世界の独白
まーるい、おーきな建物があるんです。
ちょうど、私に似てるんですけどね。
でも、ちっさすぎて私の手で壊してもそうは困らないものなのでしょう。
しかくい、おーきな建物があるんです。
ちょうど、私のつくった人たちが完成させたところです。
でも、かたくて私は厭だから壊してしまいそうです。
まあ、これまでこんなものがなかったから困らないものなのでしょう。
とはいえ、私は何者なんでしょう?
自分でもよく分からないのです。
私の心の中で、人々は叫ぶし、笑うし、怒るし。
なんか、楽しくないんです。
あ、ほら。
むこうにはとさかの生えた少年が、夜の街の暗がりへと身を投げてしまいました。
私はあの子のことが心配になります。
でも、私は壊すことだけしかワカラナイらしく、あの子を助けることなんて出来ません。
そうすると、みんな、神様が怒っただなんて言うから、下手には行動できないのです。
あ、彼女はまた一人ぼっちだ。
この頃、彼氏にフラれてからは、友達と遊ぶこともないみたいで、ずぅっと残業で会社に残りっぱなしです。
寂しそう。
彼女の傍にいるのに、ずっと彼女は寂しそうです。
私は、本当にできることはないのかもしれません。
私の声は、今あなたにきこえているのでしょうか。
……まさかですね。
私は、ヒトじゃないのですから、無理ですよね。
あぁ、あのときはヤンチャだった彼が久しぶりに顔を覗かせました。
この頃、ずっと家にこもりっきりなのですね。
一体どうしたのでしょう。
人間というのは、一体なぜこんなにも独りきりになるのでしょうか。
寂しい。
私はいつもあなたに囲まれているのに、私がいつも傍にいることに、あなたは気付かないのですね。
まあ、仕方のないことなので放っておくしかありませんが。
でも、いつもそっと耳を済ませて。
私の声が、あなたの心から聴こえるかも、しれませんから。