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麻耶は自信満々に「わからない」と言い切った。
「そっか。わからないか」
支音は頬に手を添える。
「こんな話じゃなくて、もっと楽しい話がしたいよー」
「んー」
支音は生返事で答える。
「ちゃんと考えてくれてるの?」
「勘なんだけど、勉強嫌いが未練に関わってそうだなって」
「うぇーー」
麻耶は頬を膨らませて、しかめっ面をする。
「あんたの言い方だと、私の未練が勉強することみたいじゃん。嫌だよ、そんなの」
そばに置いてあった漫画を取り、また読み始めた。
「まだそうと決まった訳じゃないから! もうちょっと考えてみようよ!」
支音の言葉は麻耶の耳に届いていないようで、漫画から目を逸らそうともしない。
支音は頭を抱える。
「何やってんだ?」
唐突に後ろから声がかかる。振り返ると1人の男子生徒がバッグを片手に立っていた。
「朔久くん!」
支音の声に反応して、麻耶も振り返る。
「お、五十嵐くんだ」
麻耶は朔久と支音の顔を交互に見る。
「2人ってそんなに仲良かった?話してるところ、見たことなかったけど」
「私が初めて未練を見つけたのが朔久くんだったからね」
「仲良くはない。で、」
朔久は麻耶の手元を指さす。
「相当、余裕なようで」
「いやいや、五十嵐くんも同じでしょ? 勉強しなくていいんだから遊ぼうよ!」
麻耶は手招きして、朔久を呼ぶ。しかし、朔久はその場で止まり、ただ首を傾げた。
「は? なんで勉強しなくていいんだ?」
「え? いや、だって、もう無駄なんだよ! 五十嵐くんは未練も見つかったでしょ? 勉強なんかしなくていいじゃん」
「悪いけど、価値観が違うみたいだな。俺はこの最期に与えられた学園生活を楽しみたい。それはテスト勉強ももちろん入る。だから、遊べない」
それだけ言って朔久は立ち去ろうとするが、最後に一言付け加えた。
「後悔しないように楽しめよ!」
支音は手を振ってる。その隣で、すごい勢いで睨みつけている。
「何あれ? 意味わかんない。勉強が楽しめるやつはいいよね」
「麻耶さんも、勉強が楽しかった瞬間はないの?例えば、難しい問題が解けた瞬間とか」
「ないよ。勉強が楽しいだなんて」
「授業は? 楽しくないの?」
麻耶の意識が漫画に向く前に慌てて畳みかける。このチャンスを逃せば、どんどん勉強時間が減ってしまう。
「楽しいってか……授業は受けないと、じゃん」
「授業だって、もう適当に受けてもいいんじゃない?」
「でも、なんか、うーん」
腕を組んで、唸っている。しばらくして、ぱっと顔を上げた。
「そうだ。昔は授業も勉強も楽しいって思ってた」




