8.ヴィラの怒り
『この娘がいたから先に起こるであろう戦を回避できたのに何故分からない?』
『お前も、お前も欲にまみれてばかり。』
私の意思と関係なく腕が上がり一番ネチネチ言っていた人達を指差していく。
『我は今回事なきを得る為にこの娘を早く喚んだが、この娘がどんな思いをしたか分かるか?』
パンッ!
「ヒッ」
指差された人の側の窓ガラスが割れた。
『この娘は何の義理もないこの世界の為に命が危うくなる可能性を知りながら力を使った。』
『それだけではない』
『突然喚ばれ、友にも別れを言えず。』
パンッ!
窓ガラスがどんどん割れていく。
また風が吹き始める。
『親と話すこともできず別れた。』
ーやめて。
『この娘は二度と元の世界に戻れないのに。』
「ーヴィラ・・もういいよ。」
自分の声がやっとだせた。
頬に涙がつたっていく。
私が泣いているのか。
ヴィラが泣いているのか。
ヴィラのせいじゃないのにヴィラが、こんな世界でごめんと私に伝えてきた。
また違和感。
身体は、硬直したような状態で動かないけれど、視線は動かすことができた。
下を見ると私の体は、胸から足までが透けていた。
『この娘はまだこの世界に定着してない。』
『よって些細な精神のゆれで消滅しかねない。』
いまや風は私を中心に螺旋を描きながら部屋中の物をなぎ倒す。
『この娘もらおうか。』
ーヴィラ?
『我と共にあれば汚い者を目にすることもなく永遠を我と生きる』
バキバキッ!
何が起こったか分からなかった。
ただ突然風は止み、周りには氷のツララのような物が無数床に突き刺さっていた。
「行かせない。」
そのツララを発生させたのは、青く光る剣を構えたルークさんだった。
「楓、俺と共に生きろ。」
ールークさん。
「カエデ、俺はまだ納得できないがお前、前に俺に何て言った?」
派手王子に?
"恋人は無理だけど、友達ならいいよ。"
「カエデちゃん~まだ、侍女殿達とも会ってないでしょ?」
マリーさん、ベルさんにアリヴェルちゃん。
「・・ヴィラ、ごめん。」
『ーこの娘に今後害をなしたらその者、その国を消す。』
いいよ、そんな悲しいこと言わなくて。
大丈夫だよ私。
皆いるから。
もちろんヴィラも。
「ヴィラ、ありがとう。」
私から金の光が抜けていく。
私は膝を床についた後意識を失った。