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俺の目の前で妻が浮気している  作者: 高円寺ほるもん
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きっかけは1枚のチラシだった。

 安アパート入り口の集合ポストには、各種の郵便物に混ざって、いつも色々なチラシが入っている。


 近所のスーパーの特売だったり、新しいレストランのオープンだったり、子供の塾の案内だったり。


 その中に、小さなチラシが入っていた。


「絶対安全・秘密厳守」「イケメン男性を紹介します」「素敵な男性とデートしてリフレッシュしてはいかが」「初回無料」……


 こんな文章の下に、携帯番号の連絡先が記してあった。


 ネットに出会い系の異性紹介サイトがあるが、それと同じようなものだろうと、私は思った。


 ……なんていやらしい……


 そう思って破り捨てようとした。


 だが、何かが心に引っかかった。


 破ろうとした手を止め、周囲に人がいないかをみて、すばやくポケットにしまった。


 翌日の午後、部屋の片付け事が済んだあと、ポケットにしまってあったものを取り出した。


 テーブルの上にそのチラシを広げて改めて見る。


 それを見てため息をつく。


 以前、自分は性欲についてごくごく普通だと思っていた。


 夫と結婚したのが25歳でそれから6年経ち、今年31歳になる。


 結婚当初は、毎日のように夫に求められていたが、それが次第になくなっていった。


 どこの夫婦も同じだと思う。いつまでも恋人気分ではいられない。


 一緒に生活していくと、徐々にそうなっていくのが自然だ。


 だが時々寂しさは感じる。


 30歳を過ぎたあたりから、自分の体が変化し始めたと感じる。


 激しく欲しくなる衝動に駆られることが、頻繁に現れるようになったのだ。


 自分には子はいないが、女は子供を産むと30過ぎにそうなるという話は聞いたことがある。


 若い時は、強烈すぎる性欲などあまり感じたことがなかったから、この衝動には自分でも困惑した。


 夫は、元々そういうことについては淡泊だったので、相談しにくい雰囲気がある。


 いつも夫の求めに応じるのが習慣で、自分から夜の営みを誘うことはこれまでなかった。

 

 昨日、またあの衝動が私を突き上げてきた。


 夜になって、めまいがするほど欲しくてたまらない思いが高じてきて抑えられない。


 チラシに刺激を受けてしまったのかもしれない。


 夜、思い切ってとなりで寝ている夫のパジャマを引っ張った。


 だが夫は疲れているからと言って、向こうをむいてしまった。


 しばらくして夫が寝たことを確かめた後、そっとベッドを抜け出しトイレに行った。


 その場でいったんは収まったが、ベッドに戻ってもなかなか寝付けない。


 そっけない夫に対しても怒りを感じていた。


 そんなこともあってか、私の中の何か――たぶん魔というもの――が私を突き動かしたのだ思う。


 気が付くとチラシの番号に電話をしていた。


 まだ少し残っている理性で非通知でかけることは忘れなかった。


 もし何やら怪しそうなところだったら、すぐに電話を切ろうと思った。

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