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俺の目の前で妻が浮気している  作者: 高円寺ほるもん
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彼女は夫への罪悪感を秘めて俺に抱かれる。

 完全に俺の体のとりこになってしまったのだ。


 だが、この俺も狂ってしまっていた。


 ……この女を完全に俺のものにしたい……


 この欲求をどうにも抑えがたくなってきてしまったのだ。


 後で考えてみれば、なんという俺らしくないことを考えてしまったのだろうと後悔したが、後の祭りである。


 ……どうすれば彼女を完全に俺のものにできるか?


 簡単なことだ。


 ……夫を殺す……


 俺は彼女に言った。


 何があっても俺から離れるな。


 もしそんなことをしたら、逢瀬の録音や録画をバラす。


 彼女の顔は青ざめ、黙ってうなずいた。


 実際に俺は、彼女に気づかれないように、これらの証拠を取っていた。


 外国のサーバーに厳重な暗号をかけて保存してあるので、他人に見られる心配はない。


 夫の殺害計画については、一切話さなかった。


 結果的に夫がいなくなりさえすればいい。不必要なことを教えて不安にさせることはない。


 俺は、コンピュータ関連の伝手(つて)でアキバに出入りしている時に、いろいろなヤバい連中とのつながりができていた。


 今はコンピュータなしでは、チャチな悪事ひとつできゃしない時代だ。


 俺のコンピュータの知識は、彼らにとって大いに魅力的なものだった。


 彼らとの親交を通じて、次第に犯罪の世界にも足を踏み入れるようになった。


 しかし、殺しとなると話は別だ。


 殺しなんてしたことはないし、今まではそんなリスキーなことをするやつはバカだと思っていた。


 だが、今回はその殺しをしなければならない。


 彼女を俺のものにするには、それしかないのだ。


 俺は、夫を車の事故死に見せかける計画を立案した。


 それに沿って準備を進める。


 さる筋から盗難車とナンバープレートを購入した。


 そして殺しを実行した後に車のナンバーを付け替え、知り合いの外国籍のオーナーの解体工場に持ち込み、だだちに処分する。


 ナンバーが変われば、公道上の追跡システムでも捕捉困難だ。


 証拠は一切残らない。


 それに俺と彼女との関係を証明するものも何もない。


 夫の行動パターンは、ほとんど同じ繰り返しであることは聞いていた。


 朝、決まった時間に家を出て会社に向かい、夜これも決まった時間に帰宅する。


 どこの会社に勤めているかも聞いていたので、夫がどのようなルートを通るのかも分かった。


 俺は、とある途中の細い道に狙いを定めた。少し直線が長く道が狭い。


 ここなら確実にヒットすることができるだろう。


 盗難車に乗って数日、夫の帰りを観察した。


 いよいよXデーを決めて、俺はスタンバイした。


 そして、実行し成功をおさめた……


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