埋まっている物
「あれ? 先輩! 先輩じゃないですか、俺ですよ、高校でよく一緒に連るんでいた」
「え? あ! お前か、久しぶりだな」
会社からの帰路、利用しているJRの駅前で高校生の頃お世話になった先輩と20年ぶりに再会した。
駅の近くの飲み屋で再会を祝う。
高校を卒業してからの事を色々語り合っていた時だった。
「お前、あの駅を利用しているんだよな?」
「はい」
「いいか、あの駅は良いけど、隣の私鉄の駅は絶対に利用するなよ」
「え、何かあるんですか?」
「埋まっているんだよ」
「人の死体とかですか?」
「人の死体くらいなら利用するな、なんて言わねえよ。
さっきも話したけど高校を卒業して就職した土建屋、あの駅の建設を請け負ったゼネコンの下請けをしていたんだけど、工期が遅れていてこれ以上の遅れは出せないって時に出ちまったんだよ」
「出たって何がです?」
「太平洋戦争中に米軍が投下した500キロ爆弾の不発弾が出た」
「不発弾が出たんですか?」
「ああ、それでだ。
普通ならここら辺一帯が封鎖され、自衛隊の不発弾処理班が来て不発弾を撤去するんだが、これ以上の遅れを出したくない現場監督の指示で、爆弾なんて出なかった見なかったって事にしてそのまま埋め戻したんだよ。
信管がついている何時爆発してもおかしくない爆弾をな。
だからあの駅は絶対に利用するな」
「嘘ですよね?」
「嘘だと思うなら利用すれば良いさ。
忠告はしたからな」
それっきり先輩と会うことは無かった。
高校生の頃、先輩に嘘をつかれそれを鵜呑みにして何度も笑われた記憶があるだけに今一つ信用出来ない。
でも最近のマンション等の手抜き工事が建設会社ぐるみで行われていたニュースを見る度に、先輩の話が一概に嘘と決め付けられないのだ。
だから俺は、娘が私鉄沿線沿いの高校に進学したいと言ったとき強硬に反対した。