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幽霊学園  作者: 久遠 零


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ーー朝倉(あさくら)(はるか)の過去ーー


 私と遠野(とおの)彼方(かなた)は小さな頃からずっと一緒だった。家が近所だったのもあり、何をするにも行動を共にしていた。彼方は私に取って大切な人だったんだ。でも、それは、恋人になりたいとかそういうものではなかった。どちらかと言うと親友みたいなものだと思っていた。あの時までは。

 今日もいつも通り一緒に帰ろうと彼方のことを待っていた。教室に入ろうとした所、彼方と男子の友人との会話が聞こえてきた。


「なあなあ、彼方って朝倉と付き合ってんの?」


 何故か驚いて、扉の前に止まって聞き耳を立てた。今までも2人で過ごしているとカップルだとからかわれることがあった。その時は適当に否定していたが今日は何故か隠れてしまった。


「いや、それよく聞かれるけど、付き合ってないよ」

「ずっと一緒にいるじゃん。じゃあさ、じゃあさ、彼方はいったい誰が好きなの?」

「えーー、特にいないかな?」

「そんなわけないだろ。口籠るってことは、やっぱり遥なのかー」

「違うっていってるだろ!」

「そしたら誰だよ。……あっ!!わかった。彼方、隣のクラスのえいこちゃんだろ!」

「……そうだよ」


 その言葉は適当なものだった。私は彼方が面倒になって頷いたものだとわかった。それでも彼方の友人はその答えで納得したようだった。


「そうだと思ったんだよね。俺さ遥のこと好きなんだよ。好きなものとか教えてくれない?」


 彼方にしつこく聞いていた理由がやっと分かった。自分のライバルになるかどうかを確認したかっただけだ。本当にくだらない。私たちは恋人のような気持ちで一緒にいるわけではないのだから。


「え、遥のことが好き?ああ、止めた方がいいよ。そんなに良いやつじゃないよ」

「そんなこと言ってるけど、あんたたちいっつも一緒にいるじゃん」

「もう、腐れ縁みたいなものだよ。別に一緒に居たいからいるわけじゃない」


 なんか、心が痛む。一緒に居たいと思っていたのは私だけだったのか。彼方はずっと私と同じ時間を過ごすことを苦痛に感じていたのか。私は先程の会話からこうやって解釈した。涙が流れるとかそういうことはない。でも、心には深くダメージを負っていた。これ以上、知りたくもない情報を聞き続けるのが嫌になり、思い切って教室の扉に寄りかかり遠くから呼びかける。


「彼方ー!帰るよー!」

「ああ!今、準備する」


 彼方は近くに掛けてあったカバンを手に取り、軽快に背負いあげる。駆け足で教室を出る直前、先程まで離していた友人の方に向き直り手を振る。


「またな!」


 廊下に待っていた私の隣に立ち、ゆっくりと玄関に向かって2人で歩き始める。


「ごめん。待たせたよね」


 その言葉に私は返事を返せない。いつもなら軽々しく許しているところだが、今日はうまく言葉が思いつかない。私の機嫌が良くないことに気がついたのか恐る恐るこちらに訪ねてくる。


「もしかして、さっきの話聞こえてた?」


 無言のまま静かに頷く。そのまま、彼方のほうをチラリとみると、困ったような顔をしていた。


「いや、あのー、さっきのは、なんというか言葉の綾だからさ。そんな本気とかじゃないから。気を悪くしたらごめん」


 明らかに動揺が隠しきれていない。嘘が見つかった時の子供のようだ。


「普段から考えてないことをそんなスラスラと口に出せるわけないでしょ」

「違う!でも、遥のことを傷つけたのは事実だよね」


 彼方は立ち止まり、私の方に体を向けてお辞儀をする。


「本当にごめんなさい。俺はこれからも遥と一緒にこうやって過ごしたい」

「じゃあなんで、あんなこと言ったの?幼馴染だからって言うだけで良かったじゃん!」


 つい語気が強くなる。彼方の今の誠実な態度と先ほどの発言がどうにも一致しない。どちらかが嘘だと思ってしまう。そうすると今の発言が嘘のように感じている。


「その、理由はあるけど、まだ話したくないからもうちょっと待ってて貰っても」


 目が合わない。後ろめたいことでもあるのか。この発言で確信した。やっぱり先ほどまでの発言は嘘だと、理由は分からないが私のことを利用したいんだ。それまでは機嫌を損ねないようにしたいらしい。


「もう、信じられない」


 そう吐き捨てて、その場から走り去る。後ろから名前を呼ぶ声が聞こえるが無視して走り続けた。人や車、虫の音何一つ聞こえない道を1人で走った。

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