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守り人  作者: 紫月 飛闇
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番外編1)願い。















「ピクニック?」


「そう、しかも夜のピクニック!!楽しそうでしょう?」






突然、そんな提案をしてきたのは、緑。


うきうきとうれしそうに渫と蒐に提案してくる彼女の様子に、ふたりは目を瞬く。






「緑さん・・・なんで突然?」


「あら、渫。今夜は何の日か知らないの?」


「今夜?」


「はいはーい!!俺、わかった!!」


首をかしげる渫の横で、蒐が元気に手を上げる。緑はそんな無邪気な彼に、しぃっと唇に


指を当てて片目を瞑った。








「じゃぁ、わからない渫には直接ピクニックで知ってもらいましょう」


「夜のピクニックなんて楽しみだ~!!」


きゃいきゃいと喜ぶ蒐を見ながら、今日は何の日だったかと渫はしきりにぐるぐると考えているのだった。












深夜。


いつもなら、早く寝なさいと緑が口うるさくなるその時間に、3人は家を出た。






「本当は、町の外の静かな森とかで見れたらよかったんだけどね」


町から出ると戦場だから、とさびしそうに緑は言う。


「大丈夫。町の中からでも、見れるんだから」


にこっと蒐は愛想良く笑う。




そんなふたりの会話がよくわからないでいるのが、渫。








「なにを見るの?月?そういえば、今日は満月だし・・・・・・」


「あら、満月よりも珍しいものよ。さぁこっち。あの丘のあたりがいいんじゃないかしら」


うきうきとした様子の緑の指差す方向には、町の人がぞろぞろと向かっている。








町のみんなもなにかを見に行くのだろうか。


わざわざ丘の上に?






「あの丘に行くなら、俺、穴場を知ってるよ!!あそこならあまり人がいないと思う!!」


しばしばふらりと家から出て行く蒐が、得顔で緑に提案している。


「蒐は町のあちこちを探検しているみたいね。いいわ、蒐のおすすめの場所に行きましょう」


緑はあっさりと蒐の意見を取り入れ、渫の手を引いて蒐の後を追った。






蒐が道案内する場所は、夜であることもあり、足元がよく見えなかった。暗がりで若干ぬかるんでいるその道を、緑は不安そうに歩いていく。


だが、そこはふたりの『保護者』。


気丈にも弱音を吐かずに、ふたりを気遣う。








「渫、蒐?大丈夫?足元暗いから、怪我しないように気をつけてね?」






しかし、ふたりにはそんな心配は無用。


「守人」として育てられたふたりには、夜の闇など明るい。闇目の効くふたりは、足元の障害など難なく越えていく。蒐は緑を気遣う余裕すら見せる。










人気のない道を歩き、丘の上まで歩いていくと、空には星空。


「うわぁ・・・・・・綺麗・・・!!」


思わず渫がうっとりとつぶやくが、緑はさらにうれしそうに彼女に言う。


「もっといいことが起こるわよ、渫」


「緑さん、姉さん、こっちこっち」


蒐が呼びかける方に行ってみれば、そこには大人3人がぎりぎり腰掛けることができる倒木があった。








3人で仲良く腰掛けて、夜空を見上げる。


「こうして、夜空を見る限りでは、平和なのにね」


「・・・・・・うん」


緑のため息とともに出る言葉に、渫は小さくうなずく。








「あ、始まった!!」


蒐の声で、はっと渫と緑も夜空に目を泳がす。




と、同時に。






「う・・・・・・わぁ・・・・・・!!!」


ため息のように、感嘆の声がもれる。








一瞬で夜空を埋めた、流星の大群。


まるで高速に空が動いているかのような、そんな幻想的な光景。


流星が飛び交う夜空に飲み込まれそうになっている渫に、緑の声が聞こえてくる。






「どこかの国ではね、流れ星に願いをかけると、願いが叶うといわれているらしいわよ」




くすりと笑った緑をはさむようにして座る渫と蒐は、互いにそっと顔を見合わせる。




「願いを・・・・・・?」


「そう。せっかくだから、お願いしてみれば?」






戸惑ったように聞き返した蒐に、気付かずに緑は明るく提案する。






願いを。


この幻想的に夜空を駆け抜ける流星たちに、願いを。










「俺の、願い・・・・・・」


それは、ただただ、渫との平和な暮らし。渫と、できたら籥や緑とも一緒に、こうして毎日平和に暮らしていけたら。






決して叶わぬ夢だとわかっていても。




なぜか突然ちくりと痛んだ胸を、蒐はぎゅっと服ごと握り締める。










「あたしの願いは・・・・・・」


今ある日常が、「本物の日常」となること。


蒐と、みんなと、笑って過ごす毎日が訪れてくれれば。






ただ、それだけでいい。






あふれるほどのその願いは、叶うかどうかもわからず、渫は泣きたくなるような衝動をぐっと抑える。






望んではいけない。


今ある生活は、ただの『修行』のひとつ。








蒐と緑との楽しい毎日も、いつかは終わりが来るのだから。












「本当に、綺麗ね」


無邪気に喜ぶ緑の両側で、渫と蒐は、複雑な思いでその夜空を見上げた。










こうしてまた、流星を見る夜が来るのかどうか、それすら望むこともできずに。



















先日本編を完結させたというのに、往生際悪く、また番外編なんぞ書いてしまった紫月です(汗)



第一弾の今回は、やっぱり渫と蒐が出るもので。

紫月は、緑と一緒に暮らしていた時代のものが結構好きだったりするので、それをもってきました。

…というか、じつは、これは本編に入れるべきものだったんですけどね…(汗)



本編ほど早く更新できないかもしれませんが、番外編もまだまだ用意していますので、お付き合い&感想等いただけるとうれしいです!!

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