第3話
少ないですが、よろしくお願いします。
静かだ。鳥や虫の声はしない。耳に入ってくるのは風によって揺らされた木の葉が擦れあう音と速く激しく脈打つ私の心臓、そして。
――ヌゥォォォ!ナゼダァァ!!タカガヒトノコムスメナンゾニィィ、ワレノ……ワレノタマシイガケズラレテユク!!
それって私のせい?私のせいなのか!?まぁいい。五月蝿いからさっさと従えてしまおう。死霊術ってそういうことだもんね〜。とか考えていたら頭のなかに文字がいっぱい浮かんできた。
「えーと、『死してなお、怨みを、憎しみを叫び続け、生界に縛られ続ける憐れな霊よ。妾がその穢れし魂を清めよう。妾が代行者としてその怨みの根源を討ち果たそう。汝が魂を侵す穢れを妾に与えたまえ、心安らかに、天へと昇れるよう。《天昇の契り》』」
空から一筋の光の柱が巨大な頭蓋の眉間を照らし始めた。いつのまにか、辺りの空気も心なしか神聖なものになっているような感じがした。
――ォオオ。ナントイウココチヨイヒカリダ、我ノタマシイガイヤサレテイクヨウナ……優シク暖カキ光。小サキ人ノ娘ニ過酷ナ運命ヲ背負ワセルノハ心苦シイ。
あれ、なんかキャラ変わった? 前はもっとこう、偉そうと言うか威張ってたけど、今は威厳溢れる自然と畏敬の念を抱ける感じがする。
それより、死霊術ってこんなに清らかなものだっけ? もっと禍々しい物だと思ってたけど……。うん? 何か私可笑しなこと言ってなかった?
「代行者? 私が敵討ちするってこと!?」
――ム? 分カラズニ呪ヲ唱エテイタ……ノカ?
「え、エヘヘ〜」
いや〜、失敗失敗。このばかでかい竜を倒した人と戦わないといけないんだよね〜。どうしよう……ふぇぇ。
――仕方ナイ、我ノ竜玉ヲ使ウガヨイ。本来ナレバ我ガ魂ガ天ニ昇ルトキニ崩レルノデアルガ、残リノ魔力デ保護イタソウ。何故カハ分カラネド汝デアレバヨキフウニ使エルノデアロウ。
目の前にアメフトのボールみたいな大きさと形をした濃緑の石が降りてきた。確かに何かできそうな気がしてきた。この竜玉とあの骸骨があれば。
「ありがとうございます。私にどれだけのことができるか分からないですけど、精一杯頑張ります!」
――ウム、ソロソロ時間ノヨウダナ。汝ニ幸多カランコトヲ……。
今まで気付かなかったけど一気にこの場の雰囲気が軽くなった感じがした。恐らく成仏したんだろうなぁ。
ちょっとの間感慨に浸っていたけど。よく考えてみたら、魂が天に昇るってことはあのお姉様に収穫されたってことだよね?……うん、あまり考えないようにしよう。
「さて、お次は竜玉と骨だね〜」
多分だけどこれで死霊術士足り得ることができるでしょう! おっ!? キタキタ、来ましたよ〜、さっきと同じように頭に文字が浮かんできた!
「では、『魂無き骸よ、妾の魔力を偽りの魂としこの竜玉に込め、新たな生を与えん。妾の忠実なる僕となれ《死魔従属》』」
呪文を唱え終わったと同時に体から何かが竜玉へと移動していくのが分かる。どのくらい込めればいいのか分からないけど取りあえず十分の一ほどでいいかな。
竜玉が淡い緑の光を放ち、竜の骨全体に見たこともない文字のような紋様が浮かび上がっている。こちらも竜玉と同じ緑の光が脈打つように明滅を繰り返している。何となく耳なし芳一みたいだなぁ〜、なんて考えてたら竜玉から細い光の筋が竜の眉間を差していた。
「おっ、今度は深海の孤城リヒュタかぁ。うん? この窪みの形は……」
アメフトのボールみたいな形。これはこの竜玉を嵌めろってことだよね。そのためにはここを登らないといけないのかな。
「うんしょっ、よっこいしょっ。ふう、ここに嵌めればっと。ッギャ! 眩しい!」
目がぁ〜、目がってうわぁっ! 動いた! コイツ、動くずぉって高い! 急に立ち上がらないでよぉ〜。まったく、最後までやらしてよ。
「えっと、名前。そっか名前付けないとね。骨の竜だから……〔カルゥ〕。うん、我ながらいい名前だ」
こんな飛行機並みの大きさの竜に付けるには随分と可愛らしいけど。
それにしても動かない。命令しないといけないのかな。角にしがみついて〜。
「よし! 〔カルゥ〕、目指すはあっち! 太陽に向かって翔べ!!」
骨のみとなった翼を広げ、羽ばたくこと数回。土埃が舞うなか、ふわりと〔カルゥ〕の体が浮いた。翔べるかどうか心配してたけど、どうやら問題ないようだ。
暖かい太陽の光を正面から浴びて、眼下に流れゆく木々を眺めている。不思議と風は感じない。さて、これからどうなることか。私の冒険はここからだ!!




