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教室を出て麻耶は先陣を切って進んでいく。置いていかれないようについていくと麻耶と支音がたどり着いた場所は、なんと校庭だった。
夕暮れで、空が紅く染まって、生ぬるい風が頬を撫でる。
麻耶は側の木の下で腰を下ろす。
「適当に歩いてたら、ここにきちゃった」
「適当だったの?目的地があるんだと思ってた」
そう言って、支音も隣に座る。
「麻耶さんは、なんか、えっとー。……あっ、好きなものある?」
「そんだけ考えて、それしか質問ないの?」
「まあまあ、好きなものがその人の未練ってことが多いからね」
「好きなもの。好きなもの」
麻耶は腕を組んで、頭を捻っている。
「おかしとか?漫画も好きかな。雛たちと一緒にいるのも好きだな」
麻耶は思いつくままに色々なものを挙げている。しかし、支音にはどれもピンとくることがなかった。
「他には?もっとなんか、こう、いい感じのものはないの?」
「そんなこと言われても」
麻耶は不貞腐れて、カバンの中にしまっていた漫画を取り出して、その本の世界に入り込んでしまった。
「諦めないで! 漫画はしまって!」
「私はちゃんと好きなものを挙げたよ。後はあんたの仕事でしょ」
「麻耶さんはどうでもいいかも知れないけど、私は早く勉強に戻りたいの。協力して!」
「ちゃんと協力してるよ。好きなもの以外に何かあるの?」
「えーっと」
支音は先ほどまでの勢いを失い目を逸らす。そして、慌てて次の質問を考える。
好きなものを聞いても意味はなかった。そう考えると次の質問は自然と思いついた。
「嫌いなものは?」
「嫌いなもの!? うーん、なんだろう」
麻耶は開いていた漫画を地面に置き、考え始めた。
「勉強じゃないの? 嫌いって言ってたし、勉強会でも1人だけ勉強してなかったよね?」
支音はすぐにその答えが返ってくると思っていたのに、結果はそうではなかった。この様子に支音は違和感を感じた。
「もちろん。勉強は嫌いだけどさ、なんか違うんだよね」
「勉強だけなら好きなの?」
「うーん。別に好きではないけど、授業はまともに受けてるよ」
支音は目を見開く。しかし、すぐにあることを思い出し、思い直す。支音から麻耶は授業中でも見える位置にいる。麻耶が授業中に寝ているということはなかった。もちろん、こっそり遊んでるということもない。
「じゃあ、なんで勉強しないの?」
「いや、勉強嫌いだし」
「えー」
一瞬で支離滅裂になる麻耶の発言に支音は軽く引く。
「あっ! 復習が苦手とか?」
「授業中の復習が嫌だと思ったことはないね」
「何が嫌いなの?」
麻耶は目を瞑って、考える。少し経って、目を開いて、言い切る。
「わかんない」




