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執念

21. 執念

次回の公安委員会開催の日、飯村が県警本部にやってくる。いよいよ次の「取り調べの日」が決まった。表向きは県警三島本部長同席での飯村晃公安委員長への捜査状況報告だ。あくまでも公安委員長の立場を尊重し、配慮した結果だ。


その前日、三島、村井、織田、蝶々の4名で事前の打ち合わせが行われた。飯村の当日のアリバイについては、タカラジェンヌの3人のホステスの証言により、飯村は日中はゴルフをしていたことが分かった。肝心なのは、そのあとのアリバイだ。本人は自宅に帰ったというが、ゴルフを終えた後、どちらに向かったのか。タカラジェンヌの天海みき、真矢ジュン、檀ひとみの3人の証言によると、飯村は一人で運転して帰ったということから、蝶々刑事が数日かかって、周辺の高速道路に設置されたNシステムを調べた。東海環状、東名高速道路、新東名、知多半島道路に備え付けのNシステムすべてを調べた。5月12日の夕方6時以降、どこを走行していたか。その結果をもって、ヒアリングに臨もうとしたのだ。蝶々は知多半島道路の常滑インター付近のNシステムに飯村が運転する姿を発見した。鮮明な映像で白髪頭が映っている。時刻は19:18だ。

 三島本部長の一声で、直々に事前打ち合わせのまとめに入った。ホワイトボードに5点を並べて書いた。「これまでに分かっていることは、1に、新舞子海岸で蝶々刑事が見つけたカヤックの破損したオールから伊勢氏のDNAがでたこと。これにより伊勢氏の死は事故ではなく、事件だということ。凶器が見つかったということだ。2つ目に、同夜、同海岸でカヤックに乗った白髪の男性を複数の漁師が見たという目撃情報。3つ目に、セントレア常滑マリーナの駐車場から出てきた自動車とこれを運転していた白髪の男性という目撃情報、4つ目に新舞子海岸で自転車の盗難事件があり、その後、セントレア常滑マリーナ近くの公園にこの自転車が放置されていたということ。それに、5番目は、今回分かったNシステムに映った飯村氏ということだ。」三島が続けた。「確かに飯村委員長がくさい。だが、いずれも状況証拠ばかりと思う。目撃されている白髪頭の男性が飯村委員長であるかどうかがはっきりしない。また、飯村委員長が伊勢氏のボートに同船していたこともはっきりしない。ましてや沖に出てオールで伊勢氏を殴ったことも突き落としたことも私たちの想像にすぎない。残念だが、委員長が犯人だと示す決定的なものは何もない。」織田刑事が「本部長はそれで諦めるんですか?」と大声で言った。「そうではない。蝶々さんの粘りで、事故でなく、事件であることは明らかになった。事故で処理してしまった私たちのミスを取り返すことができたことに感謝するよ。」三島が更に続けた。「しかし、明日のヒアリングで、先に言った5点を突き付けても、委員長が否定したら、帰ってもらうより仕方がない。」更に、三島が根拠を述べた。「1.はオールのことなど知らない、2.の漁師が見たカヤックにのる白髪の男は自分でないと否定する。3.も同じだ。運転していたのは自分じゃないし、自分の車ではない。4.の自転車泥棒のことなど全く知らんと言うだろう。最後のNシステムの映像は確かに自分だと認めるだろうが、高速道路を走っていることが伊勢氏のボートに乗ったことにはならないのだ。残念ながら。ましてや殺人にはつながらない。」織田も蝶々も三島本部長の言うことは確かにそのとおりで、すべて否定されたらどうしようもないと頭を抱えた。最後に三島が「現状では逮捕状はとれない。いいね。」と言うと不承不承ながら皆、本部長に同意した。


月例の公安委員会終了後、三島本部長が委員長を別室に誘った。「委員長、その後の伊勢さんの件でお話があります。こちらにお願いします。」「三島君、何だね、急に何か取り調べみたいだね。」「取り調べといえばそうかもしれません。伊勢さんの死についてお伺いしたいのです。いくつか真相が判明しました。」と言って応接室に招き入れる。そこには織田と蝶々両刑事が待っていた。2人がこれまでの捜査で分かったことを説明した。伊勢氏は同船者に自分のボートの上で殴られて海に突き落とされ、頭に傷を負い、水死したこと。泳ぎの得意な伊勢氏が溺れた理由は殴られたからだと。その後、犯人はカヤックにのってボートを離れ、新舞子海岸にたどり着き、カヤックとオールを捨てて、近くで自転車を盗んで、出発地であるセントレア常滑マリーナへ戻ったこと。戻ったのは自分の車を取りに行くためと。


「君たちは、それがこの私だとう言うのかね。」飯村委員長は三島の予想どおり、すべてを否定した。「前にも話したようにその日はゴルフをしていてそのまま、自宅に帰ったよ。だから伊勢氏に会っていない。」「それではここに映っているのは誰ですか?」と蝶々がNシステムの常滑インター付近を走行中の飯村の姿を示した。余りにも鮮明な画像を見せられ、飯村はしまったと思いとっさに「そうだ、ゴルフの後、知多半島をドライブしてから帰ったんだ。」と言い訳をした。ゴルフを一緒にされた女性に話を聞いています。「委員長がゴルフ後、時間を気にしていたと。こうして常滑まで行く必要があったのですね。伊勢さんとマリーナで待ち合わせをしていたのですね。」と蝶々が追及するものの、あくまでもドライブしていたと言い張る。

次に織田が話題を変えて聞いた。「委員長はカヌーやるそうですね。」「やるけど、それがなにか?」「折り畳み式のカヤックはお持ちでないですか?」「カヤックなんてもっていないよ。カヌーはやるがカヤックはやらないよ。」と否定する。

「先ほど、ご説明したように犯人は伊勢さんを殺害後、伊勢氏のボートをそのまま沖に放置して、カヤックに乗って、新舞子海岸まで来て、自転車を盗み、それでセントレア常滑マリーナの近くの公園まで行き、マリーナの駐車場においてある自動車を取りに行っています。カヤックは折り畳み式のコンパクトなものがありそれを使いました。そこまで面倒なことをしたのは伊勢氏が一人で海に落ちて水死したと偽装するためです。」と織田が追及を続ける。「ドライブしていただけでマリーナなど行っていないし、伊勢さんにも会っていない。カヤックも持っていないよ。」と飯村は強く否定する。今度は蝶々が「同夜、マリーナからでてくる車をみた人がいるのですが、委員長ではないですか?」と追及する。「行っていないと言っているではないか。」とまたまた否定する。「白髪頭の男性が運転していたという目撃者がいるのですが。」「私は知らんよ。ただ、高速道路をドライブしていたのだ。髪の白い人間は何人もいる。三島本部長だって白髪だろ。」と強く否定する。「あくまでも伊勢さんには会っていない。彼のボートにも乗っていないとおっしゃるのですね。」「そうだ。これ以上聞きたいなら、弁護士を呼べ。」とまで言い出した。三島本部長に向かって、「これは任意の捜査だよね。帰らせてもらうよ。これ以上は逮捕状をとってからにしてくれ。」とまで言い出した。三島が確かに今日はこれ以上は無理かもしれないと感じていた。事前の打ち合わせどおり、悪い方向になろうとしていた。



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