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幽霊学園  作者: 久遠 零
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 ーー五十嵐(いがらし)朔久(さく)の過去ーー


 俺は4人家族の長男だった。下には3歳年の離れた弟がいた。俺は身長も高く厳つい見た目をしていたからか怖がられ友達と言うものはいなかった。それでも全く悲しくは無かったんだ。それは弟がいたからだ。つまりブラコンだった。


(もち)!!おかえり!今日の学校はどうだった!」

「お兄ちゃん!ただいま。今日は大丈夫だったよ」

「そうか!また何かあったら遠慮なく兄ちゃんを頼れよ!」


 弟の頭をよしよしと撫でた。兄の俺が言うとちょっとあれだが、弟はかわいい!俺が受け継がなかった要素を全て持っているようだ。そんな弟は軽いいじめにあっていた。親には相談できないようで、よく俺を頼ってきた。そんなことが嬉しくて、俺は弟をいじめるやつを懲らしめていた。小学校の低学年なこともあってそこまで陰湿なものは無く、少し脅しただけで簡単に解決することが出来た。このとき自分の見た目に初めて感謝した。この見た目のお陰で大好きな弟を助けられる。


 ただ、弟が高学年になったとき、今までとは比べ物にならない陰湿ないじめをするやつが現れた。


「なあ、望、最近なんか元気ないよな。どうした」

「大丈夫。何もないよ」


 顔を背けて、苦しそうな顔をしているのを見逃さなかった。


「いや、どう見たって大丈夫じゃない。お兄ちゃんに言ってみろ。いつも通りなんでも解決してやる!」

「だ、だめだよ。そんなことしたらお兄ちゃんにまで迷惑がかかっちゃう」

「安心しろお兄ちゃんが今まで出来なかったことがあるか?」


 その言葉で安心したのか俺に話してくれた。どうやら新しいクラスメイトがいじめてくるらしい。俺は早速そいつに会いに行った。


「お前、弟をいじめるのはやめろ」

「あー、あなたがお兄さんですか。なんでも暴力でしか解決出来ない脳筋だと噂になってますよ」


 俺のことを馬鹿にするように笑った。


「ちなみに僕はいじめてません。少し遊んであげただけです。後、僕に逆らうとこの街に住めなくなりますけど大丈夫ですか?」

「なに言ってんだお前。そうやって弟のことも脅したんだな!弟が苦しむような街、住む価値もねえよ!」


 俺はいつものように殴りかかった。少年は身軽に後ろに避け、俺は謎の男たちに囲まれた。そして、身動きが取れなくなってしまった。そうしている間に少年はその場を去っていく。


「お前!卑怯だろ!」

「うわー、怖い怖い。僕はただ後ろに避けただけですよ。まあ、でも馬鹿な人で良かった」


 小馬鹿にしたようにクスッと笑う。男たちに何か合図を出して、俺は家へと強制的に返されてしまった。

 それからはひどい毎日だった。弟だけでなく俺たち一家全体に犯罪まがいの行動が起こり始めた。ついに隠しきれず両親に相談した。両親は勝手に突っ走った俺のことを責めず、逆に慰めてくれた。このままあいつに逃げられるなんて俺のプライドが許さなかった。けれども、家族みんなで話し合った結果、遠くの街に引っ越すことになった。


「お兄ちゃん、ごめんね」

「兄ちゃんこそ何も出来なかった。ごめんな」

「ねえ、お兄ちゃん。1つお願いがあるんだ。聞いてくれないかな」

「おう!何でも言ってみろ」

「また、似たようなことが起こったら無理して助けなくていいよ」

「望……なに言ってんだ」


 弟の肩に手を添え真正面から顔を見る。その顔は予想してたものとは違い決意がみなぎっているようだった。


「新しい街についたら、体を鍛えて強くなる!そしたら、お兄ちゃんもやりたいこと出来るでしょ。今まで僕のせいで、友達とも遊べてなかったよね……お兄ちゃんもお兄ちゃんの人生楽しんで欲しい!」

「兄ちゃんは望が楽しいならそれでいいけど、そっか、そうだよな」


 ゆっくりと深呼吸をして、覚悟を決める。


「そろそろ、弟離れしないとな。分かった。新しい街ついたらちょうど高校に入学式だ。。そこで俺も高校生活楽しむよ。だだ、望。これだけは約束してくれ、本当に無理なときは兄ちゃんを頼ること」


 弟は満面の笑みで、力いっぱい頷いた。


「うん!ありがとうお兄ちゃん!」


 2人は抱きついた。弟が楽しそうにしてるのを見ると俺が嬉しいように、弟も俺が楽しんでる姿を見たかったとこのときやっと理解した。



 新しい街に車で向かってる途中、事件が起こった。後ろからトラックが追突してきた。俺たちは後部座席に座っていて直に激しい衝撃がきた。俺は弟の手を握った刹那、意識を失ってしまった。


 幽霊として目覚めるとすべての記憶がなくなり、早く成仏しないとって焦燥感に駆られていた。多分早く、一緒に死んでしまった家族に、いや、弟に会いたかったんだ。


 弟がいる場所は分かった。後は会いに行くだけ、そしたらきっと一緒に成仏できるはずだ。

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