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結奈はいつもと違い元気のない声で言った。
「無理かもしれない」
支音と綾華の2人は首を傾げる。
「この地区から県大会に行くのは無理かも知れない」
「どうして!?」
支音が驚きの声を上げた。結奈はうなだれながらも説明する。
「この地区から県大会に出場出来るのは一校なんだ。そして、この地区には全国大会でも戦って行けるような学校が一校ある。つまり、県大会に行くのに全国大会出場レベルの力が必要になるの」
それを聞いた2人はあんぐりと口を開ける。綾華は拳を作り固く握った。
「私たちがやるしかないよ!そんなに強いチームなら情報が集まり易いかも!少しでも勝てるようにしよう!」
綾華の言葉に2人は力強く頷く。
今日はここまでにし、実際に動き始めるのは休日にすることにした。支音が眠る前に結奈に軽く肩を叩かれる。
「もしかして、綾華に何か話した?」
「ちょっとだけね。話したと言うか話を聞いただけだよ」
もう電気も消えていたため、結奈の表情は見えない。
「おやすみ」
結奈はそう呟いて、自分のベッドに向かった。それを見て、支音もベッドに寝転がる。
休日になり、3人は外出の準備を始めた。考えた作戦は単純だ。結奈の事前情報によりこの学校以外は警戒する必要がないと分かった。そのため、強豪校の一校に絞って調べることになった。今日はその学校に張り込み情報を集めることになった。まずはグラウンドを外から眺めて練習風景を観察する。端から見ればただの不審者だ。しかし、サッカー部にはファンが多かったため、埋もれることが出来た。ファンの黄色い歓声のお陰で、会話もうまく紛れることが出来た。
「どう?綾華?」
「うん。ここなら、うまく観察できるね」
綾華はニヤッと笑う。3人は手分けをして、それぞれの選手の特徴をメモしていく。それぞれの選手に一定数のファンが居るようで、人を見分けることは簡単だった。しばらく3人は練習風景を見続ける。至音がふと声をあげる。
「ねえ、私サッカーは授業でやったことしかないんだけど、いったい何を調べたら良いの?」
「私も分からない。結奈、わかる?」
「……素直に聞こうか」
詳しい人が誰もおらず、しっかりと確認をとってから後日また調査することにした。
大会までの数日間は、敵校の視察とメンバーの練習の手伝いに奔走する日々となった。そしてあっという間に大会当日となった。




