17.私のこれから。
「突然すまないね。」
すまなさそうな表情のお兄さんに・・無表情のお母さん。
「いえ!」
「こちらこそ、いままでご挨拶もせずにすみませんでした!」
私は立って二人に頭をできるだけ下げた。
「本当にね。」
「母上殿、そんな言い方すると嫌われますよ。」
「冗談ですよ。」
「真顔で言われても怖いだけです。」
なんか、兄さんとお母さんの会話が漫才のように聞こえてくるのは気のせいだろうか。
伝達がきて15分後には、部屋の前に二人は到着した。
ベルさんが更に慌てたのも無理ない。
もちろん残念だけど、二人が部屋に来る前にアリヴェルちゃんとシャル君とは、また今度という感じで、慌ただしく別れた。
そして今、私の借りている部屋でソファーに座っている二人は、まぁお約束のごとく、イケメンと美女だ。
お兄さん、ヴェルニーさんの髪は濃い金髪でオールバック、瞳はルークさんより明るい青。
優しげで落ち着いてる感じといい、理想のお兄さんだ。
お母さん、ルイーズさんは、髪が紺で瞳はとても綺麗な薄紫。
二人とも年齢不詳だ。
う~ん、遺伝とかやっぱり違うのかな。
でも法則はきっとあるよね。
「カエデと呼んでいいかしら?」
「はい!」
お母さん、ルイーズさんに聞かれたので、すぐ返事をした。
シャル君のお母さんが陽だまりのような雰囲気なら、ルークさんのお母さんは、静かな夜空に浮かぶ月だ。
キリッとしたクール美人で、なんか話しかけづらい。
ルイーズさん、ルークさんのお母さんは、まっすぐに私を見て口をひらいた。
「貴方はこれから、この世界、このヴィラスでどうするつもりなのですか?」
いきなり直球がきた。
薄紫の視線が強く刺さる。
てきとうな答えでは許されなさそうだ。
私のこれから。
その事は、元の世界に戻った時からずっと考えていた。
コクリと喉がなった。
「・・私は、ルークさんの側にいたいです。」
でも、ただ側にいるだけなのは、負担になるのは嫌。
「それだけじゃなくて、この国だけでなく、他国の衛生面の改善、食料の安定化、妊婦、新生児、乳幼児を含めた死亡率の低下を目標にしたいです。」
まだ、したい事は沢山あるけれど、大まかに言うとこんな感じだ。
小娘がと思うかな?
私は医師や看護士でもない。
でも、食に関してなら少しは、ほんの少しかもしれないけど役にたてないかな。
ルイーズさんは、ため息をついた。
「カエデ、貴方とは元の世界に帰れなくなる前に会うべきだったと思います。」
それって私はー。
・・やっぱり迷惑だってことかな。
でも、そうだよね。
端からみたら、貴族でもないし、まして別世界からの人なんて気持ち悪いかも。
なんか自分で思って悲しくなってきた。
「そんな言い方は。」
「私が今話しています。」
お兄さんがやめさせようとしてくれてお母さんに話かけるが、バッサリ切られた。
そんな時。
バンッ!
勢いよくドアが開あいた。
「私の婚約者に何のご用ですか?」
部屋に入ってきたのは、息を切らせたルークさんだった。