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死神の操り人形  作者: カサミ
一章.操り人形と助手
6/11

6.死神の捜査

じゃあ、どうするべきなのか?

答えが出ずにいた。

容疑者一人一人に会ってみたものの進展がない。


それぞれ怪しいようで、怪しくない。

これじゃあ何もわからないで終わってしまう、

今は4月13日、

神崎さんによれば、先輩の寿命は4月の終わり、

もう時間が……。


「大丈夫だよ。」

僕の気持ちを読んだのか、そう励ます。

「だけど、このままじゃ。」

「ふっふっふ、私はもう分かったよ。」

「ふーん。」


…はっ?

「分かったってストーカーの犯人がってこと?」

…まじか。

「うん。それはね、……。」

一瞬の間、そして神崎さんが口を開く。


「笹森さんに告白したっていう、春凪さんだよ。」

…春凪さんか、なるほど。

「その心は?」

「だって春凪さん、笹森さんに告白してフラれちゃったんだよ。ストーカーになる可能性大じゃん。」


「…で?」と僕は問う。

「で、って?」

「いや、だってそれだけじゃストーカーだって証拠にならないし。動機みたいなもんじゃん。」


「そうだよ、動機だよ。動機があるじゃん。」

「ストーカーになる動機ならどこにだってあるよ。

一目惚れからのとか、隣に住んでいて気になったとか。」

「なんか詳しいね。」

と神崎さんが怪しそうに見てくる。

「推理小説にそういったものがあったんだ。」


「ふーん。」

…なんで納得してない感じなんだ?

「それよりだ。隣の家の人とか調べたのか?」

そう僕が聞くと、

「うん、てかいなかったよ。」

「いなかった?ってことは、住んでなかったってこと?」

「うん。二年前から住んでなかったらしいよ。」

「うーん、隣の人っていう考えもないか。」


「いや、隣じゃなくても近所だったらあるんじゃない?」

「ああ、確かにね。」

…でもそうなると容疑者が多い。

だから隣の人に限定していた。近所やどこかで会った人の可能性は最後に回していた。

じゃあ次に何をすべきなのだろうか?


「ねぇ、もう昼だし笹森さんの家の近くにあった喫茶店にでも行かない?」

「分かった。」

一息つこうっていう狙いだろう。


確かにそうだ。こう焦っていてはみえる範囲が狭まり真相が霧隠れしてしまう。

とかなんとかよく小説でやってるよな。


さらに笹森さんの家の近くってことは神崎さんに何か考えがあるのかも。


店に入るとすぐにいい香りが漂ってくる。

モダンな雰囲気で外国語の曲がながれている。

まあオシャレな喫茶店だこと。

高校生が来るような店なのか?ってくらいの。


若い店員さんが注文を受ける。

「コーヒーと、うーんじゃこのサンドイッチで。」

僕がそう頼むと、

「私はこのクリームソーダ、んで同じくサンドイッチで。」

と神崎さんが頼む。

店員さんが去ったあと、

「見た目によらずコーヒーなんか飲めるんだね。」

なんて言ってくる。


「見た目によらずってなんだよ。」

「だって見えて中学生だよ。高校生に見えないもん。」

…失礼な。

そんなことより、

「それでここに何の用なんだ。わざわざ笹森さんの家の近くにしたんだ。ただここに来たかっただけって訳じゃないだろ。」

そう聞いた。


「いや、来たかっただけなんだけど。」

…うそん。

「まじで?」

「だって普通に良さそうな雰囲気だったじゃん。」

「そうだけど。」


おそらく潜在意識の操作でいるのが当たり前みたいに周りからは思われているけど、

普通に学校サボってるよね?これ。


「まぁ、事件のまとめとかもしたかったんだけどね。」

「それがいいな。」

「こちらご注文のコーヒーとクリームソーダです。」

さっきとは違う四十代の店員さんが飲み物を持ってくる。


神崎さんの方にコーヒーを、僕の方にクリームソーダをおく、

…まじか。


店員さんが厨房の方に戻る。

「あははははは。」

神崎さんが馬鹿笑いしている。

店員さんにどう見られたかは知らないが、

とにかく僕がコーヒーを頼んだとは思わなかったらしい。


店員さんには非はない、非はないのだが。

恨みたくなる。


「ったく。」

飲み物を入れ替え話を始めようとするも、

「あはは、ヤバイって。」

…めちゃ笑うやん。

「そんな笑う?」

「だから言ったじゃん、コーヒー飲むのが意外なんだって。」まだ笑うか。

「もうその話はいいって。」

「うんそうだね、ふふっ。」

…まだ笑ってんじゃん。


「それで?まとめるってなにするの?さっきまとめたじゃん。」

「先生たちのことだよ。」

「春凪さんとかの?」

「そう。」


青飼 勝

体育教員であり、笹森さんや森先輩の担任。

優しい性格で生徒にも人気の先生らしい。

時には優しく時には厳しく、

THE優しい先生って感じである。


でも優しくて良い先生が実は、ていう話はよくある。


春凪 真矢

普段は森先輩のような明るい性格ではなく、おとなしい性格であることが多いらしい。

時々面白いことをしている時があるらしい。

(何かは知らないが。)

どういった経緯かはわからないものの、

笹森さんに告白をしたらしい。というかしたって言ってた。

そしてフラれたらしい。


学園ミステリーの定番な展開のように見えるものの、

告白→フラれる、というのは実際起こることでなんらおかしくない、ただ動機が濃いってだけ、

しかもミステリーじゃどっちかっていうとストーカーになるより殺人の動機になりそうである。


疑わしいのは春凪真矢、

まぁ当たり前だ、動機が濃いっていうのはなかなか疑わしい。


次々にメモ帳に書き留めていく、

注文したサンドイッチやコーヒーに目もくれず、

新しい可能性を考えていく、

だがやっぱりほとんどの可能性が春凪さんに偏っていく。


「だめだ、春凪さんがストーカーって可能性が一番高過ぎて他が思いつかない。」

僕が嘆く。


「確かにね。」

モグモグとサンドイッチを食べる神崎さん。

…神崎さんも考えてくれよ。


「あっ今お前も考えろって顔した。」

…顔に出てたか。

「あのね、死神のパペットの能力を使うにはなかなかの力とエネルギーがいるの。だから考えるのは今無理。」


…なるほどね。

今神崎さんは消費しすぎたエネルギーを回復してるのと同じってことか。

能力で思い出したが、あの学校の屋上の足跡とかってなんだろう?

関係ないのだろうか?


「それより、柚木くんなんで春凪さんがストーカーっていうのを否定する可能性を探しているの?

春凪さんがストーカーの場合だってあるでしょ。」

神崎さんが聞く。

「うん。その可能性もあるよ。てかその可能性が高い。」

「じゃあ。」

「でもね、僕には春凪さんは笹森さんについては諦めていたように感じたよ。」

と僕が言うと、

「でも柚木くんの勘は当てになるかわかんないなー。」

なんで言ってくる。

…おい。

まぁそんなこと置いといて、


「今んとこ春凪さんが一番怪しいって事でいいかな?」

僕がまとめるように言う。

「うん。いいと思う。」

怪しい人をまとめれたんだ上出来だろう。


「そういえば、屋上の足跡あったよね?」

神崎さんが思い出したように言う。

「うっうんあったな。」

「あれ、事件後のものじゃないらしいよ。」

…まじか。


「てかいつ聞いたんだ?そんな大事な情報。」

「さっきだよ。さっき。

話によると事件後フェンスの工事や、まああんな事があった後だし誰も行ってないらしい。」


「なるほどね。だから事件後のものじゃないってことか。」

となると、今回の件と関係あるのか前からあったものなのか。それともお構いなしに立ち入ったのか。

ただわかるのはあの足跡は笹森さんのじゃないってことだけか。


ストーカーの件だが、第一笹森さんをどこで見つけたか。

春凪さんなら学校で、青飼先生も同様になる。

近所の人なら通学でって可能性も。


じゃあこの写真持って聞き込みしなきゃだな。

大変だぞー。

僕は前々から貰っていた笹森さんの写真を見る。


「あっ、その子。」

僕の持っている写真を見て、若い店員さんが声を上げる。

…え?


「あの、何か知っているんですか?」

神崎さんが聞く。

「あ、いや、よくこの喫茶店に来てくれた子に似てるんだよね、その子。」

「名前、名前は知りませんか?」

「確か、笹森さん?だったかな?」

僕と神崎さんが目を合わせる。


「何か知りませんか?その子のこと。」

「うーん、そうだなぁ、そうだ。その子が来るようになった2か月後くらいによく来る人がいたよ。」

「誰ですか。」

「さあ分からない。黒ずくめだったから印象強くてね。」

…そいつだ。


「笹森さんが来るようになったのっていつくらいですか。」

神崎さんが質問する。

「だいたい10月くらいかな?」

…うーん。


「でも、黒ずくめ以外にも一回しか来てないけど、その子と話してたひとがいたよ。」

「誰ですか?」

「そうだな、青なんとか先生って言ってたな。」


…青飼先生。

青飼先生がなんで?


「じゃあ、青飼先生はストーカーの可能性が低くなったね。」神崎さんが言う。

「うっ、うん。」

「どうしたの?」

「いや、なんの話をしたんだろう。」

僕が疑問を口にする。

「たまたま先生に会ってって感じじゃない?」

…なるほど。


「なんでこんな話をしているんだい。」

若い店員さんが聞いてくる。

「ああ、いや、別にたいしたことでは。」

「別に気にしてないけどさ、君たちの様な子供が知る様なことでもないと思うけど?」と店員さんが詮索しようとする。

…にしてはベラベラ話してんじゃん。


てかこの店員潜在意識の操作できてないの?

「なあ。」

神崎さんに聞こうとすると、

「ああ、このこと?数分間話しかけると解けちゃうよ。

記憶にも残るし、また話しかけると会ったことがある

のがバレちゃうし長話はあまりいいとは言えないね。」

あっさりと答える。

…それを先に言え。

てかなに?先生や生徒は何だったんだ?

笹森さんの友達だとでも思ったのか?あんなに情報を漏らして。



―詮索してくる店員さんへの対応に困る僕を尻目に

神崎さんはサンドイッチを美味しそうに食べていた。




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