21
至音たちは朝倉と表札の書かれた家の前に立っている。
「ここに遥がいるの?」
カレンが彼方に聞く。
「ああ、ここぐらいしかないだろう」
彼方はチャイムも押さずに慣れた手つきで玄関の扉を開ける。鍵もかかっていなかったようですんなりと開いた。心奈が突然声をあげる。
「私は外で待ってるねまたややこしいことになったら大変だしね。絶対に仲直りするんだよ」
彼方はその言葉に対して強く頷き返し中に入る。
家の中に入ると他の部屋には脇目もふらずどこかに向かう。
「俺と遥はよくお互いの家にも遊びに行ってたんだ。おそらく遥は自分の部屋にいる」
とある部屋の扉の前に立ち止まる。
「ええっと、誰かまず入ってみてくらないか」
彼方は急に弱々しくなる。そんな態度にカレンがムスッとする。
「あんたが行った方がいいに決まってるでしょ」
苺花もそれに頷いて言う。
「私達があいだになるより、直接向かい合ったほうが気持ちが伝わると思うよ」
最期に至音が一歩前に出て言う。
「行って来てよ。私達は逃げられないようにここで退路を塞いでるから。遥ちゃんのこと任せたからね」
彼方は3人の顔を一望する。そして決意を固めたような顔に変わる。
「行ってくる」
扉に手をかけてゆっくりと開き中に入る。中はカーテンが閉めてあり、電気も付いておらずとても暗かった。恐る恐る声を出す。
「遥?居るか?」
部屋の隅に目線を移すとうずくまって顔を伏せている遥がいた。
「遥。さっきはちゃんと話せなかったからまた会いに来た」
遥は何も反応を返さない。顔も見えないためどう思っているのかも分からず、彼方は続きを話すのをためらう。しばらく、沈黙が続くがそれを破ったのは遥だった。
「うん。私も話したいことがある。話さなきゃいけない……。聞いてくれる?」
顔をあげて彼方のことをまっすぐと見つめる。彼方は返事をせず、目の前に座り見つめ返す。
「喧嘩した日のこと覚えてる?……いや、私が一方的に怒っちゃった時」
「俺が無神経なことを言った日だろ。覚えてるよ」
「あの日はごめんね。自分でも感情がぐちゃぐちゃになってた。
「いや、謝るのは俺の方だよ」
「彼方はちゃんと謝ってたのに私が無視してただけ」
押し問答が続く。
「こんなことを話したいわけじゃなかったね」
一息深呼吸をする。
「私、彼方のこと好き」
遥は目をそむけてはっきりと口にした。




