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「え……?なんで?両思いじゃなかったの?」
彼方は遥の体に回していた腕を離し、肩に手を添えて真正面から顔を見る。遥は気まずそうに目を逸らす。遥が何かを話そうと口を開く瞬間、部屋の扉が開かれる。開かれた扉を見ると、カレンが立っていた。後ろには至音と苺花が焦った顔をしている。
「なんで!?遥の夢がやっと叶うんでしょ!」
「あー、みんな来てたんだ」
「ごめんね。遥ちゃん。カレンちゃんのこと止められなかった」
「カレンさん、邪魔しちゃだめだよ」
カレンの右手を至音が左手を苺花が持ち、引っ張って部屋から出ようとする。
「いや、良いよ。3人ともここにいて、みんなのお陰で気持ちを伝えられたの最期までここにいて。お願い」
2人はカレンを引っ張るのを止める。静かになって彼方はもう一度遥に問いかける。
「なんで、彼女になれないなんて言うんだ?もしかして、俺のことが嫌いなのか?」
「そんなわけ無いじゃん。好きだからだよ。好きだから彼方には幸せになって欲しいの」
「俺は遥が彼女になれば幸せだよ」
「そうは行かないでしょ。まだまだ、先が長いんだよー」
彼方が遥のことを抱き寄せる。
「遥がいればいい」
「私は彼方が幸せになって欲しい。お願いがある。聞いてくれるよね」
「ずるいよ。そんな言い方。でも、聞くよ」
一呼吸おいて、遥は言う。
「彼方が私のことをずっと忘れずに永遠に思い続けてくれるって、それは私にとっても素敵で嬉しいことなんだ」
彼方は逸る気持ちを抑え、話の続きを聞く。
「でもね、それ以上に私のせいで彼方の幸せを奪ってしまう可能性があるのが本当に苦しいんだ」
「俺は遥以外に誰かを好きになるなんて考えられない」
「うん。今はそれでいいよ。でも、覚えておいて私以外の人を好きになっても良いんだよ」
彼方はなかなか返事を返すことが出来ない。目の前には涙で目を潤ませた好きな子が立っているからだ。ここで、肯定以外の返事をするのは本当の意味で遥のことを思っていない。それが分かっていながら、ただ、立ち尽くす。長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「うんって言わないと、遥は安心して成仏出来ないんだろ。それなら、うんって言わないほうが俺にとって得かもな」
遥と似たように目を潤ませながら、冗談めいた口調で言う。
「だめだよ。至音にも迷惑かけちゃうし、幽霊はいつか消えるべきなんだよー」
「そうだよな」
大きく息を吸い込み、深呼吸をする。
「約束する。遥がいなくても俺は絶対に幸せになるって!」
「うん」
「でも、これだけは許してくれ。遥のことは絶対に忘れない」
「うん!」
遥の体がキラキラと光りだす。
「お別れみたいだね」
遥の顔は涙が流れているが、満面の笑顔だ。
「カレン、苺花。短い間だったけど、一緒に過ごせて楽しかったよ」
「私だって、遥と一緒に居れてよかったよ!」
「苺花の方こそ、苺花のお菓子食べてくれてありがとう」
「遥!安心してね。こいつが約束を違えることがあったりでもしたら、私がガツンと言うから」
「あはは!ありがとう」
至音の方に向き直る。
「至音もありがとうー。至音のおかげで私の未練も無事に解消できそうだよ」
「私はあんまり、役にたたなかったかもね」
「そんなことないよ。あの時は急に逃げてごめんね」
「大丈夫だよ。未練が解決できたなら良かった」
遥の体の光が徐々に増えていき、全体が薄くなってきている。彼方の方に向き、急に飛びつく。それに彼方はしっかりと反応をし、受け止める。
「大好きだよ。彼方」
「俺も大好きだよ。遥」
「好きになってくれてありがとう」
「俺こそ、好きになってくれてありがとう」
2人の顔には涙などなく、満面の笑みだった。キラキラとした光が遥にまとわりつく。その光が散った時遥の姿はそこにはなかった。部屋には散った光が満たす。それはとても眩しく温かいものだった。




