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死神の操り人形  作者: カサミ
一章.操り人形と助手
2/11

2.初めての捜査

朝起きてから学校に行く準備をしていると、制服姿の神崎さんが訪ねてきて「行くよ。」と言って急かされた。

とりあえずまずは笹森さんの通っていた高校を訪ねることにしたらしい。

学校にいかないの?と思うだろう。その通りなのである。いかなければならなかった。ほんの数秒前までは。


「学校は?」 

「休むに決まってをじゃん。」

「いや、休んだら欠席って入るじゃん。」

「別に大丈夫だって。」

「いや大丈夫じゃないでしょ。」

「じゃあ、私が一週間くらい休んでいたこと覚えてる?」

「……えっ?休んでたっけ?」

「ほら覚えてない。死神さんが記憶を操作してるんだよ。」

「嘘だろ。」

「本当だよ。ほら行くよ。」


そして今に至る。意味わからんだろ?

大丈夫です。僕にも分かりません。

今からはいわゆる聞き込みをするらしい。

と言っても簡易的なもので「何か知りませんか?」と聞く程度だ。なのであまりたいした情報は見つからない。

聞き込みを終えて唯一集めた情報は事件前の笹森さんは

疲れているのか、寝れていないのか、机に突っ伏していることが多くなったようだ。

寝れない…ストレス…いじめ?家庭環境?と考える。


すると神崎さんは「では現場を見ますか。」と言って中に入ろうとする。いやいや入っちゃダメでしょと言うと、

「大丈夫、死神さんが潜在意識を操作してるから。」

と言って聞かない。


しかしながら学校内に入っても周りはこちらに気付いてもいないようにしている。なるほど、これが潜在意識を操るってやつか。

彼女の言っていることは正しいようだ。

……いや、それはそれで怖いな。

そう考えながら屋上への階段を登る。


ドアノブを回しながらドアを押す。ドアのすぐそばにはペンキをこぼしたのかペンキだまりが乾いた状態だった。

そしてその先にはには大きな靴の跡。

これは流石に笹森さんのものではないだろう。

だとすれば一体誰の靴跡なのだろうか?

男子?教師?……分からん。


ふと前を見ると、風に髪をなびかせた神崎さんが寂しそうな面持ちで立っていた。


僕は何気なく屋上を見渡す。

あるとすれば古びた梯子、高く張り巡らされているフェンスくらいだろう。


そこで神崎さんが、

「あれ?この高さじゃ飛び降りるのには一苦労なんじゃない?」

「確かにこのフェンス1,5メートルくらいはありそうだしね。」

よく考えてみたらそうだ。

「ん?でも下らへんにサビのようなものがあるよ剥がれたものっぽいけどこれそんなにふるくないよね?」

「ほんとだてことはこれは事件後に出来たものなんだろうな。」

そんなふうに刑事ドラマのようなだな、と思っていると、


「ふふっ。」

「なんで笑ったの?」と聞くと、


「いやねフェンスが高くて柚木くんが低く見えるなって感じただけだよ。このフェンスが1.5メートルくらいだから、155センチないくらいでしょ。」

僕は「仕事しろよ仕事。」と恥ずかしく言う。

刑事ドラマみたいって思ったことが恥ずかしいわ。


「って言ってもな情報が少なすぎるんをだよね。」と神崎さんが本音を零す。

「確かにな。唯一わかったのは事件前から笹森さんは何かに悩んでいたような感じがしていたことだし。

虐められていたような情報もない、先輩が言っていたような彼氏的存在の人どころか影も形もない。彼女は母親と暮らしていて、家族トラブルは無かったらしい。未練解決が無理な気がしてきた。」と僕が言うと、

「そんなこと言わないでもうちょっと探そうよ。」

と怒られた。


しばらくすると、

「ここにいると思ったのにな。」と神崎さんが呟く。

僕はその言葉に疑問を持った。

「…どういう意味?誰がいると思ったの?」と聞くと、

「笹森さんだよ笹森さん。」と訳がわからない事を言う。


「笹森さんがいる訳がないだろ。彼女はもう亡くなったんだ。」

「ああ違う違う、笹森さんの霊だよ、もう成仏しちゃっているのかな?」いやまだ説明になってないしわからんよ。

「いやいや待ってよ、霊なんていないでしょ。見えたとしてもどうすんの?」

「話を聞く。」  「嘘だろ。」

よりによって霊に話を聞くのかよ。

「嘘じゃないよ。霊の話を聞くって言っても口寄せみたいに霊を取り込んで最期の感情を読み取るだけなんだけどね。」



…そういうのが信じられないだよ。

そんな気持ちが表に出ていたのか、

「まだ疑ってる?」と聞かれたので、

「まぁ」と答える。

「じゃあもし霊がいたら見せてあげるよ。」と自慢風に言う

でも少し疑問に思ったことがあった。

「でもさ、霊がいるなら屋上より落ちた場所じゃね?」

屋上に冷たい風が吹く。しばらくの間。そして、

「其方は天才か?」と神崎さんは言う。

……いや普通だろ。てか何時代の人だよ。何にも聞かずここまで来たのに幽霊探しだったんかい。

今までしてきたのは一体なんだったんだ。


「では急いで中庭にレッツゴー。」と言って走る神崎さんがなんだか心配になってくる。なんて考えていると、

「うわぁ⁉︎」と神崎さんは扉の段差につまずく。

…やっぱり心配だ。


とはいえこの屋上から落ちたのだから何かしら残っていてもおかしくない。例えばさっき言ってたフェンスの下の錆、

おそらく前あった柵か何かの錆なのだろうが、飛び降りる時に剥がれて落ちたのだろうか?だとしたら剥がれた錆の量が多くないだろうか?


あと足跡だ。扉のまえにペンキの缶があるし溢れたものを踏んだから付いたとしてこれはいつから付いていたものなのか?事件の時のなら拭かれているのでは?じゃあ事件後なのか?


何か残っていないか何度も何度も屋上を探していると、後ろからキイーと扉の開く音がした。

おそらく今は授業中だし生徒が来るとは思えない、たぶん神崎さんだろうと思い、

「それで?神崎さん、笹森さんの霊は見つかった?」

と冗談交じりに振り向きながら言った。


確かに神崎さんが立っていた。だが、なんだか様子がおかしいように感じる。

なにか悲しい、寂しい、暗い、そんな雰囲気を漂わしているのだ。


幽霊を探すって言ってたし取り憑かれたとかなのだろうか?少し様子を伺った方がいいのでは?

するとゆっくりと顔を上げた神崎さんは暗く静かな声で、

「ご……ね、本当…ごめんね。」と呟く、

僕はなぜ謝っているのか分からない。そこで、

「何が?なにがごめんなの?」と聞く。

すると、神崎さん(?)はまた「ごめんね」と言って倒れてしまった。


一体どういうことなんだ。まあとりあえず神崎さんを起こさないと。

「神崎さん、神崎さん」と呼んでいると、

「うーん」と言いながら起きる。顔を上げ周りを見て状況を把握したような顔をすると、

「んで?どうだった?なんて言ってた?」と言ってくるので、

訳が分からないながらも「ごめんって言ってた。」と言った。

何か納得した様子で頷きながら、

「だよねーなんか謝りたいって思いが強かったんだよね。」

と言う。いやどういうこと?


「…今のが話しを聞くって言ってた奴?」

「そうだよ、これが死神のパペットの持っている能力の一つなのだよ。てか階段で話したじゃん。何か話すと思うから話を聞いておいてって。聞いてなかったの?」と話す。


しばらく沈黙の間があったが、理解してくにつれ、

「あははは。」と僕は大笑いしてしまう。

「なんで?なんで笑ってんの?」と神崎さんは訳がわからんという顔をしている。


だって階段で言ってたって事はずっと独り言を言ってたってことじゃん。周りからは気付かれていないとはいえ、

傍から見ればヤベェ奴じゃん。あははは。

なんで僕がいないの気付かないんだよ。

と笑いが収まるまで時間がかかったのである。僕が笑っている間、神崎さんはご機嫌斜めになっていた。


なんだかんだ今日の調査を終えると僕たちは家路を辿る。

「今日の収穫は?」と聞くと、

「ほとんどなしと言ってもおかしくないくらい。」

「このままで未練解決ってできるのか?」

「まぁ何とかなるでしょ。」と呑気に言う。 


「ところで」と話を変え質問したいことを聞く、

「死神のパペットが持っている能力って他にはどんなことがあるの?」と聞いてみた。

「えっとねー、まずさっきやった口寄せ的な奴と、記憶を覗けるって奴とかかな。」と言ったあと、


「試してみる?」とニヤニヤしながら頭に僕の頭に触れようとする。

「やめてくれ」と手を払うと舌打ちされた。

「記憶や意識の操作は?」

「それは私達の上司的な存在である死神さんの能力。」

なるほど。


帰る方向が違う道になると、

「次の調査は明後日にする。」と言うので、

「明日は?」と聞くと、

「明日まで休んだら勉強に追いつけない。」と言う。

ちゃんとそこは考えてるんだ、と少しだけ感心した。


帰り道今日は忙しい一日だな、なんて思ってるとふと疑問が生じた。

なんでこんな一日を受け入れているんだ?普通は受け入れられないだろう。

少しの間考えただがすぐに答えが出た。潜在意識の操作だ。僕が受け入れられるよう死神さんとやらが操作しているのだろう。少し恐怖を感じ考えなければよかったと後悔した。



僕はスマホのアラームで目を覚ます。

カーテンからさす日の光が少し眩しく感じながら、ベットから起き上がる。

朝ごはんを食べたり、歯を磨いたりなどいつもやっている日常生活をおくる。

そこでピンポーンと家のインターホンが鳴り画面に映る人物を見ながら、

…非日常っていうのは急にやってくるんだな

そう思うのだった。


学校カバンを持ちながらドアを開け、外にいる人…神崎さんに話しかける。

「なんでいんの?」

「別に良くない?それに昨日の夜、死神さんから君と一緒に未練解決するの許可されたもん。」

「それは良かったけどいきなり家にくるなよ。母親から誤解されそうになったんだからな。」

そう半分苛立ち半分呆れのような声で言うと、

「ははーん」とどこの推理マンガかっていう反応をされた。


灰色のコンクリートの上を歩く、学校は遠くもないし近くもないため自転車で行く程度の距離である。

校門を通り自転車を置くと、下駄箱に靴を入れる。そこで、

「よっ‼︎元気ないようにみえるぞ。」といきなり肩を組んできた松原 高貴に「朝っぱらからうるさいな」といつも通りに話始める。


「そういえば、お前と神崎さんって仲良いの?」

といきなり聞かれビックリしながらも、

「なんで?」と返した。

「いやな昨日の下校夕方一緒に歩いてたろ?」

と聞かれる。…見てたのか。どうしよう。と悩んでいると、

「趣味の読書で話が盛り上がってね。しかもどっちとも推理小説だったから余計盛り上がったんだよ。」

といつの間にか後ろにいた神崎さんが言う。

「ふーんそうなんだ。」とどこか納得した様子の高貴はダッシュで教室までの廊下を走って行った。

…なんだアイツ?


今は数学の授業なのだが、この数学の先生なかなかに脱線が起きやすい。何のために役に立つのか分からないことをよく話す。

僕は勉強はできる方ではある。特に英語なんかは得意なのである。

変わって社会などはなかなか上手く覚えられないんだよな。

僕はペンを走らせる。


しばらく授業の内容をノートに書いていると、

「ところで」と先生が話を変えようとする。

出ました脱線の予兆の"ところで"さて今日はどんな脱線なのかな?そんなふうに少し期待してしまう。


「最近、この辺りで不審者情報が出ていたようだったよな。みんなも気をつけて登下校するように。

不審者は怖いもんだからな、少し前ではあるけどストーカーに悩まされていたっていう少女がいたりだとかニュースでいたりするからな。」と先生は言う。


…悩む、か。そういえば笹森さんも何かに悩まされていたって言ってたな。

悩む理由とすれば、恋愛、家族、虐め、先生が言っていたものなどその他の理由。

僕はメモ用紙に理由をあげていく。

…わからない。どうやったら理由がわかるんだ?

それに笹森さんが謝ろうとしていたことって何だ?

…もっと情報が必要だ。そのためにも。




次の日僕たちは家の前に立っていた。

亡くなった笹森さんの家である。一人暮らしなのでいまは家主がいないのだがまだ笹森さんのお母さんが部屋の整理が出来ず家賃を払いながらそのままにしているのだ。

僕は横にいる森先輩に目を向ける。僕たちだけでは入れてもらえそうにないと思うので無理を言って、退院間近の森先輩に来てもらったのだ。そして笹森さんのお母さんに連絡を取った。


少し待っていると、40代くらいの女性がきた。「あっ、森くん久しぶり。」と言った後、鍵を開け僕たちを快く家に上がらせてくれた。第一印象的にはよく笑っていて、

優しい方だと思った。

僕たちを迎え入れすぐお茶を出してくれた。


全員が席についた時、

「おばさん、笹森の話なんですが。」

と先輩が話をきりだした瞬間、笹森さんのお母さんからふっと笑みが消えた。

「すみません悲しい思いを掘り返してしまって。

ですがその真相を知りたいんです。」

先輩が強く、優しく言った。


何か決心したような面持ちで一言一言言葉を紡ぐ、

「茜は、娘はあの件の一カ月前くらいからあまり口を聞いてくれなくなっていたの。学校で何かあったの?って聞いてもいや違うって言ってた。」

「分からなかった。でももっと聞いておくべきだったのかもしれない、そうしていれば茜は、茜は。」

しばらくの間誰も話さない静かな時間が流れた。


「失礼ですが、茜さんの寝室に入ってもいいですか?」

と神崎さんが聞く。

「ええ。」と許可をもらったので入らせてもらった。

黄色のカーテンにピンクのベットいかにも女の子の部屋と言った部屋だった。

笹森さんのお母さんが窓を開けた。

強い風なのかヒューヒューという音がしていた。



…まるで主人を失った部屋が悲しみに暮れているように。







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