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011 ステータスアップのいろは






 シフォンを森の入り口まで送っていった後、俺たちは狩りをしながらシーリュスの町へと戻った。着くころにはまた夕暮れであった。建物がおりなす影が町に差し込む。おおーと心の中で感嘆しながら町の中を歩く。



 目的地は宿屋だ。アイテムをがっつり換金するのは明日でいいかな。一日中歩き続けて疲れた。今夜はぐっすり寝られそうだ。



 アイテムショップで宿代に足りるだけ換金した後、宿屋に入る。

 相変わらず店内はマッチョな男たちであふれていた。がやがやとした喧噪を抜け、女将さんに今日の分の宿代を渡す。夕飯は昨日と同じ時間帯にしてもらい、二人して部屋に行くことにした。



 木製の階段を踏んで二階に上がる。一本の通路。そしてその通路の左右に部屋が二つずつ。一番奥には俺たちが止まっている少し大きい部屋があった。



 二日目なので躊躇することもなく扉を開け、部屋の中に入った。一つの窓と安そうな衣装箪笥とベッド、そして小さなテーブル。無駄な装飾もなく、質素を地でいく内装。ベッドのシーツはちゃんときれいになっていた。ちゃんとベッドメイキングしてくれるあたりナイスだ。



「つっかれたー!」



 ワイシャツを脱いでシャツのままベッドにダイブ。決していいベッドではないものの、今の俺にはこれほど気持ちがいいものはない。マーも無言のままベッドにダイブするとごろごろと転がって感動をその身で表現していた。



「……疲れたぁ。足パンパン」


「スタミナあげたら疲れにくくなるんかな?」


「かもしれない」


「そういやなんでレベル上がったのにステータスは変わらなかったんだろうな」



 現状俺とマーはレベル3だ。それなのにステータスは最初に開いたときのままだ。といってもステータスを最後のタイミングで見たのはお昼を食べるちょっと前だ。望薄だなあと内心思いながら、それでも万が一の可能性を捨てきれず俺はステータスを見てみることにした。



 幾度となく繰り返してきたのでもたつくこともなくステータス画面を開く。



【名前】 法月 やよい 【所属】    【種族】 人間


【レベル】 3       【状態】


【HP】 30 (+20)  【MP】 40000


【STR】 25 (+10) 【DEF】 40 (+5)


【INT】 500 (+10) 【VIT】 40 (+50)


【AGL】 60 (+30) 【DEX】 30  【LUC】 5



「……なんだ、これ」



 思わず口かた出た。なんだこのプラスは。

 なになにと隣のベッドに居たマーが俺のベッドに移ってきた。マーも俺のステータスを見た。



「……このプラスはもう加算されてるってこと?」


「違うと思う。HR30とかSTR25とか変わってないから。最初からこの値だった」



 ステータスあがんねえなあと何度も何度も見ていたから間違いない。

 プラスの表記はあるが加算されていない。これはどういうことなのだろうか。



「もしかして自分で割り振る感じか、これ」


「あー、そういうタイプのもあるよね。割り振る?」


「んー……」



 こういうのってまとめてあげると気持ちいいんだよなあ。お店のポイントカードとかもそうだけど。貯めて貯めて貯めまくり、集まったポイントを眺めたり一気に使ったりするときの充足感と達成感ったらない。



「うーん」



 さしあたって必要になりそうなHPとバイタリティだけをあげておくことにする。HPは死ににくになるし、バイタリティはスタミナが増える。



 攻撃力はただでされ今のパーティはマーのおかげで過剰にある。俺があげなくともどうにならない。防御力もそんなにあげる必要性を感じていない。



 一応今日もポーション二つ持って行ったのだが、結局一つしか使わなかった。ほかも上げなくてもなんとかなりそうなので温存することにした。



「マーは? どうだった」


「ん」



【名前】 新井 さつき  【所属】    【種族】 人間


【レベル】 3       【状態】


【HP】 50 (+10)  【MP】 0


【STR】 200 (+50) 【DEF】 50 


【INT】 0         【VIT】 20 (+60)


【AGL】 20 (+10) 【DEX】 20   【LUC】 5



「STRめっちゃあがってんな! いいなー」


「……私は全振りする派」



 そういうと数秒黙り込んでステータス画面とにらめっこしていた。

 マーは振り終わったのか、俺のまくらを号強奪して膝の上に置いた。二人してあぐら座りをする。



「かんりょー」


「でもなんで今見るとこんなプラスがあったんだろうな」



 昼前見たときにはこのプラスなんてなかった。レベルがあがったときに付くのではなければ、いったいどのタイミングで現れたのか。



「今日よく使ったやつが一番プラスの値が大きい気がした」


「……確かに」



 もう一度ステータス画面を出す。マーは全振りしてしまったので、確かめようもなく二人して一つのステータス画面をのぞき込む形になった。

 こういうときはふり幅を見ると検証がしやすい。



 まずSTRから行こう。今日のアタッカーはマーだ。攻撃の大半はマーに任せていた。効率がよかったし範囲攻撃を使えば逃がすこともなかった。



 その点俺は範囲外にいたやつなどの攻撃、あるいは追撃をしていた。俺にタゲをつけさせて、マーに一撃をぶち込んでもらい倒す。そういう役割だったために、よくメイスを振り攻撃したマーのSTRがよく伸び、反面、あまり攻撃しなかった俺のSTRはあまり伸びなかった。



 それをマーに言う。


「……うん。それであってると思う」


「じゃあ次はAGLで考えてみよう」



 敏捷性。足の速さというかフットワークの軽さというか。うまいこと言い表せないが、そんな感じだ。マーは基本的にその場に立って範囲攻撃をかますばかりだった。俺はというとモンスターが逃げないように右に左に縦横無尽にはいずりまわった。だからマーのAGLはあまり伸びなく、俺は伸びたのかもしれない。



 バイタリティもちょっと差がついている。森を歩いた距離は一緒だ。でもなぜ差が開いているのか。これに満足がいく説明がつけば、ステータスの伸びは自分がそのカテゴリーに該当するパフォーマンスをしたか、ということを信じてもいい。簡単に言えばバイタリティを伸ばしたいなら走り込み、STRを伸ばしたいなら筋トレ、そんな具合に。



「……攻撃する際にバイタリティを使うから、その関係?」


「ああ、なるほど。確かにそれなら説明がつくな。よし、腕立てしてみるわ」


「急にどうした」


「いやさ、ほぼほぼ確定だけど最後のひと押しみたいな」



 ベッドからおりると俺は木製のフローリングの上に手をつき、足と手で体を浮かせる。別段至って普通の腕立てふせだ。ステータスを表示したまま、プラスの値が増える瞬間を待ちながら腕立てふせを続ける。



 プラスの値は五回目に達したときに増えた。増えたといっても一しか増えてないんだけど。でもこれで確定だろう。プレイ時代とはステータスが伸びるタイミングはレベルが上がった時ではなく、該当するステータスを使ったときにプラスの値が増えるのだ。



「じゃあなんでレベル上がるんだ?」


「……あ。確かに」



 ふとついて出た疑問を考える。最悪レベルがあがらずともステータスを伸ばす事は出来るみたいだ。そうなるとレベルを上げる意義がなくなる。さすがにレベルなんていう大切なシステムになんの意味も持たせていないのは考えにくい。何かしらの意味があるはずだが……。



 服を軽く払って俺はベッドに入った。

 体を伸ばしてからベッドに寝転がる。



「ステータスの上限とか」


「あー、レベルごとに? たしかにありそうだな。でも今の段階じゃあそういう可能性もあるって程度だよなあ」


「確かめるわけにもいかないしね」


「あ、もう八時だ。下に降りてご飯食べようぜ」


「うん」

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