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【完結】My² Gene〜万能遺伝子と宵闇の光〜  作者: droegg
第2章 医療の星[医星]
19/91

持たざる弱者の想い

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


【登場人物】



 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 Gene of Thunderbolt

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校中等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。



 ▼ヴィスタ診療所


 [ヴィスタ・ドーンズ]

 医星で医者をしている若い女性。


 [バリス・スピア]

 医星で医者をしている青年。

 目つきがとても悪い。



 ▼その他


 [セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



 ~医星中心街区・ビル内~



「すぐにわかるわ……バリス・スピア!!」

 ヴィスタが両手を前へ掲げると、プラズマ達を囲むように地面から大量の(いばら)が発生した。


「この量っ……!」


「上からもだ!!」


「くっそ!風唱(ふうしょう)!」

 バリスはプラズマに風の煉術(れんじゅつ)を打ち込んだ。

 それによってプラズマは荊の攻撃範囲内から外れ、バリスも風を放った反動で圏内から脱する。


 間一髪だった。

 二人が元いた場所を見ると、上下から生える荊が押し合うように挟撃していた。


「あそこにいたら潰されてたな」


「ヴィスタのAGIS(エイジス)はおそらく一定範囲内ならヴィスタ自身からだけでなく、どこからでも荊を伸ばすことができる」


「どこからでも!?」


「そう………」


「空間からもなっ!!!」


 プラズマとバリスの眼前から突然荊が伸びる。

「っぶねぇ……!!頭取れるとこだったぞ……!」



「(AGIS(エイジス)の能力は厄介だが、ヴィスタは戦闘慣れしていない。)」



「ヴィスタは防御から攻撃に移るのに時間がかかる。その隙を狙うぞ」


 バリスは直径1メートル程の毒球をヴィスタに向けて放つと、続いて煉術も発動させた。

炎唱(えんしょう)!」


「毒霧なんて効かないわよ!!バリス!!」

 自身を操り人形のようにして毒霧に突っ込んで来るヴィスタ。

 バリスが自分を傷つける技を使ってこないだろうと読んでのことだった。


「くそっ!!」


 プラズマが電撃を纏ってヴィスタに正面から体当たりするが、ビクともせず止められてしまう。

 それもそのはず、彼女の胸部は荊で何重にも武装され、弾力性のある鎧のようになっていたのだ。


 そして電撃によって燃えた胸部を新たな荊が覆い鎮火する。



 その時だった。プラズマの左脇腹付近に直径30cm大の氷塊がぶつかり、それによってプラズマは大きく吹き飛ばされた。


 そして入り口から、よれたスーツを着た不気味な男が現れた。

「肋骨はいっただろうな。私が神立(しんりつ)病院の紹介状を書きましょうか?」


「プラズマ!!」

 吹き飛ばされたプラズマの元にバリスが駆け寄る。


「どうも。神立病院職員のアルコ・トーレと申します」

 その不気味な男、アルコ・トーレはわざとらしく丁寧に挨拶をした。


「てめぇ、そんな堂々と神立って名乗っていいのかよ。こんなことが知れたら……」


「大丈夫。この星にはみ出し者であるあなたの言うことなど信じる権力者がいると思いますか?」


「さて、では先にはみ出し者のスピア先生から潰しましょうか」


AGIS(エイジス)!!製氷者(プロセサー)!」


 トーレが両手を天へと掲げると直径3メートルほどの氷塊を生み出した。

「食らえっ!!!」


「ごめんね……バリス」

 ヴィスタは悲しそうにそう言うと、トーレの氷塊と同時に大量の荊を放った。



「やばい……!!」



 すると四方八方から迫る荊の波と巨大な氷塊が炎に包まれ、跡形もなく消え去った。




「依頼主が助けたから今回は支払いなしだな」



 今回の依頼主である政府軍中佐のラルト・ローズがプラズマ達の後ろに立っていた。


 そしてローズ中佐はタバコに火をつけながら彼らの前へと歩み出る。

神立(しんりつ)病院のアルコ・トーレは睨んじゃいたが、本当に診療所のやつも一枚噛んでたとはな」


 余裕な態度でタバコをふかす銀髪の男の登場に、トーレは苦虫を潰したような表情を浮かべている。

「お前は……!政府軍のラルト・ローズ……!」


 銀河中央政府軍の中佐。

 各星に設置されている地方政府軍の階級持ちとは桁違いの戦力。


 その中でも【獄炎(ごくえん)】の二つ名で知られる彼は、現場執行能力が高い若い軍人としても有名だった。


「さて……」


 ローズ中佐はスーツの内ポケットから茶封筒を取り出した。



「逮捕状だ。朱種(しゅしゅ)五級手配犯としてのな」


 ローズ中佐は茶封筒から折りたたまれた紙面を取り出すと、封筒をポケットへと戻す。

 そして畳まれた紙面を広げて、上下を持ってパンッと伸ばした。


「アルコ・トーレ、お前には強盗で央星(おうせい)中央裁判所から逮捕状が出てる。いいかぁ?今から逮捕状読み上げるぞー?」


「被疑者は、医星貧民街区在住の氏名不詳複数名と共謀の……っとぉ!!」


 ローズ中佐は顔面目掛けて飛んできた氷塊を焼き払った。

「読んでるときに攻撃してくんなよ」


「もう邪魔すんなよ。………で、共謀の上、同星………っておい!飛ばすなって!」

 中佐が読み始めたところでトーレは再度氷塊を放つが、軽く避けられてしまう。


「ふぅ………まぁいいや。逮捕手続書になんて書くかな。あ、あとお前、軍務執行妨害もつくからな!」


「このっ……!!」

 ヴィスタがローズ中佐に攻撃しようとした時だった。


 ローズ中佐が手を掲げると、ヴィスタの周りを円状に炎の壁が囲む。

「お嬢さん、あんた無理に突っ切ろうとすんなよ」


「俺の炎はちょっとやそっとじゃ消えないからな。身体に巻き付いてる荊ともども燃え尽きんぞ」


「くっ……」

 ヴィスタは炎の壁を前に動きが止まる。


「さて、じゃぁトーレの野郎を捕まえるか」

 ローズ中佐は“いっちょやってやるか”と言わんばかりに腕や首を回している。

「いいか、俺がアイツの氷塊に火球をぶつける。その瞬間必ずスキができるはずだ。その隙にお前らで制圧してくれ」

 ローズ中佐に応えるようにプラズマが前へと歩み出る。

「ならその隙に俺が突っ込む」


「突っ込むってそんな体当たりレベルでいけるわけねぇだろ!」

 ローズ中佐は声を上げるが、バリスが説明する。

「大丈夫だ。コイツは電撃を纏って高速で突撃できる。相手をのすことくらいはできるはずだ」


「まぁ、なんとかなるか……じゃぁいくぞ!!」



 ローズ中佐は合図も無しにすぐ様複合煉術(れんじゅつ)を放った。

轟唱(ごうしょう)焔填火球(えんてんかきゅう)!!」


 その後すぐにバリスがトーレに向かって火唱(かしょう)を使用し、小火球を放つが躱されてしまう。


「その程度の火球で体勢を崩せるとでも思ったか!!舐めおって!!」

 バリスの火唱を躱したトーレは、ローズ中佐の攻撃に対応するように氷塊で迎撃する。


 そして爆風を起こしながら2人の攻撃が相殺されたと同時にプラズマがトーレの眼前へと迫った。

 トーレが氷でプラズマを迎撃しようとするが……


「腕…が…動か……」


 トーレは腕を上げることができないどころか、呂律も回らなくなっていた。

 その瞬間、プラズマの背後に見えるバリスが笑みを浮かべているのが目に入る。

「10秒も吸い込めば効くような即効性の麻痺毒だ。」


「(くそっ、最初の火唱は躱した先にあった毒に当てたものだったか……!)」

 すでに言葉を発することすらできなくなったトーレはその場に倒れ込んだ。


 ローズ中佐がヴィスタを取り囲んでいた炎の壁を解除すると、彼女はその中心で倒れていた。


「しまった、酸欠になっちまったか!」


 倒れるヴィスタの元にバリスが駆け寄り、脈を確認した。

「ヴィスタ!!」


「……ん……」

 倒れてから間もなかったからか彼女に意識はあるようだった。



 その様子を見て一安心したローズ中佐は倒れるヴィスタの元へ歩みよった。

「さて……」


「ちょっと待て……!」


「心配すんな。とりあえずこの医者の()をしょっぴくつもりはねぇ」


「この娘は、“トーレにさらわれて人質にされてたところ、飲まされた薬で遺伝子能力に目覚めて、助けに来たお前らとの戦闘に巻き込まれた”んだろ?」


「軍上層部はどう考えてんのかは知らねぇが、正直俺はこの星の貧民街区の扱いには疑問しかない」


「貧民街区の奴らは元医者やその家族だろ?」


「二大病院のやり方に背いた者、告発しようとした者、弱者に味方しようとした者……そういう奴らをクビにして貧民街区でしか生きられないようにする」


「で、特殊な毒を持った昆虫やらをばら撒いて消せば万事解決だからな」



「あとはこっちでトーレから特殊な毒を生成してる奴らを手繰(たぐ)れるかどうかだ。」

 ローズ中佐はそう言い、トーレの方に振り向くが、すでにその姿はなかった。


「うわ、やべっ!!逃しちまった!やらかした」

 麻痺して動けないと油断していたのが仇となった。

 組織的な犯行である可能性が高く、仲間が助けにくることも考えておくべきだった。


「怒られっかなぁ……」


「まぁ……そこのお嬢さんを救護してる間に逃げられたことにするか」


 ローズ中佐は“しまった”と頭を掻いた後、逮捕状を封筒に入れると、救急に通報した。


 程なくして、救急車や警察車両のサイレンがけたたましく鳴り始める。




「ヴィスタ……」


 バリスは自分の無力さに憤りながらも、倒れる彼女の手を握ることしかできなかった。




 To be continued.....



【EXTRA STORY】



「くそっ……!」


「こんなはずでは……!!政府軍の犬め…!」


「だが……最低限はクリアできた……」


「あとは、パイカがなんと言うか……」


「最悪皇帝に助けを……」



To be continued to next EXTRA STORY.....?

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