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間章 ギルド職員石元鉄雄の災難

やあ、私は石元鉄雄。

ダンジョンギルド職員の実行部隊に所属していて、主な任務はダンジョン低階層の巡回と、初心者講習の教官をやっている。

中々大変な仕事だが、それに見合った給料を貰えていてとても満足している。


人からの感謝を受けたり尊敬の眼差しで見られる誇り高い職業だと自負しているのだが、最近はその自尊心も削れて来ていた。

それと言うのも上位スキルを持つ人物が現れたのが原因だ。


上位スキルとは希少なスキルで、ダンジョンが現れてからの長い年月の間に日本では15人しか確認されたことが無いほど珍しい存在だ。

運の悪いことにそのスキルを持った人物が私の初心者講習にやって来ていて、私はその事に気付かず上司の報告を怠ってしまった。


上位スキルを持つ少年のスキルのステータスを見たにも拘らず、私はその時感じた違和感を自分の中にしまい込んでしまったために、厳しい叱責と減給を言い渡された。


ただの上位スキルの見逃しならばここまでの処罰は下されなかったが、その少年の能力でエリクサーを作製出来ることが判明したので、今回処罰されることになってしまった。


こんな所で言い訳してもしょうがないのだが、理由としては同じ初心者講習に大臣の娘さんがいた事だ。

丁重に持て成すようにきつく言われていて、講習がやりやすいように同年代の少年少女で受けられるようにと調整がされていた。


本当は講習を受け持っていた時に私は緊張でガチガチだったが、それを悟られてはいけないと必死に堪えていた。

そして大臣の娘さんの動向に注目していた私は、明らかにおかしい少年を見逃してしまったのだ……。

レベルを上げるのに100体近くのスライムを狩らなければいけないなんて、冷静に考えてみればおかしなことだった。


今回の事件の処罰は私だけに収まらない。

同じギルド職員だが、主な業務は窓口の受付やデータの処理などをやっている中山さんも同じ処罰を受けた。


彼女は、上位スキルを持った少年が犯罪者パーティーを打倒した時に担当した窓口職員だったのだが、その時の対応が悪かったためにギルドに協力してくれないのではないのかと責任を取らされたのだ。


褒賞も無く一度の食事を用意しただけで、命をかけて治安を守った存在に対しては渡すべき報酬が安すぎる。

この意見には同意するが、食事一回だけで他に報酬を渡さなかったのはギルド上層部だ。

その不始末を職員一人に押し付けるのは、私はどうかと思った。


しかし、その責任の一端は私にもあるために何も言えない。

私が少年を講習の段階で見つけて、ギルドに協力できるように動いていれば誰も咎められることは無かったのだ。


それと、この事件でギルド職員の一人が逮捕された。

私の先輩であり、実行部隊に所属している加藤さんだ。

彼は犯罪者パーティーと繋がりがあり、情報の横流しや犯罪の隠蔽を行っていた。


探索者は自己責任だが、探索者になったばかりの初心者が魔結晶を持ち出した時に4階のトラップで死なないように実行部隊が巡回を定期的に行っている。

だが加藤さんはこれを利用して、犯罪者達が殺人を行えるように他の探索者の通行を制限して犯罪現場に来れないようにしたり、死体を隠す手伝いをしていた。


死体を隠すだけではなく、ダンジョンに入る際にはゲートを通る時にデータが残るのだが、これを全く架空の人物にすり替えてダンジョンに入ってないことにしたりもしていた。


こうすることで被害者は何処か外で行方不明になった事になり、ダンジョン内での事件の疑いを逸らしていたのだ。


しかしそうした工作も、上位スキルの少年に犯罪者パーティーが捕らえられて全て暴露されてお縄になったわけだ。


話を少年に戻すが、どうにかエリクサーを作製出来る少年と契約できるようにギルドは動いていたようだが、事件が起こってしまった。


ダンジョン暴走が発生してしまい、あろうことかダンジョン職員になっていた大臣の娘さんと件の少年が、ダンジョンのトラップでどこかへと飛ばされてしまったのだ。


勿論相手が誰であろうと、暴走状態のダンジョンに取り残された者を助けに行くのがギルドの実行部隊の務め。

ギルドの総力を挙げて救出作戦が決行された。


ダンジョン内を自由に行き来できる『ダンジョンムーブ』のスキルを駆使して救助を続けるが、一向に見つからない事態にギルド長も焦り出して現場の職員に口汚い言葉で叱責するが、そんな行為で効率が上がるのならば苦労はしない。


二人の行方が分からなくなって3時間は過ぎた頃に、ひょっこりと大臣の娘さんが帰って来た。

彼女の話によると48階に飛ばされた後、50階ボスを倒して脱出ゲートを使って戻って来たと言う。


話を聞いて流石は上位スキルだと感嘆の思いを抱いたが、肝心の彼の姿はなかった。

情報を手に入れたので救助隊は50階付近を隈なく探したが、いくら探しても彼の姿は見つけられなかった。


脱出ゲートが何らかの不具合を起こしてまた変な所に飛ばしたか、それとも空間の隙間にでも閉じ込められたのか、暴走状態のダンジョンなら十分にあり得ることだった。


救出が絶望的に思えてきた時に、これまた彼はひょっこりと帰って来た。

こちらが心配していた思いとは裏腹に、まるで散歩にでも行っていたような表情にイラついた職員も多かった。私もそうだ。


しかし相手は上位スキル持ちの存在。

この程度のトラブルは散歩と同じなのかもしれない。

それにエリクサーを作れる存在に悪態をつくことなど出来る訳が無い。


そもそも今回の事件が起こった時、ダンジョンに居合わせた彼が1階のゾンビ軍団を殲滅してくれたおかげで迅速な救助活動が出来た。

感謝をするべきであり、叱責するなんてもってのほかだ。


ダンジョンムーブに使った代金はギルドとして痛いが、大臣の娘さんと上位スキルの少年が無傷で帰って来れたので良かった。


だが、結局我々ギルドが今回の事件に対して出来たことは何もない。

上位スキルの少年に大きな借りが出来てしまい、頭を上げられなくなってしまった。


ギルドは自分が優位に立って契約を結びたいだろうが、それは無理だろう。

でも、契約がされなければギルド職員の私の安寧は無いのだろうなぁ……。

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