( かくれんぼ )
夏のホラー2021応募に書いてみましたが、ホラーになってません。
「みっちゃーん、晩ご飯の仕度すむまでコウちゃんと遊んでてくれるー」
台所から母の声が聞こえる。学校の図書館で借りてきた『お花畑の名探偵』を読もうと、ちょうど居間のテーブルに腰掛けたところだったが、しかたない。近頃の母はコウジのことが最優先なので、コウジの相手を嫌がると不当に叱られてしまう。
「……はーい」
気の乗らない返事をして奥の和室に向かう。
コウジは6つ年下の弟だ。誕生日が5月だったはずだから4才になったばかりだ。家族がいうにはコウジは天才なのだそうだ。3才にして、十二支の動物名を暗唱したり、母のスマホを操作してお気に入りの動画を再生したり、父のキーボードで『カエルの歌』の出だしのワンフレーズを演奏してみたりと、コウジはその才能を遺憾なく発揮して、周りの大人たちのハートをがっちりと掴むことに成功していた。
コウジへの期待と裏腹に私の扱いは軽くなっていく。そんなことに気付きながらも、私は優しいお姉ちゃんでいることに腐心していた。これ以上株を下げるわけにはいかない。
和室に入るとコウジはブロック型知育玩具で凱旋門風のオブジェを組み立てているところだった。
「あ!みっちゃんだ! ……みっちゃんなーに?」
組み立てるのに夢中だったのか、和室に入ってきた私に気が付いてなかったようだ。コウちゃんはちょっと驚いたようすで私を見て、手を止めた。
「――コウちゃんなにしてるかなぁってみにきたんだけど……
コウちゃんブロックつくってるんだったら、そのままつづきつくってていいよ」
「えー、ブロックよりかくれんぼしたい!」
目まぐるしく表情を変えながら、コウジがたどり着いた希望はかくれんぼだった。
どうやら凱旋門をほっぽらかして、私と遊ぶ気満々のようだ。もしかしたら、おとなしく一人遊びをするコウジの隣で私も読書ができるかもという妄想は打ち砕かれた。
「――かくれんぼかぁ。……コウちゃん、かくれる? それか、オニやる?」
コウジはいつも隠れるほうを選ぶ。鬼を順番で決めてもじゃんけんで決めても、コウジは結局隠れる側にまわるのだけど、一応聞いてみる。
「……んと、コウちゃんがオニで、みっちゃんかくれるほう。」
珍しくコウジが鬼をやるという。コウジが鬼になるのは何度目だろう。というか、コウジにまともな鬼は務まらない。コウジが鬼をやるときは、そこそこのタイミングで物音を立てたり、ちょっとはみ出したりしてヒントを出さなければならない。まあ、見え見えで隠れたつもりのコウジを見つけずに時間を過ごすのとどっちもどっちだから、気遣いに大差はない。
「ん…オッケー。おねえちゃんかくれるほうね。
コウちゃんはママのところまでいって、10、ううん、20かぞえたらもどってきてね。そのあいだにかくれているから、みつけてね。」
「うん、わかった!」
「じゃあ、いい? よーい、ドン!」
コウジが笑顔で台所へと駆け出してかくれんぼが始まる。
私は、『私が鬼になったとき、コウジが隠れているだろう押し入れの襖を開ける』イメージをひっくり返しにして、自分が押し入れに隠れることにした。
さっそく押し入れを開けてみるが、いろんなものがぎっしりだ。下の段は整理ダンスと衣装ケースが積み上がっているので体を入れるスペースがない。上の段の布団を押しのけようとして、布団の間に潜り込むことを思いついた。
上から2枚目の布団の端を少しめくって腕を差し込む。布団はひんやりと気持ちよかった。そのまま布団の冷たさを感じていたかったが、早くしないとコウジが戻ってくる。腕を布団から引き抜くと、上の段に足をかけて乗り上がる。襖を、少し隙間を残して閉め、先ほどの布団の間にもぞもぞと体をくねらせて潜り込むと、顔の前に呼吸する隙間を作って息を潜める。
真っ暗で、布団の冷たさと柔らかさが心地よくて、かくれんぼの緊張感が薄れていく。
そろそろコウジは和室に戻っているだろうか。座卓と床の間と押し入れしかない和室で、押し入れの襖が少し開いているのだから、まず開けてみるのが普通だ。確信を持って襖を開いて、そこにいるはずの私がいないときにコウジはどうするだろう。布団を叩いてみるだろうか。押し入れの中を見回して何か声をかけるだろうか。
どのタイミングで出て行こうかと思案しているものの、襖が開く気配がない。ないが、今動くわけにはいかない。コウジの一枚上をいかなければならない。妙なプレッシャーを感じながら、真っ暗な布団の中で身じろぎもせずに時間だけが流れていく。
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「ねぇ、引っ越しどうする?
ミハルの中学をどうするかもあるし、コウジは小学校に上がったばかりだけど、時期的にはここ2年以内に方針というか目途をつけときたいんだけど……」
「――そうだなぁ。ミハルが中学に上がるタイミングがいいんだよなぁ… ここの友だちと離れることになるんだったら、受験させて心機一転のほうがダメージ少なそうだな…… コウジは……、コウジはどうとでもなるか…」
頭が痛いと言わんばかりに、読んでいた新聞を無造作にたたんで、コーヒーを啜る。里山を造成してできた住宅地はどん詰まりで閉鎖的で、決して便利な生活環境ではなくなっている。
「新興住宅地っていっても、30年も過ぎると寂れちゃうのね。」
「――そう言うなって。親父が買って引っ越して来たときは活気あったんだぜ。学校のクラスも8組まであって、スーパーが3つも競合してて、バスプラザも今とは比べ物にならないほど賑やかだったんだぞ。」
寂れているのは事実なので否定はせず、子どもの頃の思い出に縋る。
「――結局、駅が来なかったからダメになったってこと?」
「そういうこと。悪循環だよなぁ… 川向うに大型スーパーができたけど駅はなし。近所の店は次々閉店。車が使えなきゃ生活できない。子ども世代が引き継いでるのってうちを含めて数軒だけだもんな。先行き考えたら引っ越しだけど、今更買い手がつくんだろうか…」
去年亡くなった父によると、この町は地元の鉄道会社がターミナルから新線を伸ばして駅を作るという触れ込みで開発したのだが、オイルショックやいろいろあって新線の計画が頓挫したらしい。結局、鉄道の新線ができたら3駅で5分だったはずのターミナルに出るのに、マイカーだと10分ほどだが、バスだと遠回りするため小1時間もかかる羽目になっている。
住民の高齢化も進み、子どもの数は目に見えて減っている。小学校の6年生は4クラスあるものの、ミハルの学年はかろうじて2クラスで、あと2、3年経つと1クラスになるといわれている。中学校は隣町の中学校に統合され、通学に時間がかかる。自転車通学も認められているが、帰りは上り坂になるので大変だ。
コウジができたときに、子育ての環境を一新したいとか、家計を軽減したいなどの総合的な判断で両親との同居を始めた。思惑通り育児を両親に手伝ってもらい、都市部のマンションに比べると圧倒的に広い住居に満足していた。オレの通勤時間だけを除いて。
ところがこの4、5年で街の活気はみるみるうちに減退した。そして2年前に母が、母を追うように去年父が亡くなった。単世帯になったこともあり、不便さが勝ってきたこの土地での生活を考え直している。
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暑くて息苦しさを覚えた。
「ん… あっつ …?」
目は開いているが、真っ暗だ。少しぼんやりした頭が現状を理解するのに時間はかからなかった。
(……そうだ。コウジとかくれんぼしてたんだ…)
コウジが探しに来るのを待つ少しの間につい寝てしまったようだ。気持ちよかった布団の感触が、もはや不快に感じられるほどだ。寝ていたのは一瞬ではない。5分? 10分? 15分? さすがに30分以上ということはないだろう。
(……あ、コウジどうしてるんだろ? まだ探しているのかな?)
意識が飛んでいた時間感覚が不明瞭な上、外の状況がわからない。かくれんぼも気になるけど布団の中が暑くてかなわない。一生懸命に鬼をやってるコウジには悪いが、いったん外に出て新鮮な空気が吸いたい。
もぐりこんだのと逆の動きで布団の中から這い出して、襖を開けて澱んだ空気から解放される。思いっきり深呼吸をして、ざっと見渡した和室にコウジはいない。
「コウちゃーん、ちょっときゅうけいしない?」
少し大きめの声でどこかにいるだろうコウジに呼びかける。
(……? 返事がない…)
隣の居間にいたら聞こえるはずだ。台所だと聞こえにくいかもしれない。コウジを探して和室から居間を通って台所に向かうが、いない。しかも、夕飯の支度をしているはずの母も見当たらないし、何より夕飯なんて影も形もない。
(……どういうこと? わけわかんない…)
台所は片付けが終わっているかのように何もない。そういえば、和室にもコウジが作りかけていた凱旋門が見当たらなかった。居間に戻ってみると、テーブルの上に置きっぱなしだったはずの『お花畑の名探偵』もなくなっていた。
(……静かだ……)
「っ! お母さん! どこっ! コウちゃん!」
心細くなって大きな声を出してみたものの、誰かがいる気配が感じられない。
不安を押し殺して、現状にふさわしい仮説を立ててみる。論理的に考えることで、どうにか自分を納得させたかった。
――私が押し入れに入っていることに気付かなくて、お母さんもコウジも私を探しに行ったんだ。コウジはかくれんぼをしていることすら忘れてしまっているかもしれない。
きっとそうに違いない。みんなが慌てているところに『どうかしたの』と平然と現れる自分を思い描いて、泣きたくなるのをぐっと堪える。
いつも鍵がかかっている父の書斎以外は、2階の部屋も全部見た。風呂場もトイレも見た。本当に誰もいない。こうなったら外に出たと考えるしかない。このまま家で待っていようかとも考えたが、ちょっとだけ外に出てみることにした。
「えっ?! あれ? 今何時?」
思わず声に出た。外はまぶしいほどの明るさだった。照り付ける太陽の方向から午前中、10時頃に違いない。
夕方だったはずだ。かくれんぼを始めてから一晩たってしまったのか? そんなに長い時間布団の間で寝ていたのか? 誰も気付かなかったんだろうか。いや、私がいないことに気付いたから探し回っているに違いない。
これは大事になった。もしかしたら警察に捜索願とか出されているかもしれない。一刻も早く、自分がここにいることを知らせなければならない。
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「次に行くところはミハルの通学も考えないとダメねー。」
「――私立なら電車通学も覚悟しなきゃだぞ。さすがに都心には住めないからな。」
「――どっちにしても一軒家は難しそうね。またマンション暮らしかぁ…」
「オレはマンションでも構わないけど?」
「……そだね、広くていんだけど、その分掃除も大変だし、一軒家って。」
2丁目の佐藤さんが家を売って引っ越した。2丁目の区画はここと同時期の分譲だが、2丁目のほうがバス停に近いから条件はいいはずだ。ところが聞くところによると、建物の資産価値は0に等しく、更地としての条件交渉だったらしい。つまり、土地の買値から建物の解体費用を差し引いた金額を提示され、どうしてもというなら買い取りましょうと、買い叩かれたということだった。
いくら未練は無いとはいえ、親父が苦労して手に入れた家だ。買い叩かれるというのはさすがに心苦しい。確かに現状のままだと発展の気配もない地域だが、それでも子どもたちのうちの誰かが所帯を持つときの選択肢の一つになるかもしれない。どうせ売れないなら空き家のままで、更地よりは安い税金を維持費と考えて、ここは売らずに賃貸マンションを探して引っ越しという方向で決着しそうだ。
「引っ越して、コウジが学校に行くようになったら、私もまた勤めに出ようかな。」
「え?なに、…そんなこと考えてるの?」
「だって、家賃もかかるようになるし、ミハルがほんとに私立にいったら、それはそれで物入りだろうしね。」
すでに転居後の生活を考えているようだが、このタイミングで『お気楽だね』などとツッコミをいれると機嫌が悪くなるから黙っている。ここを離れてしまいたいという気持ちもわかる。
ミハルに受験させるなら本人の能力も把握して進学候補を見繕わなければならない。ミハルは体が丈夫じゃないので無理のない範囲で、のんびり過ごせる学校がいい。
自分の通勤のこともあるから沿線は重要だ。駅に近いと家賃が高いだろうから、徒歩15分圏内を目安にしよう。駅まで行くのに車が必須となると、今と同じく不便な環境になりかねない。
今の家が高く売れたら悩みも減るのだろうが、そもそも高い価値があるほど利便性がよいのなら転居は考えない。考え始めると同じ高さをぐるぐる回り始め、一向に解決には向かわない。
「週末にさ、いくつか下見を兼ねて物色してみないか?」
具体的なイメージを持つことは大事だし、相場を把握しておきたい。電車に乗って、いくつかの駅で降りてみよう。その街の、空気感が分かれば具体的に計画を進められそうな気がした。
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玄関を出て、道に出る。いつものことだが、誰も歩いてはいない。このあたりで小学生の子どもがいるのはうちを合わせて10軒ほど。子どもは1丁目や2丁目にはたくさん住んでいるけど、中学生は急に減るみたいだ。2年前に中学校が合併になって通学が不便になったのが原因で、子どもが中学に上がるときに引っ越しする家が多い。高校生はたくさんいるけど、大学生はみんな都心に出てしまうので全然いない。
まずは学校に行くことにする。先生に相談しているかもしれないし、先生に会えれば母のケイタイに連絡してもらえるだろう。
出かけようとして気付いた。私が外にいる間に母か、父が帰ってきたらすれ違いになってしまう。私がちゃんといること、学校へ向かうことを書置きに残しておくことにする。
―― おかあさんをさがしに 今から学校へ行きます。すぐ帰ります。㋯ ――
学校まではバスプラザの中を通り抜けると近道だ。普段の通学では中を通ってはいけないと言われているが、今は緊急事態だからしかたない。
バスプラザはターミナルに行くバスの終点で、バス停の隣に20ほどの商店が集まっているショッピングモールだ。このあたりで一番賑やかな場所で、徒歩での買い物はパスプラザくらいしか行くところがない。スーパーマーケットもバスプラザにあるので、一人でお遣いに行くこともある。
(……?!)
バスプラザがおかしい。いつの間にか新しいお店が増えている。看板もきれいになっているから、知らない間に改装をしたんだろうか。全然気が付かなかった。父も母もそんなことは言ってなかった。でも、お店が増えるのはいいことだ。どんな店ができたのか、自分の置かれている状況を忘れて、ちょっとだけバスプラザのようすを窺ってみたくなった。
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土曜の午後、急行も停車する駅のホームに降り立つ。同じ沿線なのに賑わいが桁違いだ。駅前には2つの商業モールがあって、駅の建物とは陸橋でつながっている。土曜なのに陸橋の上の人がまばらなのは、日差しのせいだろう。商業モールに入ると躍動する世界が展開する。カフェにはSNS映えのする氷菓を楽しむ若者が溢れ、家電量販店の扇風機売り場の前には涼を求める部活帰りの高校生、フードコートには同世代の家族連れが席を探して右往左往している。高齢化エリアからやってきた我々にはまばゆいほどの光景だ。
「いい街じゃない、若い人が多くて! ここならミハルもコウジも楽しく過ごせそう! すぐにでも住みたいわ!」
駅前の商業施設だけで判断されても困る。ここにいる人がすべて地元の住民とは限らない。むしろ、我々のように他の地域から集まってきていると考える方が普通だ。しかも、都会の喧噪を脱して穏やかな環境で育児がしたいと両親との同居に積極的だった人と同一人物の言とは思えない。
「とりあえずバスに乗って東通りのほうまで行ってみようよ。それから、柳町から城東町あたりを歩いてみよう。」
インターネットのマップを使って、ファミリータイプのマンションが多いエリアについて凡その下調べはしてある。街の活気に中てられてはしゃいでいるところに水を差すようだが、時間も限られている。
「そうね、さっさと行きましょ! マンションもだけど、コウジが通うことになる学校も見ておきたいわ!」
「え? 学校は次でもいいんじゃないか? まだこの地域に決まったわけじゃないんだぞ。」
すでに気持ちが盛り上がってしまい、何を言っても聞きそうにない。最初の視察をこの街にしたのはオレの希望でもあるから、よい物件があればファイナルアンサーでも問題はないが。
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バスプラザのスーパーマーケットは見違えるようにきれいになっている。幟がたくさん立って、特売ポスターもいっぱい貼ってある。ケーキ屋さんもくすんでいた壁を真っ白に塗り直したようだ。シャッターが降りたままだったところにおもちゃ屋さんができている。どんな店だろうと気にかかり、“ド・レ・ミ”と書かれたガラスのドア越しに中を覗いていると背後から声をかけられた。
「おや、学校どうしたの? 見かけないけど、どこの子だい?」
“おもちゃのドレミ”とプリントされたかわいらしいエプロンをつけたおばさんが掃除道具を持って立っていた。
「あ… こんにちは。えっと、弟とお母さんがいなくなって、それでお母さんを探していて…」
そこまで言うと、おばさんはちょっと緊張した面持ちになって、言葉が遮られた。
「あれれ、迷子ちゃんか! どこから来たの? 住所言える?」
「……あの、3丁目の笹賀です。……学校に行く途中で…」
またしてもおばさんの顔色が変わった。
「おや? 笹賀さんとこの子かい。そりゃあ気付かなくってごめんよ。笹賀さんとこお嬢ちゃんもいたんだね。」
どうやら私はコウジより影がうすいらしい。
「けど変だねぇ。お母さん,お里に帰るって、大きな荷物下げて…。昨日そこのところで挨拶したんだけどねぇ…」
お母さんのお里ってことはおばあちゃんのところだろう。そんな話は聞いていないし、昨日は家にいて夕飯の準備をしてくれていた。
いや、昨日じゃないのかも知れない。私が布団の中で寝ていたのは丸々2日だってこともある。でも、私が丸々2日寝ていたとしても、私をほったらかしておばあちゃんのところに帰ったりするだろうか。
いやいや、散々探してどうしても見つからないから、私が家出しておばあちゃんのところに行ったと勘違いしたのかもしれない。おばあちゃんのところまではターミナルから電車に乗って30分ほどの距離で、私は今年のお正月に一人でおばあちゃんのところへ行ったこともある。でもわざわざ里帰りなんて大げさな荷物を持っていくはずがないんだけど。
いずれにせよ、わからないことが多すぎる中で、母の行動が分かったのは僥倖だ。おばさんは何も言わなかったが、コウジも一緒だろう。昨日行って、向こうに私がいないことがわかったら1泊して今日中には帰ってくるだろう。
父も会社だろうから、夕方にはみんなそろって一安心できるという未来が見えた。
それならゆっくりバスプラザを見学しよう。学校にも行ってみた方がいいだろう。
私の行動は決まった。
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「とりあえず、生活に必要なものだけ荷造りすればいいからな。」
今の家を残したままの引っ越しだから、当面使わないものは置いておける。親父が残してくれた一戸建ては、巨大な物置になることが決定した。
「わかってるけど、最低限っていっても結構あるのよ。――子どもたちの学用品だけでもダンボール1つじゃ足りないもの。」
「じゃあ、明日2往復して、明後日もう1往復するよ。大きなものは先に運んでおけば、明日の午後はオレ1人で積み込みできるだろ。」
「そうね。お願いするわ。向こうに運び込んだら、子どもたちと一緒に片づけを始めてるわ。」
「衣類とか軽いものを置いといてくれたらいいよ。夏物はどうせすぐには着ないだろ。」
「――そうなんだけどね… そこそこ近いとはいえ、使いたいときに無いっていうのもストレスになりそうだから、どうしても嵩張っちゃうわ。」
ミハルの進学先が決まったことで、長い間思案していた引っ越しも決まった。決断までに時間がかかったけど、蓋を開ければ一番最初に見に行った街で紹介された物件だ。3LDKの間取りは標準的で、対面キッチンや床暖房など設備はそこそこ新しい。
コウジの転校手続きも完了し、4月からの新しい生活に備えて、いよいよ家財の移動をスタートした。
ミハルは中高一貫の私立に合格した。合格といってもこの学校は競争率があってないようなものだ。さらに上位の学校に受かった子がごっそり抜ける分を見越して、実際の定員の3倍近い人数が合格通知を手にする。難関大学には縁がないだろうが、中学高校の6年間をゆったりと過ごしてくれたらいい。
コウジは小学校途中の転校になったが、1クラスだけの学年では刺激も薄く、交友関係も馴れ合いになってしまいそうで心配だった。友だちといっても小学校に入ってからの子がほとんどなので特に未練はなかったようで、新しい学校に向けて期待と不安が渦巻いているようだ。
オレも急行が使えるのでドア・トゥ・ドアで30分通勤時間が短くなる。毎朝の30分は大きい。それだけでも引っ越した値打ちがあるというものだ。
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怪訝な表情を崩さない『ドレミ』のおばさんを、夕方には父が仕事から帰ってくると説得し、心配かけたとお礼を述べてその場を離れた。
まだ午前中なので、開いているお店はスーパーマーケットくらいのものだ。スーパーマーケットやクリーニング屋、タバコ屋や喫茶店など以前からのお店のほかに、おもちゃ屋、電気屋、眼鏡屋、花屋、自転車屋などなど、いくつかの店が増えたり、入れ替わったりしている。
おもちゃのドレミで見かけた『ゲームボーイ』というのは新しいゲーム機だろう。電気屋には『docomo i-モード受付中!』と、スマホの新プランらしき文字が見られる。そういえば、ドコモショップが見当たらない。
開いている店がないので、学校へ向かう。母とコウジが帰ってきたら、改めて来よう。おねだりしたら、何か買ってもらえるかもしれない。
バスプラザを抜けると学校は目の前だ。小学校の隣には元中学校だった『生涯学習センター』がある。中学校の教室を使ったカルチャーセンターだ。平日はお年寄り向けの教室が開かれているが、今日は特別なのだろうか。いつもは駐車場になっているグラウンドに中学生が集まっている。先生もいるので、何かの大会かもしれない。
小学校に着いて通用門から中に入ろうとして、とてつもない違和感に気付いて立ち止まった。通用門がまるでできたばかりのようにきれいになっている。金具もペンキもピカピカだ。
山辺小学校はもうすぐ創立30年になる。父が子どもの頃、宅地開発が進んで子どもが爆発的に増え、坂下の小学校から分かれる形で作られたそうだ。父は坂下の小学校に入学したが、卒業は山辺小学校だった。校庭の遊具などは新しくなったが、ほとんどは昔のままで、通用門はペンキが剥げてところどころが錆びていたはずだし、校舎の壁は雨水が流れた痕が黒ずんで汚くなっていた。
バスプラザどころか、学校もきれいになっている。
バスプラザには何日か覘いていなかったが、学校は毎日通っている。土日の2日間で学校がきれいになるはずがないし、きれいになった学校にいままで気付かないはずもない。
恐る恐る校舎に向かい、さらに愕然とした。
(――?! 靴箱が…、…ない…?!)
校舎の入り口には上履きに替えるために靴箱が作られている。その靴箱がない。
父が、昔は廊下も教室も土足だったと言っていたことが頭をかすめた。
湧き上がる不安と、表しようのない恐怖が襲う。
このまま学校に入るととんでもないことに巻き込まれると直感し、学校に背を向ける。
『ドレミ』のおばさんと出くわさぬようバスプラザの横を走り抜けて、少し小高くなっている児童公園のベンチに座り込んだ。
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「コウジ、『あの家』、どうするつもり?」
父の三回忌が終って、姉のミハルとお茶を飲んでいる。『あの家』というのは子供の頃に住んでいた祖父が残してくれた家だ。僕が小学生のときに引っ越してからは、季節ごとに家財の入れ替えをするついでに、掃除や外観の手入れをしに行く“大きな物置”だった。
僕ら姉弟が独立してからは、定年した父が様子を見に行っていたようだが、建物の傷みも年々大きくなり、維持するにも限界が見えていた。
「そうだなぁ。税金もかかるしなぁ…
そもそも、引っ越しの時に売れなかったんだから、もはやどうしようもないだろな…」
「私たちが使うかもって、父さん言ってたけど、さすがにあそこで暮らす選択肢はなかったわね。隣近所も空き家と空き地ばっかりだし。お店もないし…」
「母さん説得して、処分するしかないよな。――説得できるかな?」
「説得というより、言いくるめるって感じかな。認知症進んじゃって、もうあんまりわかってないみたいよ。」
「そうだな。母さんには納得してもらおう。もう母さんも『あの家』に行くことはないだろう…」
『あの家』には両親とも拘りが強かった。祖父の代に開発された街区は、高齢化が進むとともに活気がなくなり、引っ越しを決めた頃には小学校は1学年1クラスの維持がやっとで、中学校は統合されて廃校になっていた。県道沿いに大型ショッピングモールができてからは、バスプラザも空き店舗が目立ち始め、最後まで残っていたのはスーパーマーケットと喫茶店とクリーニング屋くらいのものだった。
必然的に生活がしにくくなって引っ越したのだが、いつまでたっても父母は『あの家』を処分することはなく、最低限の手入れで維持していた。
介護施設で暮らす母は、数年前から認知症が進み、記憶の曖昧さもさることながら、さまざまな判断ができなくなっている。このところは僕たちのことも曖昧になってきたのが少し淋しく思う。
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児童公園の大きなアラカシの木がベンチに影を落としてくれている。その木陰で何が起こっているのかを考えてみる。私は押し入れの布団の中にどのくらいいたのだろう。いや、布団の中で眠ってしまっている間に何が起こったんだろう。
長い時間考えてみたが、どうしても荒唐無稽な結論しか導けない。それを否定して、はじめから考え直しても、情報が少なすぎて、堂々巡りして同じ結論に行きつく。
思案を重ねているうちに木陰は移動し、日差しが暑くなってきた。
――今のこの街は、私の住んでいる街でありながら、私の街ではない。
――ここは昔の街だ。父や祖父母が話してくれた活気があったころの街だ。そう考えると辻褄が合いそうだ。
――バスプラザの新しいお店は、新しいんじゃなくて、私が知らない頃になくなってしまった昔のお店だろう。中学校は統合される前で、父が通った中学校に違いない。そして小学校も。
――『ドレミ』のおばさんが言った「男の子」はきっと父のことだ。
だとしたら、今、この時は何年何月なんだろう。学校に行くのは怖かった。バスプラザもさっきみたいに誰かに会って声をかけられるかもしれない。やはり一度家に戻って、そこで事態を見守るのが一番安全な選択だろう。家にはテレビもあるし、新聞もある。少なくとも、今がいつなのかがわかる。
そう結論づけたところで空が急に暗くなってきた。昼過ぎ、2時にはなっていないだろうから、早目の夕立かもしれない。雨宿りをするならバスプラザが近いが、思い切って家に帰ることにする。
児童公園から自宅に向かう方角の空には、重苦しい気分をさらに増幅させるように、黒い雲が低く垂れこめていた。
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「……あの家は、……置いとかないといけないよ。たった一つの目印だからね…」
そのとき、いつもはぼんやりした母の目に力が戻り、一言だけつぶやいたあと、母は涙をこぼした。
どういう意味だろう。つぶやきには力があった。意志が感じられた。『目印』ってなんだ? そこまで『あの家』にこだわる理由は何だ?
「母さん、あの家、どうしてそんなに大事なんかな? 理由、聞いてもいいかな? 話せる?」
「…………」
母は項垂れ、動かない。次に顔を上げたとき、母の目に宿っていた光は消え、いつもの母に戻っていた。
「――で? 結局処分するって話にはならなかったのね?」
「――そ。『あの家』の話をし始めたら、急にまともっぽく戻ってさ、処分せずに置いといてほしいってことだった。」
「――そうなのかぁ…、父さんもけっこう拘ってたからね…。私の目の黒いうちは、ってヤツかな。」
「――あ、そうだ。『目印』ってなんだと思う? 母さんが最後に言ったんだよ。『たった一つの目印だ』って。」
「――『目印』? なんだろ? 人生の、とかかな? 『ここで暮らしてましたー』みたいな…?」
「――『ここで暮らしてました』か… そんな感傷的なことに何年も縛られているとは思えないけどなぁ。税金だけでいくら払ってるんだってこと。そもそも現実主義的な二人がやることじゃないと思うなぁ…
――ま、どうするかの結論は置いといて、一度不動産屋に相談してみるよ。処分するのにこちらが出費しないといけないかもだし。どのくらい取られるのか、それが心配だよ。」
「――とりあえず現状維持ってことね。了解。状況変わったら連絡してよ。じゃね。」
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家にたどり着く前に雨に降られた。間に合わなかった。お気に入りのTシャツを容赦なくずぶ濡れにした雨は、家まであと少しのところで止んだ。こんなことならバスプラザに行っておけばよかったと思っても後の祭りだ。早く着替えないと風邪を引いてしまう。
2階の子ども部屋に着替えを取りに行く。家の中は電灯をつけていないと薄暗いのでわからなかったが、廊下や階段も傷んでいない。新築とまではいかないが新しい家の感じがする。
間取りは同じだが、部屋割が違っている。子ども部屋だった部屋は勉強机も本棚もなく、昔っぽい三面鏡のドレッサーと見馴れない整理ダンスが置いてある。整理ダンスの中を見ると女性ものの衣類が入っている。自分のものではないが、仕方ない。少なくともこの家にあるのなら、私の関係者のものだ。ちょっと借りるけど盗むわけじゃない。
整理ダンスから取り出したのは真っ白な無地のTシャツ。着てみると大人サイスでやけに大きい。ワンピースのようになった。スカートもビショビショで脱いでしまったのでちょうどよかったかもしれない。
去年の夏、母に買ってもらった大きなひまわりがプリントされたTシャツはお気に入りの1着だ。ずぶ濡れだが、無造作に絞ると皺がつきそうだったので和室に広げておいた。
新聞を探すが見当たらない。壁にかけてあるはずのカレンダーもない。途方に暮れて、居間のテーブルに腰かけた。
(ああ、そういえば、ここで『お花畑の名探偵』を読もうとしていたんだ。)
自分の家にいるはずなのに、不安はどんどん大きくなる。
このままここに居ていいのだろうか。この世界に居ていいのだろうか。この世界にいる私はどうなってしまうのだろう。
頭の中で、不安と動揺と恐怖と、少しの絶望。あまりの混乱に、私はテーブルに突っ伏した。
(……頭が痛い………胸が苦しい………もう何も考えたくない……)
椅子に腰かけて目を瞑っていると眠気が襲ってきた。
私の意識が遠のいていく。
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「このたびは、お母さまにおかれましては…… お悔み申し上げます。」
介護施設の施設長さんと最期を看てくれたお医者さんから状況の説明を受けたあとで、母の担当だった介護士さんが声をかけてくれた。
母が亡くなった。
昨日までは別段変わったことはなかったらしい。死因は『急性心筋梗塞』。ただ、年齢を考えると『老衰』といってもいいだろう。認知症を患い、父に先立たれ、最後は施設で過ごした。引き取って傍にいてやれなかったことが悔やまれるが、どうしようもなかった。今の生活の中に、認知症の母の介護を加えることはできなかった。
「お母さん、あっけなかったね。父さんの時も思ったけど…」
「姉さん、いろいろありがとう。
結局、父さんにも、母さんにも、貰いっぱなしでお返しができなかったな。」
「そんなこと言ったら、私の方こそ何もできてないよ。少なくともコウジより2年は余分にお世話になったのに……」
「……生まれたのが早いか遅いかなんて些細なことだよ…」
「……そうね、もしかしたら、父さんと母さんに一番心配かけたのって、姉さんかもしれないものね。」
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「それでは、ここにサインと印鑑、あ、実印ですね… お願いできますか。」
『あの家』を処分することになった。
あの一角は数年前までまともな値が付かず、相続の際に面倒な負債になるのを恐れて、古家の解体費用を負担してまで手放す人もいたらしい。
ところが、昨年大手企業が再開発の計画をぶち上げたことにより、そこそこの値段で土地を買収してくれることになった。今日はその最終契約だ。
「ご印鑑、ありがとうございます。これで正式な売買契約となります。7月いっぱいは出入りしていただくのはご自由ですが、8月以降は弊社の都合で建物の解体に入らせていただきます。」
「こちらこそ。御社の開発計画があってよかったです。もともとは祖父の土地ですが、もう何年も住んでいません。あの家で過ごした両親も亡くなりましたので、特に何もすることはないでしょう。」
「一帯を整地して、2年後にはアミューズメントパークができる予定です。元の土地の所有者の皆様には開業が決まった時点で優待パスをお送りすることになっていますので、ぜひお越しください。」
担当の営業マンはそう言い残して、2通ある契約書の片方を置いて帰っていった。
何もすることはないといったものの、『あの家』に置いてあるものは一度見定めておこう。父はガラクタばかりだと言っていたが、何を運び込んでいたのか知らないので、念のためだ。
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「――笹賀さん、お母さまが使っていらしたお部屋の戸棚の奥から、封筒に入ったお手紙が見つかりました。」
母が入っていた介護施設から連絡があった。母の手紙が出てきたらしい。戸棚の天板の内側にテープで貼り付けてあったので、1年近くも見つけられなかったそうだ。施設の方は遺書ではないかと言うのだが、施設に入った時点で、母の認知症は随分進んでいたので、まともに遺書が書けたとは思えない。書いたとすれば施設に入る随分前、認知症がひどくなる前だろう。となると、遺書とは考えにくい。それより不思議なことは、見つかりにくいところに封筒を貼り付けるなんてことが、あの母にできただろうか。
施設から母の手紙を引き取る日を姉のミハルに連絡して一緒に出向くことにする。もし、相続に関わることなら、姉と一緒に確認した方がいい。姉とは相続で喧嘩するような関係ではないが、念には念をだ。
「じゃあ開封するよ。」
「……うん。なんかどきどきするね。」
封筒の宛書きはミハルと僕の連名で、手紙の文字は、震えていたが、確かに父の筆跡だった。
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『あの家』の売買契約を結んだ営業マンからの電話で、あわてて『あの家』に向かった。
姉のミハルにも連絡したら、すぐに来てくれるらしい。
『あの家』は玄関を警察の黄色いテープでふさがれていた。
「この家の元の所有者です。笹賀コウジです。」
「ああ、笹賀さん。県警の飯島といいます。このたびはお呼びたてして申し訳ございません。状況が状況だけに……
あっ… すいません。とりあえず中でご確認いただけませんか。」
通されたのは1階の居間だ。居間のテーブルに座ったまま女の子は亡くなっていたそうだ。女の子は、今は和室の畳の上に寝かされ、白い布がかけられている。
県警の説明によると、その子は、白いシャツを着てテーブルに突っ伏すようにして亡くなっていた。年齢は10才前後だと思われたが、身元を示すものは何もなかった。なぜこの家で亡くなっているのかすらわからない状況だった。
僕はその人に心当たりがあった。
和室に広げられていたという、みっちゃんのお気に入りだったひまわりの花がプリントされたTシャツと、父母が遺してくれた手紙がなければ、即座に肯定できはしなかっただろう。
父が書き、母が遺した手紙を読み返し、父と母の想いが正しかったのだと強く思った。
姉は、みっちゃんは、すぐに帰ってきたんだと。
そして僕は思い出した。あの日、僕はみっちゃんとかくれんぼをしていたのだと。
姉は、みっちゃんは長い間隠れていたんだと。
「――みっちゃん、じかんかかってごめんね… やっとみつけたよ…」
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ミハル様、コウジ様
この手紙を二人が読むのは、お父さんとお母さんのどちらも亡くなってからだと思います。
ミハルとコウジはみつきのことを覚えていますか。ミハルの4つ年上のお姉さんです。我が家の長女です。あの子がいなくなったのは9才のときでした。あの頃ミハルはずっと病院にいたのでみつきのことはあまり覚えていないかもしれません。コウジもまだ幼稚園に入る前だったから記憶は薄いでしょう。
7月4日の夕方にみつきは忽然といなくなりました。そのときはお父さんもお母さんも気が狂うほど心配しました。警察にも届けましたが、家出か失踪という扱いで大々的な捜索は行われませんでした。
みつきがいなくなって6年ほど経って、私たちは柳町のマンションに引っ越しました。その時は、時期がきたらあの家を手放そうと考えていました。ところが、荷物の出し入れにあの家に行ったら、居間のテーブルの上にこの書き置きがありました。お父さんとお母さんは、みつきが戻ってきていた。そしてきっとまたこの家に帰ってくると確信しました。
あの子がどこで、どんなにして暮らしているのかはわかりません。でもこの家はみつきが戻ってくるまでそのまま置いておかなければならないと決心しました。
私たちがいなくなっても、ミハルとコウジであの家を守ってください。みつきはきっと戻ってきます。それまで、よろしくお願いします。お父さんとお母さんの最後のお願いです。
―― おかあさんをさがしに 今から学校へ行きます。すぐ帰ります。㋯ ――
物語創作は初執筆です。
プロットもなく書き始めたので、辻褄が合わないところがあるかもしれません。
文字数の割に内容は薄いです。ツメも甘くなりました。
(2021/09/02 いろいろと微修正しました)