僕と7月の始まり
「すみません、牡丹探偵事務所の水面と申します。この家では猫を飼っていらっしゃいますか?」
そう言って家に背丈は小さく派手なゴスロリっぽい格好とは裏腹に丁寧な口調の女の子が転がり込んできたのは7月に入ったばかりの事だった。
「悪いことは何もしません、ただ猫がいれば助かるので」
正直第一印象は変な子だなあという所だった。
僕にも生活があったし一人が寂しかったというわけではないが別に家に置いて困るわけでもないのでしばらくそのまま一緒に住んでいたある日、普段は来客など全然ないのだが珍しくインターホンが鳴った。
「御免下さい、ここに探偵さんが住んでいると聞いたのですが」
「はい、住んでいますよ。そのまま上がってください」
僕が答えるよりも先に水面さんは勝手にお客さんを家に上げていた。
流石にびっくりしたものの自分の客でもなかったのでそこは適当に流すことにした。あまり自分でも深く考えていない性格なのかもしれない。
「実は猫を探しているのです、いろいろ調べているうちにここに猫探し専門の探偵さんがいると聞いたので……」
「はい、それはまごうことなき私です。本当は猫探し専門では無いのですがまあ気にしていませんので、それでお宅の猫さんの特徴は?」
驚いていた、この女の子がこんなに喋るところを見たのと、勝手に自分の家が探偵事務所として知られている所に。これは流石に後で詳しく聞いておかねば。
「お任せください、お宅の猫さんは私が責任を持って探します。」
「是非よろしくお願いします!」
お、どうやら話は終わったらしい。ちょっとして水面さんはお客さんを見送った後こちらにちょこちょこと走ってきて話かけてきた。
「お願いなんだがお宅の猫を貸して欲しい、聞いたとおり私は猫探しの依頼を受けた。それには君の猫が必要不可欠なのだ。」
「猫はいいけど、ただあんまり色々と気にしない性格だけど流石に聞きたいことが多すぎる。まずそれを全部説明してからだ」
「……」
こうして変わり者の探偵と自分の生活の出会いは終わり、ようはただの長い猫探しってだけなんだけどな。