大人になったあなたと
こんな恋愛の小説が見たくなった
就職して、数年がたった。
私は大手の会社に就職し、日夜汗水垂らして働いている。バリバリ仕事をして同世代よりも早く出世できてある程度は充実した日々だったけど、私は一つだけ同世代のひとたちより持ってないものがある。
それは……
「で、いつまで彼氏作らない気なの?」
「いいじゃない、私のタイプじゃないんだもの」
『彼氏』がいないのだ。
就職当時はそこまで気にしていなかったのだが、流石に二十代後半にも入ってくるとそろそろ婚期が……気にし始めるようになった。
現在は会社近くの喫茶店で同期の人と昼休憩中だ。
そんな中同期から彼氏の話を振られてきたのでそう答えると同期からため息が漏れる。
「でもあんた、そう言って会社一のイケメンを振ってるじゃない。あんな優良物件じゃ不満ならどんな人がいいのよ」
同期からそう言われて自分でも考えてみる。
自分で言うことではないけど、私の容姿は整っている方だ。学生時代にも何度も告白されている、スタイルもいい方で同級生や同僚からも羨ましがられる。そんな私と付き合いたい男性はたくさんいる、だけど何故か告白してくる人とは付き合ってもなんでか長続きしない。
多分どこかに自分の理想のタイプがあって、それに付き合った人を比べてしまうんだろう。
ならそんな自分の理想のタイプは?そう考えてさらに思考を深くしようとする。すると思考を深くする前にふと一人の男子の顔が浮かんだ。
顔は整っているけど、どこか気怠げで、野良猫のような雰囲気を思わせる高校時代の同級生の男子。
彼だけは私を見てくれだけで見ないで、内面も見てくれた。
いつもやる気のない声で、私の話を面倒そうな顔をしながらも優しい光を宿した瞳で聞いてくれた。
そんな彼に私は惹かれていたんだろう。
自覚するのに何年かかってんだか。自分のアホらしさに少しおかしくなってしまう。
その話を同僚に話すと「なんか少女漫画みたい」って笑われた。
少し恥ずかしくなりながら飲んでいたコーヒーのおかわりしようと店員に声をかけようとした時、喫茶店に一人の男性が入ってくるのが見えた。
背丈は少し男性の中でも高め、顔は整っている。
だけどどこか気怠げで野良猫のような雰囲気を思わせるが、瞳には優しい光を宿している。どこか話に出ていた男子と似た……というか本人がいた。
私は思わず立ち上がる。
「ーー君?」
私の声を聞いて男性はこっちを見て、その瞳を少し大きくする。
そして彼もこう入った。
「もしかして…ーーさんか?」
こうして私の遅めの少女漫画のような恋愛が今、始まった。