【ZAR-076】灯の手書きメモ 再編3年8月初旬
接触の場所を決めた。
第七封鎖区画内、旧赤羽の集合住宅、三階の空室。
理由:
・閉鎖区画内なので、本会の眼が届きにくい
・第三班が定期的に巡回する区域
・三階なら、距離をとって会話できる
・退避経路が複数ある
時期:8月中旬の夜間巡回時を狙う
──
問題:彼女に「ここに来て」と伝える方法
選択肢を検討した:
・封鎖ライン内に手紙を投げ込む → 検閲の可能性、本人に届かない
・通信を傍受させる → 本会に気づかれる
・直接、視認可能な距離で姿を見せる → 撃たれる可能性
最後の選択肢を採る。
距離は安全圏を保つ。窓越しに姿を見せる。
彼女が私を撃たないことに、賭ける。
──
賭ける根拠:
・彼女は5/17で中村を撃ったが、撃ったあと撤退した
・撤退時、彼女は振り返らなかった
・つまり、確認しなかった
・確認しないということは、確認したくないということ
・確認したくない人は、もう一度撃つことを、ためらう
これは推測である。
推測が外れれば、私は死ぬ。
──
それでもやる理由:
本会の計画は止まらない。
明石先生は答えを持たない。
署名した同胞たちは「合意」を持っているが、それで何かが
止まる気はしない。
止まる可能性があるとしたら、それは「合意」の外で動く誰かが、旧人類の側に、もう一人「合意」の外で動く誰かと出会うことだ。
──
私が一人で動くことは、私の派閥の原則に反するかもしれない。
選択派は、組織にならないことを選んだ。
組織でない以上、私は誰の承認も得る必要がない。
私は私の選択をする。
これが「選ぶ」ということだと、私は思う。
灯




