7.後始末はひと芝居?ーガインー
「いや~流石カエデちゃん!飽きないわ~」
「ラウ黙れ」
「ハイハイ」
あのパーティーの後、当たり前だけど大騒ぎになった。翌日の朝、私達は宰相さん待ちの為に城内の小さな部屋の一室にいる。
「あ~色々どうしよう」
私は石が無くなってしまった杖をテーブルに置きソファーに座りどんよりしていた。
「楽観的なカエデちゃんにしちゃあ、珍しい落ち込みじゃん~」
ラウさんが、窓近くの壁際に立ちながらお茶を優雅に飲みつつ話しかけてくる。
「流石にヤバい気がします。黒いのは倒せてよかったけれど、この杖勝手に使って壊し、あげくの果てに王様は赤ちゃんになってるし、もう収集つかないじゃないですか」
昨日は、アレが最善だと思ったんだよ。
自分では、前より成長したつもりだったけど変わらないのかな。
「カエデちゃんは、自然体が一番よ。ね? 副団長」
「そうだが。こちらの身が持たない」
ドア近くにいるルークさんが、不機嫌そうに答えた。
…やっぱり怒ってるよ。
油断して危うく皆からもらったブレスレットとネックレスなかったら負けてたしなぁ。
「カエデちゃん。副団長殿は危険な事をしたのにも腹を立てているけどそれだけじゃくて、あのヒラヒラの格好も原因だよ~」
何故か楽しそうにニヤニヤしてラウさんが話す。
「ラウ」
ラウさん! 更に機嫌を悪くさせてどうするんですか! しかし救いは来た。
「やっとかな」
ラウさんがそう言いって暫くすると。扉がノックされた。
「私だ」
宰相さんの声がし、ルークさんが扉を開けた。
そこには、ヴィラスの宰相さんだけではなく、ガインの宰相さんとデュラス王子がいた。
「久しぶりだな。カエデ」
派手王子を前にし、私は事の大きさに改めて気づいた。
…私、この人のお父さんを消して、殺してしまったようなものだ!
目を見れなくなり思わず視線を下げた。
「カエデ」
派手王子が私を呼ぶ。
「カエデ、顔上げろ」
恐る恐る頭を上げと。
「ありがとな。助かった」
デュラス王子は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「そんな泣きそうな顔すんな!アンタらしくないじゃん!」
そう言い私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
だってさ。自分のお父さんがそうなったら。
「俺が切り捨てるとこだった」
「えっ?」
衝撃的な言葉に思わず顔を上げると、青い瞳と目が合う。そこには苦しそうな表情があった。
「以前から兆候はあった。だが、俺が他国との輸出の件で国外に出ている間に、悪化していった。俺は、王位が欲しいが為に報告がきていたにも関わらず、自分の手柄を優先した」
放置した結果、帰ってみたらこれだと呟いた。
「カエデ様のお陰で王子は反逆者にならずに済みましたよ」
ガインの宰相さんが疲れた声で話し出す。
「あの赤ん坊は魔力はかなり少ないが、質は間違いなく王のものです。今回、被害はカエデ様の力で予想以上に最小限で済みました」
これで終わりかと思ったらヴィラスの宰相さんが。
「だが、あの状況に納得していない者もいる」
また嫌な予感がする。
「カエデ殿の為にも今夜、ひと芝居お願いしたい」
このままでは、カエデ殿の立場が危うくなる。
そうヴィラスとガインの宰相さんに言われ、私に選択肢はなかった。
その日の夕方。
他国のお偉いさん、貴族の方々を集めたパーティーが急遽開催された。そこで今、私は責め立てられている。
「本当に陛下は乱心されていたのか?」
「この混乱に乗じてヴィラスが何か仕掛けてくるのでは?」
「だいたい、使者殿は帰られたと聞いたが」
なんで、こんな事になっちゃったんだろう。力を使いきって疲労しているからか予測はできていたけど辛い。
だって王様いなくしちゃったのは、確かに私だ。
宰相さん達から、ある程度文句を言わせたら、ひと芝居をヴィラが降臨したように芝居をしろと言われたけど、そんな力もなくなってきた。
視界の端には、心配そうなルークさんが見える。
演技なんて子芝居すらしたことないし、どう乗り移ったようにすればいいのか。
そんな時。
…何?
私を中心にし、突然円を描き金の光が強い風と共に発生した。
「キャア!」
私の近くでネチネチ言っていた女の人の顔に、飛んできたナプキンがピシリと当たる。
その風と光は徐々に増し、重たそうなカーテンがバタバタとはためく。
『見苦しい限りだな』
私の口かは発せられたそれは、ヴィラの強く怒りを含んだ声だった。