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幽霊学園  作者: 久遠 零
2/14

 入学早々、ハプニングが多すぎて校門の前に立っていたときの高揚感はすっかりどこかに消えて無くなってしまった。そんな気持ちのままいつの間にか寮の前に到着していた。

 ここの学生寮は3,4人で1つの部屋が割り当てられている。寮母さんに部屋まで案内してもらい、部屋に入る。部屋にはすでに人が2人いた。


「あなたが上天(かみあま)支音(しおん)ちゃん?私は白玉(しらたま)結奈(ゆな)。これからよろしくね!」


 ショートカットの1箇所だけ白メッシュになっているのが特徴的な女の子が、飛び切りの笑顔で握手のために手を差し出してくる。その手を取りつつ答える。


「こちらこそよろしく!もう一人の子は?」

「あぁ、この子は桜中(さくらなか)綾華(あやか)。同じくルームメイトだよ。ほら、黙ってないで挨拶しな」


 机に向かっていた綾華を引っ張って無理矢理至音の前に立たせた。綾華は少しウェーブのかかった黒髪で吊り目が特徴的で近寄りがたい雰囲気があった。


「よろしく」


 一言だけ発し元の机に戻って行った。


「ごめんね。綾華は人付き合い苦手だから」

「いやいや、大丈夫だよ。それより部屋は幽霊と一緒じゃないんだね」

「そうみたいだね。支援者は同じ部屋になるみたい。多分男子寮も支援者2人は同じ部屋なんじゃないかな?」

「そうなんだ。あっ!そういえばさっき困ったことがあったんだ」


 首を傾げる結奈に先程絡まれた男の話をした。


「もう。未練なんて他人の私が分かるわけないのにね」


 言い終えた瞬間、ドンと机を叩く音が聞こえた。音の方向に目を向けると、綾華が乱暴に立ち上がりこちらに向かってきた。


「何ふざけたこと言ってんの」

「えぇ?そんな怒ること言ってないよ?」

「あんたは支援者に選ばれて何でそんな馬鹿なことが言えるの!」


 答えようとした支音の返事も聞かずに綾華は部屋を飛び出した。


「綾華!」


 結奈も叫んで追いかけようとしたが扉を出る前に止まった。


「ねえ、結奈ちゃん。今のって私が悪いの?」

「うん。そうだね。この学校について説明しようか」


 至音は突然怒鳴られたことに戸惑いながらも話を聞いた。


「まず、この学校には私達と同世代で亡くなってしまった幽霊が成仏するために集まってくるの。幽霊は個人差があるけどみんな記憶を無くしてるんだ。特に成仏に必要な未練の記憶がない人が多いの。そんな幽霊たちを助けるのが私達支援者ってわけ。至音ちゃんが言った男子生徒は支援者に助けを求めてたんだよ」

「そうだったんだ。でも、具体的に何をすればいいの?私は特別な術とか何もないよ」

「それは人によって違うから基本的には手探り。ただ、大体の幽霊はもう一度学校生活をするのが未練だから1年が終わるときに達成できるよ」

「1年でいいの?」

「うん。1年で役目を終えたら普通の高校に2年生から転入が出来るよ」

「良かったー。1年我慢すればいいだけか。でもでも、JKの1年ってなかなかに貴重だよ。ねえ、結奈ちゃんもそう思うよね」


 結奈は目を逸らして、少し歪んだ笑みを浮かべた。


「そうかもね。明日私と一緒に今日の男子生徒に話を聞きに行かない?」

「うーん、ちょっとめんどくさいけどそれが支援者の役目だもんね。仕方ない。そういえば、出ていった綾華ちゃんは追いかけなくて大丈夫?」

「あー、多分男子生徒を助けに行っただけだよ。今頃男子寮で門前払い食らって帰ってくるよ」

「そっか。そしたら今日はもう寝て明日に備えよう!」


 そう言って至音の名前が書かれたベットに潜り込む。布団を被ったあとに挨拶を忘れたと思い出し顔を出した。結奈は少し驚いた様子だった。


「色々教えてくれてありがとう。明日もよろしくね。おやすみなさい」

「おやすみ」


 それを聞いて目を閉じる。そろそろ眠れそうとなったとき、突然ガシャンと物が割れたような音が響いて慌てて起き上がる。


「どうしたの!」


 見ると結奈の足元にコップの破片が散らばっていた。至音が起きたのに気づいたようで振り向いた。


「ごめん。コップを落としちゃった。自分で片付けるから大丈夫だよ」


 片付け始めたのを見て特に気にもせず、また夢の世界に落ちていった。

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