9.いつかまた。
ザワザワ
私は、いつもの草原に立っていた。
「楓」
いつもと変わらない私を呼ぶ声。
「ヴィラ」
金の瞳に金の長い髪をなびかせ、この世界の神様は立っていた。
「あのね~楓と会うのは楽しいけど、今日でとりあえず会うのは最後にする。」
「なんか、急だね。」
神様だとつい忘れている私は、友達との急な別れに戸惑う。
会うと騒がしいけど、もう会えないと宣言されると、なんか凄く寂しい。
私、やっぱり自分勝手だ。
「楓は、心の中読まれてもホント気にしないよねー。」
「そんな事思われると、ちょっと照れるじゃない。」
いや、隠す方法あるなら教えてよ。
嬉しいのか、クネクネしながら話すヴィラは相変わらず可愛いけどちょっと気持ち悪いよ・・。
「神官達も楓とばかり接触してると良く思わないだろうし、元々特定のヒトに近づくなんて普通ありえないのょ。」
「まあ、確かに神官長さんのヴィラへの思いは、半端ないね・・。」
そんなのまったく気にしてなかった。
「で、とりあえず二つ伝えておく。」
「まず小さい物なら数回くらいなら楓の世界に運ぶって言ったでしょ?運ぶ時は、時空が安定していて他に影響が出ない時にしたいから、事前に知らせるわ。」
そこで、そうだっと手のひらをポンと叩くヴィラ。
あー美人って仕草も可愛さ倍増。
「くだらない事は置いて、今回かなり早く、しかも急に喚んだお詫びに、此方から物を送る時に向こうから物をもってきてもいいわょ。」
私は、その言葉を聞いた瞬間、ヴィラにぶつかるくらい迄近づいた。
「ちょっと!怖いし近いわょ!」
ビビるヴィラは初めて見た。
それくらい私の表情は、鬼気迫っていたのだろう。
そして私は叫ぶ。
「こうじ菌~!!」
「喚ばれる正確な日にち知らないから、部屋に置いてある大きいリュックに色々詰め込んでいたの!それ欲しい!」
ヴィラは、何故か怖い物でも見たような顔をし、頬をひきつらせながら答えてくれる。
「この世界に害を及ぼす物でなければいいわよ。」
オゥ!
「可能性が出てきたー!」
「醤油!しょうゆ~!」
「な、なんか怖いんだけど・・二つ目は、楓がこの世界に定着する方法なんだけど。」
「うんうん、重要だよね!」
興奮している私に次の衝撃的な言葉が。
「ベビーょ!」
「うんうん・・ん?」
なんだって?
こうじ菌の嬉しさで聞き間違えた?
ヴィラの顔を見る。
何故か彼女は、イライラしている。
「だから~この世界のヒトとなら誰でも大丈夫だから、なんだっけ?あぁ、初夜とやらをして授かれば尚魂が定着するのよ!」
「ようは、この世界のヒトの魔力を直接体内に浴びさせるのが一番近道で、体内に子供が出来れば尚長期間、この世界の力と楓の力が混じり合うからいいのよ。」
「簡単なんだけどぉ~楓にはハードル高いから前の時教えなかったのよぅ。」
「あっ、長く話過ぎた~。」
「じゃあね楓。」
えっ、そんなアッサリ?!
私まだ話についていけてないのに!
「違った!またいつか。」
そう言い直しヴィラは、今まで見た中で一番人間っぽい、笑顔を見せた。
「ーうん、またね。」
そうだよ、また絶対会おうよ。
心が読めるヴィラに口には出さず話しかけた。
徐々に葉のこすれる音が小さくなり、ヴィラの笑った顔もぼやけていく。
ー目を開けると、まだ辺りは弱い光。
もうすぐ朝かな。
そうだ、私気を失ったんだっけ。
私は、ふかふかのベッドの中にいた。
ふと気配がする。
体が、力の使いすぎか少しダルいので寝たまま周りをキョロキョロすると。
ベッドの近くに、腕を組んで椅子に座り目を閉じているルークさんがいた。
珍しい。
寝てるのかな?
初夜とやらょ~。
ルークさんの寝顔を見ながらヴィラの言葉を思い出した。
それって・・あんなことや、こんなことを・・。
「だぁ!ムリー!!」
「まだまともにお付き合いすら、デートすらしたことないのにっ!」
頭を抱える私に。
「なにが無理なんだ?」
ルークさんの声が・・。
抱えた頭を少し上げちらっとルークさんを見た。
このイケメンと・・。
「やっぱ無理ぃ~!」
「よく分からないが、頭以外大丈夫そうだな。」
ルークさんは、呆れたように私を見てそう言った。