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被害勇者  作者: 土曜原アオ
プロローグ
1/2

1 被害加害逆転の能力

 下卑た笑い声を漏らしながら、盗賊である集団が馬車を襲う。

 彼らの弓からは大量の矢が射られ、それが幾つも刺さった馬は嘶き、御者であった男はすぐに針鼠のような有様になった。

 引きずり降ろされ、金目のものがはぎとられた後、襤褸の様に地に転がされる。

 周りを見ると、囲まれていた。

 盗賊の総数は、軽く50を超えているだろう。

 雇われていた5人パーティの冒険者達でも、物量で押し切られてしまうのは時間の問題だった。


「男はここで全員処分しろ」


 この集団のリーダーらしき大柄な男が、そう言い放った。

 盗賊の数人がこちらへと近付きながら各々が弓を手放し、腰に提げられた短刀を抜く。

 統制された淀みない動きで、5人いた冒険者は1対複数人の戦闘を強いられ、その悉くが簡単に殺されていく。

 盗賊たちの練度は相当な物のようだ。

 互いが互いを十全にサポートし、ほとんど無傷で勝利していく。


 そうして、俺も馬車から出されて、抵抗しない俺に対しても油断なく確実に、数人の盗賊たちが腕を抑え群がり、殺そうとして来る。

 盗賊の1人が振り下ろした刃物が、肉を切り、そして裂く。


 冷たい金属の感触が、鈍い痛みと共に脳に自分の「死」を予感させる。

 出来た傷口から止めどなく、血液が流れ出していた。


 とどめとばかりに、リーダー格の盗賊が近付き、俺の喉笛を掻き切った。

 ひゅーひゅーと喉元から空気が漏れ、呼吸もまともに出来なくなる。


 痛い。

 感覚だけ言えば、それはもう、物凄く痛い。


 それは誰がどう見ても、明らかに致命傷だった。


「よし、終わったな」


 予告通り、俺を含めた男が全員殺されたのだろう。

 朦朧とする視界の中、盗賊のリーダーが馬車の中にいる女性達へと近づいて行くのが見て解った。


 その先に恐怖で引き攣った女性の顔が映る。

 対して愉悦に歪んだ、盗賊の顔を見据える。


 だが、それでも、この状況になった時点で、俺の勝ち(、、、、)である。


 意識が遠のき明滅する。

 身体が冷たく固まっていく。

 身体が死に向かっていた。


 その末に、俺は死ぬ。

 抗いもせずに死を迎えた。

 完全に、俺の息が絶えたのだ。


 それでも、終わらない。


 思考が再びの浮上を始める。

 そして今までの記憶が、脳裏を過って過ぎて行く。

 所謂、走馬灯だ。


 それを俺は流し見ている。

 それを俺は盗み見ている。

 それを俺は覗き見ている。


 俺の物では無い、この盗賊の記憶を、俺が見ていた。


 暗転。


 次第にはっきりとしていく思考と、自身を取り巻く環境の変化を感じる。


 目を開く。

 視界の脇に以前までの自分が死んでいるのが見えた。


 死ぬことへの恐怖を忘れた、無感情な死に顔。

 それと全く同じ表情を、この男の顔に張り付けたまま、振り返る。


 自分を殺害した(、、、、、、、)加害者の肉体を(、、、、、、、)奪い取る(、、、、)能力(スキル)


被加逆(デストレード)


 これがこの世界に召喚された事によって俺に付与された、特典技能(レアスキル)であった。


※誤字などあったら教えて下さい。

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