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支音に声をかけられた麻耶は力なく頷く。そして、ぼそりと呟いた。
「勉強きらい」
「麻耶は本当に勉強嫌いだね。そんなこと言っても意味ないんだから、やるしかないでしょ!」
雛がノートから目を離さず口を挟む。麻耶は頬を膨らませる。
「なんで勉強なんてしないといけないの?」
「そりゃあ、」
支音はそこで止まり、口を閉ざす。
「あんたはいいよね。まだ、未来があるんだから」
睨みつけられたため、気まずく目を逸らす。この学園の中で一年後も生きている可能性があるのは支援者以外にいない。他のクラスメイトはみんな幽霊でこの学園はほんの少しの猶予期間に過ぎない。それがわかったからこそ、支音は何も言うことが出来なくなってしまった。
「麻耶。うるさいから、帰りな」
雛が冷たく突き放す。
麻耶は机の上のものを片付け始める。
「え、いや、え?本当に帰るの?」
「麻耶はやる気がないんだよ。そんな人がいたって迷惑なだけ。支音たちはやる気ある?」
支音は真っ直ぐに頷く。苺花とカレンも同様に頷く。
そんな話をしている間に麻耶は準備を終えたようで、立ち上がっていた。
「芹亜帰るよ!」
「え!私はまだいるよ」
断られると思っていなかった麻耶は目を大きく開いたが、すぐに顔をしかめる。そのまま、ズカズカと出ていき、開いた扉を乱暴に閉めた。
「え?本当にいいの?私、追いかけようか?」
「行かなくていいよ。うちらは部屋も一緒だし、時間が経てば落ち着く」
慌てている支音とは対照的に冷静に雛は答える。
この日はこのまま、特に変化もなく、勉強会は終わった。
次の日も同じように、勉強会が開催された。麻耶も普通に席に座っていた。しかし、机に広げているのは教科書ではなく、漫画だった。
「まあ、別に静かにしてるし、いいよね?」
雛が有無を言わさぬ迫力で言う。反対する者もおらず、昨日と同じように勉強をする。
しばらく勉強を続けていて、支音は疲れて背伸びをする。
「休憩する?」
「少し、伸びただけだから、大丈夫だよ」
雛からの思いがけない提案に、驚きつつも断る。
「ちゃんと休憩しないと、捗らないしね。みんなで雑談しよ」
支音の返事を無視して、お菓子がどんどん出てくる。
「ほらほら、みんな一旦休憩」
雛は自分で出したお菓子を一つつまみつつ、残りをみんなに差し出す。
「せっかくだし、もっとお互いのこと知りたいね?」
雛が頭を悩ませていると、麻耶が手を挙げる。
「ねえ!ねえ!支音は置いておいて、カレンと苺花はなんで勉強するの!?」




