27話 二次遭難したけど、ここから入れる保険ってありますか?
「うっ……一体何の光だったんだ?」
直哉は眩い光に包まれて、気が付くと知らない場所にいた。
壁を見るとここがダンジョン内部であることは分かったが、それ以上のことは分からない。
なので一緒に飛ばされた麗華に聞いてみることにした。
「大泉さん、さっきの光は何だったんだ?」
「あれは多分、ワープトラップの光です。
宝箱を開けた時や仕掛けを触った時に発動する罠です。
ダンジョン内のどこかへ飛ばされる罠ですが、2階で発動されたことは一度もありません」
「つまり、あれも暴走状態のダンジョンが起こした現象ということか……大泉さんは注意してくれたのに、オレの不注意で罠に掛かってしまったどころか巻き込んで申し訳ない!」
「頭を上げて下さい。
自分で決めて行動した結果ですから、直哉さんに謝ってもらう必要はありません」
直哉は頭を下げて謝ったが、麗華は全然怒った様子はなかった。
それどころか冷静で、こうなった経緯よりもどうすれば脱出できるかを考えていた。
「問題はここが何階かが重要ですね……。
低階層なら歩いて戻れますが、もし高階層なら……」
麗華は途中で言葉を紡ぐことをやめた。
いま必要なのは助からないかもしれないという絶望ではない。
絶対に生きて帰るという希望が大事なのだ。
幸い、飛ばされたフロアにモンスターはいない。
すぐに襲われる危険が無いので、直哉達はこれからの方針を決めることにした。
「まずは別のフロアでモンスターを確認することが先決だと思います。
モンスターを確認すれば、ここがどの階層か分かります」
「暴走状態でモンスターがシャッフルされている可能性があるけど、その点はどうする?」
「本格的な爆発前の兆候ならダンジョン全てがおかしくなるらしいのですが、今回のような暴走は一部の階層だけだと聞いております。
もしそうなら低階層以外はそのままになっているはずです。
それを確認する為にも、モンスターの調査は必須です!」
麗華の言葉で方針は決定して、他のフロアを調べることにした。
ただこの階層のモンスターが強かった場合、戦闘になることを考慮して麗華は自分のスキルとステータスを直哉に開示した。
「わたくしのスキルは炎魔法のスキルです。
レベルは15。覚えているスキルはファイアボール、ファイアストーム、アタックプラスの三つです。
アタックプラスはかけた相手の攻撃が二回当たった事になるスキルです。
直哉さんのスキルはどんなものですか?」
戦闘が起きる可能性はあったが、スキルとステータスを開示したのはもう一つ狙いがあった。
それは直哉のスキルだ。
エリクサーの件もあるが、1階でゾンビを倒した直哉の力は驚嘆に値する。
麗華はギルドの職員として、直哉の謎を解き明かすことが出来ればギルドへの恩恵はかなりの物になると踏んでいた。
なので自分のスキルを正直に言って、相手にもスキルをさらけ出すように誘導したのだ。
それは麗華なりの情報収集方法だった。
そんな事とは露知らず、直哉は巻き込んでしまったという負い目もあって、麗華にスキルを打ち明けた。
「びっくりするかもしれないけど、オレのスキルにはステータスもレベルもないんだ……。
絶対に足手まといにはならないから、どうか見捨てないで欲しい……」
麗華の探パスにデータを送ると、彼女は何も言わず口を半開きにして黙ったままだった。
そんな彼女の姿を見て自分のスキルの弱さに呆れていると思った直哉は弁明を始めるが、そんなものは必要が無かった。
何故なら麗華が言葉を発しないのは驚きが原因だったからだ。
「これは……上位スキル……直哉さんは上位スキルの持ち主だったのですね!」
「上位スキル?大泉さん、いったい何なんだそれは?」
「わたくしや多くの探索者が身に付けているのは基礎スキルというものです。
これは探パスに蓄積されたデータによりレベルやステータスが確認出来るものですね。
しかし、上位スキルというものは前例が無いのです。
ですので、探パスでは解析が出来ずにレベルもステータスも表示されないのです」
「へぇー……じゃあオレのスキルは希少なんだ」
今まで自分のスキルは微妙で役に立つのか役に立たないのかいまいち頼りにならない印象だったが、スキルに詳しい人間に認められると自信が湧いて来て嬉しくなる直哉。
急にスキルが誇らしくなり、少し胸を張ってしまう。
「それで上位スキルってどのくらい凄いの?」
「現在日本では直哉さんの他には3人しか所持者がいません。
いずれも探パスでレベルが表示されず、それぞれ自分達だけの希少なスキルをお持ちです」
「やっぱり上位って名前だから、基礎スキルより強かったりするの?」
「ギルドからとても丁重に扱われております」
「……やっぱり役立たずの使えないスキルなのか……」
ワクワクしながら上位スキルの話を聞いても、麗華は話を逸らすばかり。
自分のスキルが強いものだと思っていた分、そうではないと分かると落胆も大きくなってしまう。
そんな直哉の姿を見て麗華は釈明した。
「申し訳ありません。
……先程も申しましたが、上位スキルは希少で同じスキルを持った人が存在しないのです。
どの様なスキルか正確に調べるには、ギルドの特別な装置で測定しないと何も説明できないんです。
ですので、直哉さんの口から説明していただけますか?」
「そうなんだ、それじゃあ説明しないと強いか弱いか判断できないよね!」
直哉は自分のスキルの特徴を麗華に説明した。
100体モンスターを倒すと残機を得られること。
残機がある状態でダメージを受けてもショックダメージは発生せず、残機が消費されるだけで気絶しないこと。
残機が消費されると5秒間の無敵を得られること。
そして、敵を一撃で倒せることを話した。
直哉のスキルの説明を聞いて、驚きを隠せなくて麗華は目を大きく見開いていたが、同時に直哉がゾンビを瞬く間に倒せていた理由に納得がいった。
直哉は自分のスキルをアクションゲームのようだと言ってちょっとでもダメージが食らえば残機を消費してしまう事に不満を持っていたが、どれだけレベルを上げても直哉に攻撃されれば三発でやられてしまう方が理不尽だと思った。
そしてこの能力からどうやってエリクサーが作成されたのか、麗華は凄く興味があったので試してみることにした。
「直哉さんは、本当はスキルで魔法が使いたかったんですよね?」
「ええ、ゲームとかアニメが好きなんで現実に使えたら楽しいだろうなって思ってました。
大泉さんが言うような基礎スキルだったらレベルを上げて行けば他のスキルに派生したりもするって聞いていたんですけど、オレのはレベルが上がりませんからそんな希望も無くなりました」
「じゃあ……ちょっとだけ、体験してみませんか?」
「体験?」
「ええ、そうです。
わたくしがタイミングを合わせますので、直哉さんは声を出してスキル名を言って下さればそれに合わせてスキルを発動させます。
まるで自分がスキルを扱えるようになったと体験できますよ?」
トラップにより遭難している状況だが、このフロアは一先ずは安全。
それに互いのスキルをより良く知っておけば、いざという時の連携にも役に立つ。
そう自分を誤魔化して、直哉は夢だった魔法を体験させてもらう事にした。
麗華の手に、直哉は自分の手を重ねて集中する。
直哉が集中しても意味は無いのだが、これは雰囲気だ。
息を整えた所でスキル名を叫んだ。
「ファイアーボールッ!」
その声に合わせて麗華はスキルを発動させた。
麗華の手の平から炎の球が発生し、それは次第に大きくなり、仕舞には麗華をすっぽりと包めるほどの大きさになった所で前方に発射された。
炎の球は真っ直ぐに飛んで壁に当たりそこで消滅するかと思いきや、壁を溶かしてそのまま真っ直ぐ飛んで行ってしまった。
フロアに大きな通路が出来たが、その周辺にいたモンスターは炎の球によって消滅したようなので直哉達がいる場所に入ってくるモンスターはいなかった。
「いやー……やっぱり炎魔法のスキルって当たりなんですね。ダンジョンの壁が壊れる所なんて初めて見ましたよ」
「……わたくしも初めて見ました」
「えっ?」
「あれは……明らかにわたくしの知っているファイアーボールではありませんでした!
直哉さん、あなたの残機は他人の力を増幅させる可能性があります!」
「何だってぇーっ!?」




