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結奈が部屋を出ていき、至音と綾華が取り残される。
「綾華ちゃん、もしかして体調悪い?」
「は?なんで?」
まるで初対面の頃に戻ったかのような刺々しい声で言う。
「いや、私にあった時はあんなに未練を解決しない私のことに怒ってたのにどうしたのかなって」
「別にどうでもいいでしょ」
「良くないよ」
綾華は顔を背ける。そむけた方に回り込んで顔を見る。その顔は明らかに不機嫌そうだった。
「まあ、ほらね。話すだけで楽になるとかあるじゃん。でも、綾華ちゃんが大丈夫ならそれで」
面倒そうな気配を感じて至音は距離を取ろうとする。
「話聞いてくれるの?」
逃げられないと悟り、近くに椅子に座る。
「アドバイスとかは出来ないよ」
「誰もあんたにアドバイスは求めてないから安心しな」
至音は少し綾華の顔が緩んだように感じられた。
「私ね。全然うまく行ってないの」
「え?何が?」
綾華は至音のことを静かに睨みつける。
「未練の解決が」
「え!?なんで?綾華ちゃんあんなに頑張ってるのに?」
「私の何を知ってるの?」
「ああ、ごめん。でも、あんなに未練解決に向けて本気だった綾華ちゃんがそうなるなんて思ってなくて」
「そうだね。私も思ってなくてあんたのこと馬鹿にしてた」
「ええー」
綾華が驚いたように振り返る。
「え、気づいてなかったの?」
至音は気まずくなり苦笑いでその場を済ませる。
「まあ、とにかく私は押しが強すぎちゃったの。そのくせ人望もないからクラスメイトにうざがられちゃって。自業自得だよね。私には厳しかったんだよ」
言葉が弱々しく小さくなる。その言葉には諦めのようなものも感じられた。至音は励ましの言葉も思いつかず、話を変えることにした。
「綾華ちゃんはなんでこの学校きたの?」
「簡単だよ。死んだ親友が会いに来たんだ。正確には結奈の双子の妹ね」
「双子ってことは、同級生だよね?この学校は高校生しかいないし、どういうこと?」
「この学校の中学生版のところがあるの。そこから来てくれたの。あの時会いにきてくれたから、私は今生きてる。それぐらい重要な出来事だった」
昔を懐かしむように遠い目をする。
「同じような境遇の人の力になりたいと思った。だから、この学校に来た。結奈も同じ。いや、結奈の方がもっと想いが強い」
「そうだったんだ」
しばらく、沈黙する。先に話を再開したのは支音だった。
「綾華ちゃん!今回の未練頑張ろうよ!」
「言われなくても、やるよ」
ぶっきらぼうに言った。
「そー言うことじゃなくてー。全力でやるの!」
肘を軽く曲げたまま、両腕をぐっと握る。
「一緒にね!」
綾華は訳のわからないと言ったような表情を見せる。
「私ね。1人の未練を解決したら、その噂が広まって解決してほしいって相談に来る人がいたんだ。だから、それと同じだよ!今回の未練を解決したら、きっと綾華ちゃんに相談したい人が来るよ!」
「そうかもね」
相変わらずそっけない言い方だったが、顔を見ると口角を上げていた。
部屋の扉が開き、結奈が帰ってきた。行きのような元気さはなく、落ち込んでいた。




