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守り人  作者: 紫月 飛闇
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番外編3)日常。








「あれ、1つ足りない・・・」




蒐がそれに気付いたのは、朝だった。

自分の荷物をひっくり返して探してみても、ひとつ足りない。




・・・やばい、これが知られたら・・・・・・。





「どうしたの、蒐?」

「あ、姉さん・・・・・・」

冷や汗をだらだらと流す蒐を、渫は不思議そうに眺める。

「なにかあったの?」

「えっと・・・ねぇ・・・・・・」



しどろもどろの蒐の荷物があちこちに散乱しているのを見て、渫は彼に尋ねる。

「なにか探し物?」

「・・・・・・うん・・・」

「なにを?」

「・・・・・・それが・・・・・・」




とうとう渫には隠すことができず、ぽそり、と彼は姉にそのなくしものを告げる。




「えぇ?!あれを失くした?!」

「といっても、1つ足りないだけなんだけど・・・」

「1つ足りないだけでも十分よ。なんでなくなるのよ~どこに閉まってたの?」

「ここに・・・」




蒐の指さす場所は、すでに散乱後であり、もはやがらくたの山にしか見えない。

渫はこめかみを押さえて、なんとか冷静になろうと努めた。



「・・・蒐。それで、それらを最後にしまったのはいつ?」

「昨日の夜・・・かなぁ?」

「なんでそれを昨日の夜出したの?」

「籥だよ。籥が昨日なにかおもしろいことないかっていうから、姉さんが発明したこれらを・・・・・・」




はた、と蒐の言葉が止まる。そして、渫も同じことを考えたようで、ふたりで見つめあってしまう。

「・・・それで?今、籥はどこ?」

「そういえば、今朝からずっと見かけない・・・・・・」

「まさか、籥ってばすでに・・・・・・」



ふたりが顔を見合わせて最悪の事態を覚悟したその瞬間。





どぉぉぉ・・・・・・ん・・・・・・!!!!





守人の里である森を揺らがすほどの地鳴り、そして爆風。

突然の爆音に、ざわざわと修行中の守人たちが祠から飛び出してくる。



その爆発があったのは、長だけが特別に暮らしている祠の近く。

水しぶきがあがっているところを見ると、祠近くの滝で爆発したのかもしれない。





「・・・籥の仕業ね・・・・・・」

「でも、これって俺たちがお咎めくらうのかなぁ・・・・・・」





蒐がなくしたもの。

それは渫がまだ開発中の爆弾だったのだ。それも、威力抜群の。

まだ爆薬の調整中で、威力はもっと抑える予定だったのだが・・・・・。



「しかも、それを長でちょっとずつ実験しようと思ったのに、籥に先越されちゃったね」

あはは、と呑気に笑う蒐。




年中、蒐と渫は長に色々といたずらをしかけている。

寝起きを突然襲うようなかわいいものから、長じゃなかったら命を落とすのでは、という際どいものまで色々だ。



そうやって、渫は開発の腕を磨いてきたし、蒐は隠密行動の能力を高めてきた。

こんないたずらも、ふたりにとっては修行のひとつだったのだ。




・・・だったのだが。





「あの爆弾は、まだ長に使うつもりはなかったんだけどなぁ・・・・・・」

威力が大きいことを知っていたので、まずは森の動物を捕えるのに使いながら、爆薬の調整をしていこうと思っていたのだが。





途方に暮れる姉弟だったが、目の前から籥がすごい形相でこちらにむかって走ってくるのが見えて、ふたりは慌てた。


「籥?!」

「お、蒐、渫!!すっげぇな、あの威力!!まさかあれほどとは思わなくて、思わず長に使っちまったよ~」

あはは、と笑いながらも、籥は何かから逃げている。ふたりも籥のあとを追いかける。彼が「なに」から逃げているのかなんとなく察知しているからだ。






「・・・で?今はなにから逃げてるの?」

一応、渫は聞いてみた。

「・・・そりゃ、カンカンに怒った長から、だな。ついでに、渫、蒐、おまえらも逃げた方がいいぞ?おまえらの発明だって知ったら、一緒になって怒ってたから」

「な、なんで?!今日はあたしたちまだなにもしてないのに?!」

「あはは~これも運命だ、諦めろ~!!」

「それ、籥が言うの、おかしくない?」



蒐がじろっと籥を睨みつけていると、3人の背後から、怒り心頭の長の気配が近づいてきた。




「やばっ!!とりあえず、逃げよう!!!」

「今日は俺、何にもしてないのにつまんない~!!」

「そう言うなって!!あとで長のおもしろおかしい反応を話してやるから!」

「・・・今度は爆薬と一緒に睡眠薬でも混ぜておこうかな」

「お、渫、それはいい案だ!!」


けらけらと笑う籥の背後で長の雄たけびがあがった。





「・・・いい案であるものか!!待て、籥、渫、蒐~!!!!」





こうして、守人の里である静かな森に、守人たちの長の悲痛な叫びが木霊するのであった。











蒐たちがまだ「守人の里」にいたころの話でした。




長にいたずらしては叱られていた蒐と渫だったのですが、間違いなく籥だって参加していただろうと(笑)


訓練ばかりの日々だって、あの3人がそろっていれば、きっとそれなりの穏やか(?)な日々があったんだろうなぁと思いまして。




それに振り回された長は、まさにお疲れ様としか言いようがないですね(笑)







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