8体目:装備の紹介
「まずは防具についてですが、今、マキナ様が身に着けられている軽装鎧になります。」
「あぁ、これ?」
今、俺の恰好っていうと、ジーンズみたいな生地っぽい触り心地の黒地のパンツ。それと焦げ茶色のロングブーツ。んでもって、上は、パンツに合わせるように、同じような生地っぽい結構厚手の長袖のシャツ。色は同じ黒。
そして、その上に身に着けている防具っていうのが、肩当が無い軽めのブレストプレート。こいつは、主に胸から腹の部分を守る為の物っぽいな。
あとは下半身を守るための腰鎧って所だろうか。あるのは、ベルトと腿辺りを守る為の金属製らしきプレートだな。で、最後に両腕に付いている小手、って所だ。
うん。見た感じ、かなり防御する部分が少ないけど大丈夫なのか?
「なぁ、皇女様。防具が心許無いような気がするんだけど、これで大丈夫なのか?」
「はい。これでも、魔導力の力が働いておりますので、守る部分が少ないように見えますが、防御力はかなり高いのですわ。」
「ふぅーん、これでねぇ……。」
まぁ、皇女様がそう言うんなら、そう信じるしかないだろうな。
っていうか、急所を守る部分が無いっていうのが、不安を煽ってしょうがないんだがなぁ……。
ま、いいか。次、次。
「んで? 後は、武器か?」
「はい、そうですわ。武器について、ご説明させていただきますわ。」
「おう、よろしく。」
「承知しましたわ。
この世界での戦いは、マキナ様がいらした地球のような銃を使った遠距離型の近代戦ではなく、剣、斧、槍、そして鈍器などを用いて戦う接近戦が主になりますわ。その補助として、弓や投擲武器、そして【魔導砲】のような魔導技能があるのですわ。」
「やっぱり、そこら辺はファンタジーなんだな。
ゲームのように剣を振ったりして、魔物やらと戦うわけだな。」
「はい。
ですが残念ながら、戦う相手は魔物だけ、とは言えません。」
「あぁ、そうだったな。
さっきも人を相手にしたばっかりだしな……。」
色々と狙われている皇女様の手助けなわけだから、そこは覚悟しないといかんよね。
っていうか、俺、さっきの暗殺者相手に躊躇なく無力化したけど、よく出来たな? 俺、地球に居た頃は、そこまで喧嘩に明け暮れるような人生じゃなかったはずなんだけどなぁ?
……やっぱ、この身体の所為なんだろうか?
「何か気になる事でも?」
「ん? あ、あぁ、いやぁ……さっきさぁ、皇女様を狙ってた奴が居たじゃない?」
「えぇ。マキナ様が、アッサリと無力化した者ですわね?」
「そう、それ。
俺ってさぁ、地球に居た頃は、普通のサラリーマンだったわけよ。喧嘩に明け暮れるような生活でも、裏家業に手を染めて人殺しするような人生でもない、ごく普通の人生だったわけですよ。
そんな温い生活をしていたような俺が、あぁも躊躇無く、あそこまで出来るもんか? と思ってな。」
「なるほど、そういう事でしたか。
それでしたら、精神状態を出来る限り平静に保てるようにしていますので、そちらが働いたのではないかと思いますわ。」
あ、やっぱ、そういう便利機能が働いてた、ってわけか。
だよなー。俺が、あんなに冷静に対応できるはずないもんなぁー。
「オッケー、把握した。
それじゃ、皇女様。続きをお願いします。」
「承知致しましたわ。
それでは……まず、マキナ様の為に用意した武器は、既にマキナ様の両手に装備されている小手になりますわ。」
「えっ?
……これの事?」
そう言って、俺は両手を顔の高さまで上げて、両手に装備されている小手を見つめる。
前腕部をある程度包み込むように作られていて、色は少し青みがかったような、綺麗なスノウホワイトだ。
これが武器なの?
何だろう? 小手の部分から刃が出て、格闘で戦え、って事かな?
「はい。そちらの小手にも、相当な科学力と魔導力が込められていますわ!」
「ほうほう。こちらの作品も超大作、というわけですか。
それでは、皇女様。いつものように説明をお願いします。」
「承知しましたわ!
その小手は、私共の世界では貴重な金属である、ミスリル銀とオリハルコンを合わせた合金を素材としたもので作った物になりますの。そして、今は小手の形状ではございますが、魔力を流し、変形後の形の思念を伝える事により、伝えた思念通りの武器に一瞬で形を変える魔導武器なのですわ。」
おっと、想像以上に凄いものだった。
何、その夢みたいな武器? イメージ通りに形を変えるだって? それじゃ試しにやってみましょうかね……って。
「なぁ、皇女様。
どうやって変形させるの?」
「あっ!?
申し訳ありません、大切な事をお伝えしていませんでしたね。やり方としましては、魔力を小手に流す……そうですわねぇ? マキナ様の世界で言うと、気を小手に伝えるようにして、形状変形と唱えて下さいませ。」
「気を伝えるように、ねぇ……形状変形!」
俺が1m位の大刀……元の世界の博物館で見た、名刀と言われた鬼丸国綱っていうものをイメージしながら唱えると、腕に装着していた小手が軽く光ったかと思った瞬間、俺のイメージ通りの大刀となり、俺の手の中に納まっていた。
「うおぉっ!? 凄ぇっ!! これ、本当に凄いな、皇女様。」
「そんな事ありませんわ(えっへん)」
ただでさえ皇女様のデカい胸が協調されて、大変な事になっているな。
……俺だって、男なんだからしょうがないだろ。見てしまうものは、見てしまうんだよ。
「マ、マキナ様ったら……。」
あ。
俺が見てたのに気付いたみたいで、ちょっと顔を赤くして、両腕で胸を隠すようにしてら。
……あの、残念な性格と思考さえなければ、グラマラスで美人な皇女様なのにねぇ。と、「ハァ」と溜息を零すと、皇女様は、そんな俺を見て、不思議そうに首を傾げた。
「何かございましたか?」
「いや、何もないよ。
これって、試し切りしてみても良いか?」
「問題ありませんわ。
そうですわねぇ……あそこにある、鎧を纏わせた人形なんてどうでしょうか?」
「おぉ、いいね。
それじゃ、試しに斬らしてもらおうか。」
俺は人形の前に立ち、上段に構えた。
そして、そのまま右上段から袈裟懸けに斬り下ろす。
ズバン! という音と共に人形は鎧共々、袈裟懸けに真っ二つに割れた。
おぉ、凄い切れ味だな。
これなら、もっと固い物でも斬れそうだな……って。
「ああぁぁっ!? 刀がひん曲がってるっ!?」
「あら?」
「あら、じゃねーよ! 幾らでも変形するって言ってもさぁ、振るう度に壊れるような武器じゃさぁ、武器として役に立たねーじゃねーか。」
「そんな事はありませんわ。
この小手は、マキナ様の怪力でも、壊れる事の無いように作られた武器ですわよ。」
「でも、こんな状態になってるじゃんよ。」
そう言いながら、俺は刃先が半ばで90度に曲がってしまった刀を見せつける。
「マキナ様、お伝えするのが漏れていましたが。その武器をイメージする時に、強度についてもイメージされましたか?」
「え? 強度?
あ、形とかだけじゃダメなの?」
「はい。
強度についてもイメージして頂かないと、標準の金属としての硬さと同じになってしまうのですわ。」
「え? 何で強度まで必要なの?」
「それは、武器によっては、わざと強度を下げた方が都合が良いものもあるからですわ。
例えば、毒が仕込まれた武器であれば、体内に残るように刃先だけ壊れやすくするなど、でしょうか。」
「おぉ、成程。そういう事ね。
分かった、次からは気を付けるよ。
……いやぁ、それにして、実戦前に気付けて良かったもんだ。」
「確かに。
お伝え漏れしてしまって、申し訳ありませんでした。」
「いいよ、いいよ。練習なんだし。
ちなみに、他に武器はあったりするのか?」
「はい。
マキナ様の身体についてのものは、これで最後になりますが、左腕の部分は取り外しが可能となっておりますわ。肘下のアームの部分を軽く捻って取り外していただきますと……。」
「ほうほう。」
そう言いながら、俺は右手で左腕の肘の下辺りを掴み、手前に軽く捻って腕を取り外してみた。
そこに現れたのは……。
「左腕に仕込んでありますのは、【魔導砲筒】(マギシューター)ですわ。」
「おい。」
どう見ても、サ○コガンです。
「はい? どうかしましたか?」
「急にファンタジー色が一気に無くなっちまったじゃねぇか。しかも、さっき説明を受けたメイン武器から、系統を一気に掛け離しやがったなぁ、おい。」
「そうでしょうか?
徒手空拳の状態と思わせておいて、腕の中から出てくるサイ○ガン! ロマンが溢れてきませんか?」
「そこにロマンを求めるなっつーの。
それにしても……アンタ、コブ○まで見てやがったか。」
「はい! 淑女の嗜みですわ!」
んなわけねぇだろ。
年頃のお嬢様が、部屋に籠ってコ○ラ見てるとか、何してるんだよ、って話だよ。
「まぁ、マキナ様の身体能力であれば、徒手空拳でも問題なく戦えるであろうとは思いますが、念の為のもの、と考えていただければ問題ありませんわ。」
「そんなところ、か。
……でも、使いたくなってしまうのは、俺も男の子だからかねぇ。」
「ですよね!
やっぱりロマンが溢れてしょうがないですわよねっ!」
「だから、ロマンを求めるなっつうに……。
ところで、これで最後って言ってたけど、もしかして説明はこれで終わりか?」
「はい。以上で、説明は終わりになりますわ。」
「そっか。
それじゃ、ちょっとこの身体に慣れるために、色々と練習して良いか?」
「はい、この練習場の中であれば問題ありませんわ。
ご自由にお試しくださいませ。」
「分かった、それじゃ色々と試させてもらうかね――」
そんな訳で、俺は1時間程の時間を使って、自分の性能を確認する事にした。
あぁー、サイ○ガン、ちょーたのしーわー。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。