11.嘘でしょ?
「派手王子はいったいなんだったんだろう。」
「カエデちゃんは、相変わらず鈍いよね~。」
可哀想な王子と呟くラウさん。
今、私とラウさんは、転移をして先にヴィラスに戻ってきた。
とりあえず転移酔いの為、前に借りていた部屋へ人気のない廊下を移動していた。
「まあ、意外に丸く治まったな~。」
「治まったというより治めたんですよ。」
誰が聞いているか分からないので、宰相さんがとは言わない。
あの王様が赤ちゃんになってしまった件は、幸い皆逃げたか、気を失っていたので、病に伏した後しばらくして亡くなったという流れにもっていく事になった。
まあ、納得していない貴族もいたらしく宰相さんが日頃探りそれぞれの握っていた弱みをつき、黙らせた。
そして赤ちゃんになった王様は、なんと宰相さんが屋敷で養子として育てるらしい。
・・騒ぐだけ騒ぎさっさと消えた私は、罪悪感で心がズキズキだ。
でもルークさんに、いてもしょうがないとバッサリ言われて今に至る。
そうこうしているうちに、懐かしい扉の前に着いた。
ラウさんが先にドアをノックし、中から返事と共に懐かしい顔が。
「マリーさん!」
「カエデ様、お帰りなさいませ。」
変わらない優しい笑顔に、ついマリーさんに抱きついてしまった。
「あらあら。」
甘え上手になりましたわね。
と笑いながら背中をポンポンしてくれた。
「私もおりますが。」
マリーさんの後ろには、ちょっと拗ねたような表情のベルさんがいた。
「ベルさん!」
「待ちくたびれましたわ!カエデ様、お帰りなさいませ!」
私はベルさんにも抱きついた。
そういえば。
キョロキョロするとマリーさんが。
「アリヴェルは、婚約して今結婚に向けての準備の為城にはおりません。」
「カエデ様に会いたがっておりましたよ。」
「知らせてあるので数日以内には会えるかと。」
「そういえば、前に婚約の話がでているって言ってましたよね。」
ずっと皆と一緒は難しいとは分かっていたけど、ちょっと寂しいな。
「すぐ会えますわ!」
ベルさんが飛んできますよと言ってくれる。
「でもさ~カエデちゃんも、すぐ結婚式でしょ?」
ドア近くの壁に寄りかかっていたラウさんが会話に入ってきた。
って今なんて言いました?
「・・誰の結婚式?」
「カエデちゃん。」
「ちょっ!痛いし!苦しい!」
私は、ラウさんの制服の胸元を思いっきり引っ張っていた。
「そんなのいつ決まったんですか?!」
「え~だって、そのネックレスいつ身につけたの?」
「いつって、帰ってすぐお店でペンダントに・・。」
オーダーだからお金は高くついたけど、すぐ身につけたくて。
ヴィラやルークさん、皆との出会いは、夢じゃなかったと、現実だったんだと、私の妄想じゃないんだと、この貰った石を見て弱り揺らぎ不安になる気持ちを落ち着かせていた。
「相手の瞳の色の石をネックレスとして身につけると婚約の証だってルークに言われたでしょ?」
「それは、そうだけど。」
「普通婚約期間は1年だよ。」
「・・え?」
呑気にポリポリ頬を掻いているラウさんの衝撃的な話は続く。
「だから~すぐ身につけたんなら、あと何週間かで1年だよね。」
「ちなみに平民は婚約期間とかはばらつきがあるけどルークは貴族だから、そのルールは絶対なはずだよ~。」
「嘘でしょ?!」
なによそれ!
「嘘いっても何の特にもなんないし~。」
「そんな異世界ルール聞いてない!」
「私達がマナーなどお教えしますわ!」
「まだ2週間と少しありますわよ!」
いやっマリーさん達のつっこみはそこ?!
私はしゃがみこみ頭を抱え叫んだ。
「無理だー!!!」
「カエデちゃんいると賑やかだな~。」
ラウさんの呟きは私の絶叫で消えた。