合わせ願おう」
鉄の巨体の後ろから、後ろで髪を束ねた細身の侍が現れた。その男は若く、左腰に差した鞘に右手を当てている。
「拙者は如月家軍団長、如月草鉄。いざ、参る」
草鉄が名を言い終えると同時に居合で切りかかるが、プラズマとの間に千里が割って入り、刀を受け止める。
「プラズマ、バリス……!今のうちに攻撃を……!」
「おう!」
プラズマが|千里華に応えようとするが、巨漢が割って入る。
「おいおい、当主にも構ってくれよ。寂しかろうが。」
鉄がプラズマとバリスに対して、草を固めた木槌で攻撃する。
「くそ……このデブが!」
バリスがイラつきながらも毒を撒く。
「鉄正と同じと思うなよ!」
鉄は草の壁を作り出して防御し、さらにその壁をバリスの方向へと薙ぎ倒す。
広範囲の電撃がプラズマから発せられ、草の壁を燃やし尽くした。
「大丈夫か?バリス!」
しかし、新たな草の壁による波に呑み込まれる。
少し離れた場所で千里華は草鉄と対峙していた。
「水王家軍団長の妹の忍。腕は……やはりそこまででもないな」
千里華は血が滴る右腕を押さえながら、草鉄の言葉を受ける。
「そういうあなたこそ………姉上には遠く及ばないようね。」
「ふっ、そうだな。では、その姉上殿の妹君を楽々と片付けるとしよう。」
草鉄は刀を振り下ろす。
「見くびらないで!」
千里華が大量の水を出し草鉄の刀を押しのけた。
彼女は力強い目と共に立ち上がると、氷のクナイを連投する。
飛んでくる氷のクナイを、刀の柄で砕きながら草鉄は呟いた。
「ほう、11代目は水の状態変化を操るか。」
「我々も気になっていた。9代目は主に氷、10代目は高圧力の水。お前達の世代の能力を知る前に如月家は離反したからな。」
水王家には代々、その代ごとに特化している“遺伝子能力の型”があった。
もちろん、ある程度の水の能力は使用できるが、特化した能力は比にならない程の能力差があった。
“遺伝子能力の型”によって、その代の強さ……ひいては水王家の趨勢を決めることとなる。
涙流華や千里華などの11代目の遺伝子能力の型は、如月家離反時には発現しておらず、判然としていなかった。
だからこそ、如月家は戦況を大きく変える可能性のある11代目の能力を知り得るために、水面下で情報戦を繰り広げていたのだ。
「だが……ただの状態変化なら大したこともない」
「それは……どうかしら」
千里華は水蒸気で辺りを覆い、身を隠す。
プラズマがありったけの力で電撃を放ち、草の波を焼き払うがかなり体力を消耗してしまう。
「どうした~?電撃も毒もおれには届かんぞ~?」
鉄が勝ち誇った様子で言い放つ。
「プラズマ、きついだろうが俺が毒を放ったらそれを高火力の電撃で焼きつくせ」
バリスがプラズマに耳打ちし、直後大量の毒を放つ。
「おらぁぁ!」
プラズマがバリスの放った毒を電撃で焼き尽くした。
「何やってんだ~?お前ら仲間割……っっ!」
毒を焼いたことであたりに蒸発した毒ガスが充満し始める。
「くそっ…!!草鉄!毒の霧が充満するぞ!!」
鉄は草鉄に毒霧の発生を伝えると、自身をドーム状の草で覆い防御態勢に入った。
鉄の忠告を聞いた草鉄は、水蒸気に隠れる千里華を前に納刀する。
「毒霧か。考えたな。厄介だが彼女にも水蒸気で隠れられた手前、丁度いいか」
草鉄も草で自身を覆い身を守った。
その間にバリスは毒霧にあてられたプラズマと千里華を担ぎ、周りで倒れているサムライ達の上を逃げていった。
少し走ったところ――廊下の隅で2人を下ろし解毒を施す。
「バリス……」
プラズマは毒に当てられ感覚が麻痺しているのか、言葉を出すにも精一杯の様子だった。
しかしこの毒は本来なら短時間ではあるが体の感覚をほぼ完全に麻痺させてしまうほどのもの。
意識朦朧としている千里華が普通の反応だ。
「お前、ほんとにタフだな……俺の毒で声出せるなんて…耐性持ってんじゃねぇだろうな……」
焦るバリスはプラズマに軽口を叩き、虚勢を張ってみせた。
そうこうしていると侍がプラズマ達を発見し、味方を呼ぶため後方へと叫んでいる。
「クソッまずいな……戦力差がえぐすぎる……早く解毒して逃げ出さねぇと……」
バリスは二人の解毒を済ませると、力を短時間で使いすぎたせいか、その場で膝をついた。
解毒を施したとはいえ、すぐに動けるわけではない。三人の状況は万事急須だった。
「くそ……やっぱ3人だけはきついぞ……来るなら早く来い……!」
そう言い残してバリスは気を失いその場に倒れた。
3人はサムライたちあっという間に囲まれてしまう。
「あの場は考えたが、そのあとがなかったな。軍医さんよ」
鉄が草の木槌を肩に乗せ歩み寄って来る。
“仕留めた”と言わんばかりの目を向ける鉄に対して抗うようにプラズマが立ち上がった。
「こいつらはやらせねぇぞ………」
プラズマはバリス、千里華を守るように彼らの前に立ちはだかる。
しかし毒にやられた今の彼に、電撃を発する力はなかった。
「こっちに来やがったら……ぶっ飛ばすからな……!」
プラズマの殺気を孕んだ視線が侍達を貫く。
斬りかかろうと刀を振り上げた侍はその威圧感からかその場で動かずにいた。
「なんだ……気押されているのか……?」
「何やってんだ!早く……なに……?」
その後ろにいた侍も前へと躍り出るが、プラズマの視線を前にそれ以上を踏み出すことができない。
彼らの前に進んでいく鉄は感服したようにプラズマの気迫を褒め称えた。
「確かに、全身を押し返されるような圧を感じるな。気迫に押されるとは、こんな感覚は初めてだ。やるな小僧」
「だが………儂を押し返せるほどの圧ではないな。」
鉄はプラズマの殺気をものともせず、彼らに近づいていく。さらに草鉄も難なくプラズマ達に近づいていった。
そして二人がプラズマ達の前で立ち止まると、草鉄が刀を向け、草の檻が3人を囲んだ。
「終わりだ、侵入者」
静寂の後、凍てつくような風がその場を衝き抜ける。
そしてプラズマの視線の先――鉄達の背後には、その場に伏す多くの如月家のサムライ達。
その倒れた侍達の中に一つの人影が立っていた。
「遅ぇぞ……!」
プラズマがそう言うと、草の檻が凍り、程なくして崩れ落ちた。
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~水王家~
コンコン
「失礼します、八千代でございます」
ザァッ
「失礼します。加密列茶を淹れてまいりました。気分が落ち着……」
「……?」
「やはり行かれましたか……」
「こうなっては必ず行かれると思っておりました。」
「貴女様は冷静でいるようで、いつも心に忠実に、無我夢中で生きてきたお方ですから」
「そのため気分が落ち着く茶を持ってきたのですが……私が飲むと致しましょう」
「御武運を。失礼致します」
ザァッ
To be continued to next EXTRA STORY.....?




